高級レストランで彼女 に100万の指輪を渡し21回目のプロポーズをしようとした俺→すると店員が「あの女性は止めた方がいいですよ...」【スカッとする話】

雲川はるさめ

第1話




高級レストランで彼女

に100万の指輪を渡し21回目のプロポーズをしようとした俺→すると店員が「あの女性は止めた方がいいですよ...」【スカッとする話】





夜景の綺麗な行きつけの高級レストランで。

俺は今日、婚活パーティーで知り合った2歳年下の美人なアケミに100万もする高価な指輪を渡してプロポーズしようとしていた。

過去に何度も、てか恥ずかしながら、

20人の女性に振られてる。今日こそは、

成功の自信があった。


しかし、だ。俺が

トイレに行き、用を済ませて席に戻ると、

今度はアケミがスマホを右手で握り締め、

席を立った。

「ごめん、シンジ。私もちょっとお手洗い

行ってくるね」

「ああ」


一旦は頷くも、俺は心配になり尋ねた。


「大丈夫か?お前、三十分前に行ったばかりじゃないか、体調でも悪いのか?」


「ううん。全然平気。

でも、ちょっと長くなるかも...」


そう言ってアケミはトイレへと向かったんだ。



アケミが俺の前から居なくなって

数分が経過した頃だった。


一人の女が俺の前に姿を現した。


高級レストランでバイトでもしているのか、

その辺のところはよくわからないが、

俺の見立てでは、彼女は恐らく正社員ではないと思う。


何故なら。歳の頃23、4のその女の子は


とても可愛い顔はしているが、かなりドジなホールのウェイトレスで、あんまり仕事ができるとは言えなかったからだ。


俺はこのお店に通い出してもう4年くらいになるが、彼女を見かけ出してから約1年程の歳月が経過したというのに、最近入った新人みたく仕事上で

ミスを連発したんだ。


注文の取り間違えに始まり、

配膳しようとした矢先に、

手を滑らせて、料理をひっくり返す有り様だった。


「あ、すみません..!!」


「すぐにお拭きします!」


こんな事が一度や二度ではない。

幾度となく、俺は仕事ができてない場面を目撃していたんだ。


かと思えば、

裏でガシャーンというお皿の割れる音。


それから

「大変失礼しました!」の彼女の声も聞こえてきて、彼女がまたドジ踏んだんだなと俺は思ってた。


さて、そんな彼女が俺の前に来て言うことには。


「今、席を外されたのは、失礼ですが

奥様ですか?」


「いいえ」


答えると、


彼女がモゴモゴしているので、

どうかしたんですか?と尋ねてみた。


「あ、えっと...」


「ちょっと気になったことがあったものですから」


ここまで言われたら、詳細を聞きたい。

俺は尋ねた。


「気になった事、教えてください」


「あ、えっと」


彼女がとても言いにくそうに教えてくれた。

驚愕の内容だった。


俺の彼女であり、婚約者であるアケミが。


俺のバッグを漁っていたこと、

そして、中に入っていた

定期預金の通帳を見て、スマホで写メを撮っていたことなどを話して聞かせてくれた。



にわかには信じられない俺。


「はは、まさか...何かの冗談ですよね?」


信じられない、てか信じたくない。


アケミのことは。

性格、容姿ともに、とてもいい女だと思っており、ぞっこんだった。

料理も掃除も、完璧にできる女で。

今日プロポーズしようと思っていた。


それにしても、


彼女は長いトイレだった。



「もし、宜しければ、」と

俺はホールスタッフに促され、レジ横へと

向かった。


そこで、店内に設置された

監視カメラの映像を見せられ絶句した。


カメラの映像に拠れば。

確かにアケミが周囲の目を憚りながらも

がさごそと俺の鞄の中身を漁っていた。


今日は銀行に行った帰りで、みたいな話を

ちらりと食事中に俺がしてしまったのもいけなかったと思う。


それではまるで。

鞄の中に通帳が入っていると言っているような

ものだった。



席に戻った俺は一気に冷めた。


指輪を出す気が失せちまった。


がっくりと項垂れていると、



アケミがトイレから嬉々とした様子で

戻って来た。


「お待たせ!シンジ」


「随分、長かったな」


「あ、うんうん。ちょっと友達とLINEしてたよ」


「ふーん」


やがて。本日の

ディナーコースの締め、

この店自慢のドルチェが運ばれてきたが、

俺は全く味が分からなかった。

アケミは

「わぁ!すっごい美味しい!!このティラミス!」

と滅茶苦茶喜んで舌鼓を打っていたけど、

俺はショックでそれどころじゃなかったんだ。

さて。


食事も終えたし帰ろうとすると、


「ねぇ、シンジ。何か忘れてない?」

と彼女が、俺の服の袖をツンツンと

引っ張った。


いつもなら可愛く見えるその仕草も。

今日は鬱陶しく感じられた。


「今日此処でプロポーズしてくれるんじゃないの?」

「店で渡したいものがあるって言ってたじゃない?」


「え、ああ」


アケミに

指輪の入った小箱も見られたようだった。

座り直し、お互いまた向き直った。

「俺たち別れよう」と告げると、


アケミは店内だというのに発狂した。


「嫌よ!絶対に別れないんだから!!」


「婚約を破棄するわけだから

慰謝料として100万の指輪はくれてやる。それで別れてくれ」


「仕方ないわね」

アケミはこくりと頷いてくれた。

俺は、

やれやれ、これで、新しい恋ができるなと

思い安心したが言葉だけだった。


アケミはストーカー化した。

俺への付き纏い、勤めている証券会社や俺の実家への頻繁な無言電話。


俺の住むマンションにしつこく訪ねて来た時は警察を呼んで連れて行ってもらった。


時流れて。

アケミが大人しくなり音沙汰が

なくなった頃。


俺に新しい彼女ができた。

俺は今、今も高級レストランでバイトしている

ホールの可愛い女の子と付き合っていた。


俺から告白した。


ドジながらもひたむきに仕事を頑張っている

姿がとても可愛かった。


その彼女と彼女のバイト休みの日。


高級レストランで食事中、事件が起きた。



元カノのアケミが鬼の形相で乗り込んできたんだ。


「やっぱり諦め切れない!!

シンジ、私ともう一度やり直して...!!」


必死の懇願だったが。

元カノの本性を知っちまった俺は。

一度冷めちまった感情を昂らせるのは

どーにも無理だった。


「ごめん、アケミ。何度も復縁しようと

してくれるが、お前とはもうどう足掻いても無理だから...」


絞り出すように言った。


アケミが、俺の今カノをぎろりと睨み見て。

吐き捨てるように言ったんだ。


「何よ!!顔可愛いだけで、ドジで仕事できないつっかえない女が!!

どーせ、あんた、シンジの財産目当てなんでしょ!?2000万の預貯金に目が眩んだんでしょ!?」



「あんた、お金に困っててシンジの財産目当てなんじゃないの!?」


「アケミ、あのな。彼女には俺から告白したんだ。ひたむきに仕事をするとこが好きでさ」



「お金目当て?私は違いますよ。

私は彼の総資産額を存じ上げません」


ここで、アケミが。

彼女につかみかかった。

「こ、の、銭ゲバおんな!!

てか、金の亡者が!!私のシンジを返せ!」


銭ゲバ女はお前だろ、と

俺が心の中で叫んだ時だった。


「お嬢様...!」


とホールのイケメン男が、駆け寄ってきた。


「は?お嬢様?」


アケミがポカンとして彼女から手を放した。

鳩が豆鉄砲を喰らったよーな顔して

アケミは。


ホールのイケメン男を凝視した。


「マヒロお嬢様は、何百店舗もの高級レストランを経営する財閥の孫娘なんですよ。

この店でバイトしていたのも、社会勉強の

一環でして」


「嘘ぉ、、、」


アケミはへなへなと床に膝から崩れた。


「そういう訳ですから、マヒロお嬢様が

此方の男性の財産目当てなんてことは

あなたの勘違い甚だしいってことに

なるわけです」


ホールのイケメンは、淡々と言ったのけ、

コホン、と咳払いをしてみせた。


それから、


「さ、貴女は店から出てください」


と静かに言って、アケミの腕を取り、

店の外へとアケミを連れ出してくれたのでした。















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