撥条仕掛けの機械時計

神楽ハル

第1話 「知らない天井」



何か責任を負う事をする。

そんなの、私がやるとは思ってもなかった。

人を信じる事を知らない自分が。

だから、どうして。




どうして私は、人を騙し合うようなゲームをしているのだろうか?






そもそも、何故こうなったのか。

思い返せば、約1時間程前だろうか。



私は、普通に家で寝ていた、はずだった。

しかし、次に目が覚めた時には、知らない天井を眺めていた。

一瞬夢かと思った。あまりにも現実離れしていたから。

だが、頬をつねり、痛いという痛覚が働いている事が分かり、その考えはすぐに無くなった。

これは現実。何が起こったかは分からないけど、紛れもないリアルだと。

現実だと自覚する程、少し恐怖を感じる。

どうして、どうやって、ここに連れてこられたのだろうか、と。

少し思考しーーーーだが、気味が悪くなってきたために、別の思考に移る。


ここは何処だ、と。


辺りを見回すと、窓の無い部屋に、ワークデスクと自分が寝ていた廃病院のようなベット。そして、扉が1つ、堂々と仁王立ちしているかのようにただずんでいた。

それ以外に目の着く物は無く、強いて言うなら、部屋の広さは7畳程度で、人が2人入れば狭いぐらいだろうか。

とりあえず、何か聞こえないかと、扉や壁に向かって聞き耳を立てる。

しかし、壁が厚いのか、理由は不明だが、何も聞こえなかった。

とりあえず、扉が開けようとしてみる。だが、開く気配は無かった。鍵が掛かっているのかと思ったが、鍵穴が見つからない。

次に気になったのはワークデスクだった。

机上には1枚の紙があり、他には引き出しが4つ。

まずは気になった紙を見てみた。

そこには、こう記されている。



ーーーー

呼び集められし7つの光。

汝の光は「信」の光なり。

汝らが願い、叶えたくば。

我が欲を満たせ。

ーーーー



ふむ、と考えてみる。

呼び集められし7つの光、という事は、私以外にも人が居るという事だろうか。

7つ、なのだから、私含め7人なのだろう。

「信」の光とはなんだろうか。

信頼という意味の「信」なのだろか?


そこまで考えーーーー現時点では明確な答えは出せないと思い、引き出しを調べる事にした。

引き出し全てを調べると、紙が1枚と謎の青い石が1つ出てきた。

石は謎の模様が刻み込まれていたが、その模様が何かまでは分からなかった。

その一方、紙には先程の紙と同様、文章が書かれていた。

その紙には、こう記されていた。



ーーーー

これから先に待ち受けるのは

汝らが今まで背けてきた現実である。

ただし、逃げ帰る事は許されない。

現実に抗う覚悟を

自分自身と戦う覚悟を決めたのならば

青い石を扉へとかざせ。

ーーーー



ここに書いてある青い石は、先程見つけた石のことだろう。

この扉の先には何があるのだろうか。

覚悟は出来ている。

決意を抱き、石を扉へとかざすと。






次の瞬間には、光に包まれていた。



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