忘却の未来

ミノビシャス

第1話

坂口一平の幼馴染みである豊川海人は、一平の顔が日に日に老けていく事に気が付いた。


しかも、それは目で見て「昨日より確実に老けている」と一瞬で断言出来るくらいの頻度で老けているのが分かった。



「一平ちゃん、何かあった?顔がすごい年上に見えるよ?」



気の優しい海人が、心から心配してくれているのが分かり、嬉しさ半分、気まずさ半分で一平は答えた。



「はは…気のせいだよ。疲れてるだけだから。」



と、一平は笑ってみせた。




一平は自分でも分かっているが、確実に老けていた。


理由は自分でも分かっている。




一平は、いつの頃からかは忘れてしまったが、屁を一発こくたびに5分前の過去にタイムスリップしてしまうのだ。




屁を我慢しようと思っても、生理現象なので無理だ。

例え我慢出来ても寝ている間に何発もこいてしまう。



屁を5発こけば25分前へ、屁を20発こけば100分前へタイムスリップしてしまうのだ。




一平は対策が見つからず、気がつけば、自分自身は20歳になっているのだが、自分の周りはまだ17歳だった。




一平は数学の授業が退屈で、1番嫌いな時間だった。



その嫌いな時間があと5分で終わるって時に屁を3発こいてしまい、15分前に戻ってしまったりした。



エンドレスな苦悩だ。



自分の成長だけは正常に時を刻み、周りは過去の若さのまま。




競馬で結果の分かるレースで大儲けもしたが、自分だけが老いていくのは大金を積んでも止められない。



このまま自分だけが年をとって死ぬんだと考えると怖くてしょうがなかった。



この「屁こきタイムスリップ」が不幸を呼ぶ日が来た。




ある日、一平が歩いていると目の前で子供が車に跳ねられた。



一平はすぐさま屁をこいた。



そして子供が車に跳ねられる5分前にタイムスリップし、子供を呼びとめ、車に跳ねられるのを防いだ。




車が通過して、5分後に屁をこいてしまった。



タイムスリップした瞬間に、一平は車に跳ねられてしまった。





血まみれになり、近くを通る子供に「助けて…」と言っても子供は逃げ出してしまった。




「そりゃねぇだろ…さっき助けてやったのに…」



一平は気を失った。

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