箱庭でスローライフー現実世界でも魔法が使いたい僕の異世界日記ー

たむら

第1話 ぷろろーぐ

ゆ・・・・くん、目を・・・開けて

・・・ねが・・・を・・・・なない・・・


遠くで誰かを呼んでる声がする。

自分の存在が薄くなってしまったようで、自分のことが分からない。


静かになった。

真っ黒な世界の中で僕は一人漂っていた。

銀河?宇宙?それにしては星が見えない。

ただただ、ぼーっとその中を漂い、次の輪廻へと落とされるのを待っていた。

僕が生まれ変わるのは何となく本能でわかっていた。

きっと他の魂と同じく全ての記憶をまっさらにされて、次の人生を歩んでいくのだ。


次の人生はのんびりとスローライフがいいかな。

心の片隅でそんなことを考えていた。前世に何があったか覚えていないけど。

のんびり過ごしたい。


不意に何かに引っ張られる感覚があった。


次の瞬間、僕は転生していたことに気が付いた。

生まれた瞬間、頭が割れるように痛い。お腹の中に何かが暴れまわっているような熱さだ。


痛い。

熱い。

僕のそばで誰かが何か言っている。

痛い。

わからない。

そのまま僕は気を失った。



☆☆☆☆☆☆☆☆



―ふぎゃあふぎゃあ


「産まれたか!!」


バタンッ


「旦那様、大変でございます!」

「どうした」

「坊ちゃまの魔力が暴走して、奥様がっ・・・」

「なにっ!」


慌てて中に入って、妻と子供を探す。

いた。なんで窓際に!?倒れた妻を抱きかかえると、ひどく魔力を消耗している。

体力だけでなく、何故出産で魔力が無くなっているのか、疑問は尽きないがすぐに抱いてベッドへ寝かせる。


「・・・あなた、ごめんなさい。産まれるちょっと前からあの子が熱くなって、魔力が暴走していたのが分かったの」

「なんだって?それで?」

「このままでは、あの子の命が危ういと思って魔力を封印しました」

「そんな・・・」


魔力の暴走・・・封印・・・


「あの子が大きくなったら封印を解きます。でも、この魔力は危険です。様子を見て封印したままにした方がいいかもしれません」

「なんてことだ」

「ごめんなさい」


妻のメイリーンが憔悴しきった顔で、私に縋っている。私たち夫婦の魔力が大きすぎた為、子供に遺伝した魔力も大きくなってしまったのだろう。最近王宮や母の方がきな臭い噂が回っているし、こうなったら魔力を持たずに産まれたということにした方がいいかもしれない。奴らが侮っているうちになんとか出来ればいいのだが。

あの子には不便をかけるが、今の状況で暗殺などされないために。家族で暮らしていくために、内々で何とかしよう。


「いや、良いんだ。君と子供が無事でいてくれたなら。あの子を産んでくれてありがとう。ゆっくりおやすみ。メイリーン」

「ええ。おやすみなさい、あなた」

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