第46話 ガーウィン戦②
「こんのっ!」
槍を二本、奴の腹に突き出す。
しかし見えない防壁のようなものに阻まれ、ガーウィンにまで届いていない。
攻撃をすると、今度は自動的に反撃でもするかのように大剣から極太の光が放出する。
これをギリギリのところで避け、武器を
「【フレイムストライク】!」
炎を纏い攻撃を展開するも、また障壁に阻止されてしまう。
俺は舌打ちして、ガーウィンとの距離を取る。
「くそっ。攻撃が通じない」
「【魔王】のスキルを封じられてるからな。ここはオレが突破する」
ゴンが稲妻を拳に纏い、地面を蹴った。
バチッと地面に電気が走り、一瞬でガーウィンとの距離を縮める。
瞬間の動きに関しては、俺よりゴンの方が迅いな。
俺はゴンの高速移動を見て舌を巻く。
「【雷拳】」
爆発的な音が響き渡り、障壁にヒビが入る。
ゴンの攻撃なら障壁を突破できそうだ。
そう判断した俺は、今度は防御に徹することにした。
「ゴン! 攻撃は全部俺が引き受ける! お前がそいつをぶっ飛ばせ」
「おう。任せろ」
俺がゴンの背中を守り、ゴンが俺の背中を守る。
いつもお互いがフォローして……そんな風にして戦ってきたような気がする。
今回もそうだ。
ゴンが前で戦っているのなら、俺が後ろを守る。
一心同体。
そんな言葉が俺の脳裏に浮かぶ。
光が放たれ、俺は新品の
「レオ様!」
激しい攻防を背後から見守っているリーシャ。
俺は彼女の声に振り向くことはできず、背中越しに声をかける。
「俺は大丈夫だ! 絶対こいつに勝つ!」
「オレらな。オレら」
「ああ。俺たちなら勝てる!」
ゴンは雷の拳を連打する。
障壁は次々にヒビが入り、とうとう崩れ落ちていく。
「突破した。一つだけお前に頼んでおくぜ――」
ゴンはギュッと拳を握りしめ、ガーウィンを見据える。
「死ぬんじゃねえぞ」
今までで一番強烈な一撃。
ボキボキッと骨の折れるような音が聖堂内に響き渡る。
ガーウィンの全身に稲妻が走り、痙攣を起こしていた。
「…………」
プスプスと黒い煙を放ち、ガクンと意識を失うガーウィン。
俺の首から首輪が落ち、力が尽きたことを示していた。
ゴンはその様子を確認し、軽くため息をもらし振り返る。
「終わったな」
「――まだだ!」
「え?」
ゴンの背後でガーウィンがまた動く。
大剣に膨大な光が集まっている。
俺はゴンを蹴り離し、その攻撃を一手に引き受けた。
残る力全てを絞り出すような凄まじい一撃。
俺は
「力が戻ればこっちのもんだ! 【魔王】の力で勇者を打ち破ってやる!」
激しい光を漆黒の力で弾き、炎と闇を纏った槍でガーウィンの左肩を穿つ。
「【ダークフレイム・インパクト】!」
「がっ……」
崩れ落ちていくガーウィンの肩、そして腕。
大剣もとうとう力を失い、一つに纏まり地面に突き刺さる。
「レオ……」
ゴンは頭を振りながら起き上がり、俺に近づいて来る。
「ゴン。倒した――」
「だからなんで蹴るんだよ。痛かっただろうが」
ゴンは地面で頭を打ったらしく、俺の胸倉をつかみながら半目で睨み付けてくる。
「え? 今はそんなのいいだろ……やっと倒したんだからさ」
「お前……覚えてろよ」
ゴンはガーウィンの方に視線を落とす。
「……殺しちまったか」
「いや。殺しちゃいないよ」
「…………」
倒れているガーウィンを凝視し、その姿をしっかりと確認するゴン。
崩れ落ちていくのは左腕のみで、闇は本体の方には広がっていない。
「お前が殺すなって言うからな。なんとか殺さずに済ませたよ」
「……やるじゃん」
「レオ様!」
リーシャが王を引きずりながらこちらに向かって走って来ていた。
ゴンゴン地面で頭を打つ王。
もうそれ、どっかに置いてきたら?
リーシャは俺の胸に飛び込み、王は引きずられていた勢いで、壁際の方まで吹き飛んでいく。
ドゴンッと音を立てて壁に突き刺さる王。
「…………」
俺とゴンは唖然として王の方を見ていた。
この子、もしかしてこの国で一番強いんじゃない?
そう思えるぐらいには凄い怪力の持ち主のようだった。
ゴンといい勝負するかも……
「やりましたね、レオ様」
「お前、わざと無視してんのか? オレのこと」
「レオ様なら勝てると信じておりましたよ」
「え? わざとなの? わざとじゃないの? どっちなんだよ」
ゴンの言葉には一切反応を示さないリーシャ。
トロンとした瞳で俺を見つめている。
俺は苦笑いして、ゴンの方に視線を向けた。
「ま、無事に終わったし、よしとしようぜ」
「……解せんな」
「レオ様……さすがレオ様でございます」
俺は呆れ返りながらリーシャを見る。
ゴンの機嫌もよくないので離れて欲しいんだけどな……
なんてことを考えながら勝利の余韻に浸っていた。
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