9 カウントダウン

「目標まで残り5分。侵入角予定通り。高度、速度そのまま」


航法士の落ち着いた声が響く。東京湾東側から侵入して北上しているところだ。このルートは既に高射砲陣地、レーダー基地を破壊してある。と言っても、もはや日本の制空権は俺らのものなのだが……


「扉開け」


俺は、弾倉の扉を開く指示をした。

爆弾を目標へ投下後、全力回頭150度ターン。やるべきことは簡単だ。頭の中で何度も何度も繰り返している。この”特別な”爆弾の事は既に知っていた。投下して、戻って来た奴の話しも聞いている。投下後の衝撃波の凄まじさ。それを避ける為の150度全力ターン。そして、投下した地表にいた者の事も……


余計な事は考えるな。考えるな。これは、戦いなのだ。俺は命令を遂行する義務がある。それだけだ……。


「1分」


航海士がカウントダウンを始める。機体の制御は照準器を覗く爆撃手へと渡されて自動で投下されるのを待つばかりだ。


「15秒」


「10秒」


「敵襲!! 直下!!」


「かまうな---」

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