最強魔導士誕生編
第45話 最強魔導士誕生 第一話
まー君は拘束されたままなのだけれど、今はこのままでいいと思う。なぜなら、その方が私にとって都合がいいからなのだ。都合がいいと言うと語弊があるかもしれないけれど、まー君が自由に出歩いてしまったらこの町の女どもがまー君に言い寄らないとも限らないからだ。それに、まー君はこの拘束具の外し方を知らないという事も私には好都合だった。
拘束具の外し方を発見したのは偶然だったのだけれど、なんとなく唯ちゃんに複数の拘束具を付けて実験していたことがあった。その時は何とも思わなかったのだけれど、複数の拘束具を同時に装着させると物理的な締め付けも強くなるらしく、唯ちゃんが徐々に酸欠状態になってしまい、私は大慌てで拘束具を引きはがそうとした。その結果、何ともあっけなく拘束具は外れてしまったのだ。
その後も繰り返した実験の結果で、この拘束具は魔力を持つ者に対して絶大な効果を発揮するのだが、魔力を一切持たない者に対しては全くの無力であったのだ。そう結論付けてみたのだが、この世界に魔力を一切持たないものがどれくらいいるのかはわからないし、魔法を使えない男性でも多少は魔力を供えているので外すことは出来ないのだ。全く魔力がない事で悩んでいた時期もあったのだが、こんな形で自分の力のなさが役に立つとは思いもしなかった出来事である。
ちなみに、唯ちゃんは私達の実験に付き合ってくれた影響なのか、助け出してから一度も声を聞いていないのであった。まー君に会わせてあげてもいいのだけれど、お互いに拘束されている状態で会うのは気まずいと思われるため、今はまだ合わせない方がいいと思う。それについてはこの町の魔導士たちも同意してくれていた。同意していないのはこの事実を知らない当人同士だけなのではあるのだが。
この町最強と言われているフェリスさんを筆頭にこの町の魔導士たちが著しく成長を遂げているそうなのだが、そんな中でもヒカリは全く変わらずに成長しないまま時を過ごしていた。これについては本人も相当意識しているようなのだが、皆の成長が一体どういった原因で起こっているのかわからない。噂では、まー君がこの町に来て魔力の絶対量が増えたことが要因なのではないかと言われている。地域における魔力の総量が増えると、それに引っ張られる形で魔力の増加がみられることがあるらしいのだ。その理由としては、自分のモノよりも大きな魔力に接することによって自分の限界が引き上げられるという説と、大きな魔力に触れたことによって自分の中で効率的に魔力を展開することが出来るようになるからだという説があるようだ。私は魔法を使えないのでその感覚はわからないが、スポーツでもゲームでも上手い人と一緒にやっていると自分も成長したような気持になるのと似ているのかもしれないと思った。
それでも、ヒカリは何の成長の糸口も見つけられないようではあった。私はもともと魔力がどんな感じなのかも理解しているわけではないのでいいのだが、優秀な魔導士の家系で育っているヒカリは肩身が狭い思いをしているようだった。
心無いものは、ヒカリはフェリスの実の娘ではなく養子なのではないかと言っていたり、優秀なものは三代続くことは無いと本気で信じている団体もいるようなのだった。私はヒカリも努力をしているのは見ているのだが、その努力が結果に結びつくかどうかは知らないのだ。だって、私は魔法の事なんて何も知らないのだ。
「ねえ、まー君がこの町に来てから魔導士たちが急成長しているそうなんだけど、それってどうしてだと思うかな?」
「どうしてと言われてもね。僕が何かしてるわけでもないんだけど、ある程度強い人は強い人に引っ張られて成長するとか限界値が伸びるとか言っている人がいたな。僕は自分より強い人に会ったことが無いからわからないけど、本当にそうだとしたら気楽な話だよね」
「でもね、私が仲良くしてるヒカリは全然成長していないんだよね。ヒカリのお母さんもおばあちゃんも強くなってるみたいなんだ。そんな中でもヒカリはちっとも成長していなくて焦っているんだよね。まー君はどうしたらいいと思う?」
「そうだね。焦って何かをすると空回りすることもあると思うし、一回ここに連れてきて話をしてみるのはどうかな?」
「それもいいんだけど、まー君に会ったら惚れちゃわないかな?」
「それはあるかもしれないけど、みさきはヒカリを強くしたいのかな?」
「正直に言うと、ヒカリが強くなってもならなくても私はどっちでもいいと思っているよ。お世話になってはいるけれど、それとヒカリが強くなるのは関係ないと思っているし、出来ることならまー君に会わせたくはないかも。ヒカリは良い子だけど、そんないい子がまー君に惚れて振られるところはみたくないんだよね」
「うーん、僕はみさき以外には興味無いからヒカリの事もなんとも思わないけど、告白されたとしても僕はそれに答えることは無いから可哀そうな事にはなるかな。でも、みさきはヒカリを成長させてあげたいって思う?」
「私はヒカリが成長するのもどうでもいいって思っているかも。ヒカリが強くなってもどうせこの世界も壊れちゃうんだし、この世界の人の力関係とか興味無いんだよね」
「じゃあさ、こんなのはどうかな?」
まー君が提案してくれたヒカリをこの町で最強の魔導士にする計画に乗って私は行動することにしよう。
まー君の作戦を完遂することが出来ればヒカリも最強の魔導士と呼ばれることになるんだもんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます