第43話 マリーゴールド➂



「まさかこんなことになるとは……」


「やっと会えたというには少し可笑しいか、マリーゴールド」


「貴様は!?」


「あの時のボクたちはちょっぴりだけ勘違いをしていたようだ」


「もしかしてだが……花見町の人形屋の探偵か……?」


 マリーゴールドはジッと突如現れた天音雫の目を見る。


「無駄だよ。ボクはその術にかからない。もう仕組みも知ってる」


「まさか貴様、女か……?」


「今朝にあの駄菓子屋に電話したのは正解だったよ。水はマンションに戻っていたようで直接話せなかったけどね。水の友達がたまたま居てくれて助かった。あ~そうだ、この服なんだけどさ、何か見覚えとかある?」


「き、貴様っ!! まさかっ!?!!」


 …………………………



 ◇



 今朝。駄菓子屋にて。



 固定電話が鳴ったのを燈火はすぐに受ける。


『こちら駄菓子屋ですが、』

『水じゃないね、? 君はあいつが庇った居候さんかな?』

『そのことを知ってるってことは……水か純の知り合いか? 今少し切羽詰まっててね』

『水の友達って言えば信じてくれる? ボク、天音雫って言うんだ。隣町でちょっと変わった探偵をしてる』

『天音雫……そうかだいたい分かったよ。信じるよ』

『水は高校にもう行ったのか?』

『ああ、純が行くように言ったからな。大神が居るから安全だとも言っていた』

『……そうか、仕方ないね。君、名前は?』

『えぇと……燈火』

『燈火ちゃん……急いでボクに協力してくれ、水を助ける』

『分かった』

『おそらく水は逃げてボクたちが居る花見町に来る』

『何でだ? 学校は安全なんだろう?』

『大神先生はおそらく居ないよ。ボクは花見町の事件後に一つ彼に言われたんだ。毎日メールを送る。メールがなかった時、私は危険な状況にある。ってね』

『じゃあそのメールが来てないのか』

『ここ数日ね。話を戻そう。水は必ず電車で来るように電話してくれないか? 時間も指定してくれ』

『水の電話番号を知らないのか?』

『いや、水にボクが動いてることを言わないでくれ、後々の作戦に響くからね』

『作戦?』

『電車に乗ったら燈火は水を一番前の車両のトイレに入るように誘導してくれ。そこでボクと水が入れ替わる』

『変装か?』

『ああ、以前に言われて気付いたボクたちの顔が似てることを利用させてもらう』

『じゃあそこで初めて君は水に会うということか?』

『いや……眠らせる。おそらくこれから君に伝える作戦を水は許してくれないからね』

『犠牲になるつもり? そこまで君がする理由は何だ?』

『友達だからだよ。守れなかった、ごめんで通せる関係にもうしたくないんだ!』

『分かった』

『ボクが水に変装した後一番奥の両に移る。そこでボクが合図したら君はドアを何らかの方法で壊してくれ、なるべく連結が外れるくらいの勢いで頼むよ』

『それくらいなら……可能だ』

『それとボクを撃ってくれ。心臓をだ』

『なっ!! それは出来ない! 水と純にとって大切な君を……殺せない』

『詳しく説明できないがボクは大丈夫だ、いいかい? もう一度確認する。だ。よろしく頼む』



 ◇



 現在――



「この服は水がついさっきまで着ていたものだ。そしてこのかつら」


 雫はマリーゴールドの前でショートカットの白い髪のかつらと血のりが入った壊れた人形を見せた。


「変装……? 血のり? そうか、あの弾を胸にしまっていたその人形で防ぎ、中から出たその血のりで死を装ったようだな」


「そうゆーこと」


「いや、それは有り得ない……ぞ!? さっきまで脈がなく、呼吸をしていなかったはずだぞ? それは確認したから間違いない……どうやってそんなことを……。まさかっ!!」


「ああ、噂くらい知っているだろ。魂を肉体からの外に出すを使ったんだよ。自分自身に……。抜け出したボクの魂は奥にこっそり置いていた人形に避難していたってわけ」


「うつわはずし……自分の魂を抜いたのかっ!! そんな馬鹿なことがあるか、」


「他人を操って目的を果たして自分の手は汚さないヤツに出し抜かれたりなんかしないよ。たった一つの自分の魂を賭けたボクの勝ちだ」




 時刻、9時49分――マリーゴールド、確保――――




「花見町で秘かに流行っていた髪の毛が白くなる睡蓮病や生きているのに目を覚まさなくなる眠り病はロベリア単体の仕業だと思っていたよ……。ある研究者に頼まれてロベリアが動いていたのは間違いないけど、裏で動いていたのはお前だったんだな、マリーゴールド」


「ロベリアは演技が上手い……流石売れてる女優ってとこだ。あいつはその研究者と俺との間に入ってあいつの研究薬品の受け渡しが主な仕事だった。幽霊が見えるとかは本当かどうか俺にも分からん」


「お前がその催眠、洗脳のような能力で実験をしていたということで間違いないんだな?」


「間違いない。眠り病というのは洗脳のし過ぎでショートしてしまった人間の状態のことだ」


「お前は裏で操るだけ……だから正体を突き止められなかったのか……。そして男にしか感染しないという理由が今分かったよ。こうやって男装し続けてきたかいがあった」


「俺の洗脳は女は対象外だ」


「さっきの電車でも女性が居なかったしな、」


「…………完敗だよ。どうやら俺が気付いていないかなり前から組み立ててきた数式は解かれようとしてたらしい、お前たちによって」

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