赤目族のエドが対立する黒目族を尋ねたら、怖いおじさんに捕まってピンチになったけど、おじさんの過去を知ってやっぱりチャレンジしてよかったと思い成長する物語
だいこん・もやし
第1話 エドと父と店のおじさん
エドは、13歳の少年である。赤い目をした、赤目族の子供だ。
彼の生まれ育った村には、赤目族のほかに、黒目族がいる。
「ーー」
エドは、赤目族と黒目族がいることくらいは知っていた。でも、それ以上でも以下でもなかった。
ようは、なにも知らなかった。
村は、赤目族と黒目族の居住域は別にある。間には柵があって、出入り口も常に双方の見張りがいて、近づけない。だから、黒目族の人間を見かけることが、ほとんどなかった。
たまに、監視員の黒目族を目にすることはあったが、黒目族がどんなものなのか、それさえ知らなかった。それが、とてもむず痒く、窮屈だった。
「だから、知りたい」
エドは、知りたかった。柵の向こうには、何があるのか。黒目族は、どんな人たちなのか。
大人たちの噂では、赤目族を罵り、暴力を振るう蛮族らしい。
ほんとにそうなのか。
赤目族は、緑豊かな田舎の村で、家族や周辺の住民以外のことは、誰のこともしらない。
「だれも自分の目でみてないのに!どうして黒目族のことがわかるの?」
エドは、ずっとおかしいと思っていた。道で頻繁に見かけるダンゴムシでさえ、誰も詳しく知らないのに、どうしてほんの少ししか見たことのない、黒目族のことがわかるのだろうか。
ある日、いつものように黒雑穀を大切に脱穀する父に、こう尋ねてみた。
「どうして黒目族はみんなに嫌われてるの?」
「……それは、簡単だ。みんな、黒目族のことをよく知らないからだ」
「やっぱり!父さんは僕の味方だ!ねえ、みんなが知るためには、どうしたらいいと思う?」
「まずは自分がよく知らなきゃいけない。それから、チャレンジすることだ。思い立ったら、なんでもやってみろ」
父の言葉を胸に、エドはチャレンジすることにした。
黒目族に会って、黒目族を知ろう。
といっても、黒目族のと赤目族の監視員がいる柵の出入り口を、正面突破するわけにはいかない。
単純だが、柵を大きく迂回することに決めた。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「ふう、なんとか黒目族のところに……」
柵を迂回しーーつまり、魔獣が居座る裏山の険しい道のりを経て、なんとか黒目族の区域についた。
エドは、とてもワクワクしていた。
黒目族を間近で見ることができる。山肌の木の陰に隠れながら、人々の往来を密かに観察していた。
黒目族の区域はすごい。馬車の往来があり、商店街があって、人も多い。
楽しそうに走る子どもたちがいて、買い物をする綺麗な婦人がいて、大きな家があって。
エドは、確信した。
「なーんだ、黒目族って蛮族じゃないじゃん。みんな、見たことがないから、てきとーなこと言ってたんだな」
ごくりと唾を飲んで、高鳴る胸に心を震わせながら、エドは、そっと木の陰から飛び出し、商店街を歩き始めた。
やっぱり怖くて、目は合わせないように、目は見られないように、なるべく地面を見る。
赤い何かが、ふと目に留まった。商店街の店頭に並ぶ、赤い果物。
おいしそうだ。
近づいて手に取り、食べてみた。
丸くて赤いそれは、甘くて少し酸味があって、すっきりとした味わいだ。
「うーんじゅーしー!」
「うーんじゅーしー、じゃねえ!店の商品を食うんじゃねえ!小僧!」
エドは驚いて逃げ出した。
「罵られた……」
赤目族の大人たちの話は本当だったらしい。
ーー黒目族は、赤目族を罵り、暴力を振るう蛮族だ。
黒目族側にある山の木の陰で、バクバクとなる心臓を落ち着けながら、エドはチャレンジを後悔した。
「怖かった……次は暴力だ……もう帰ろ。怖い……」
山を登り、赤目族の区域に帰還しようとしたとき、背後から凄い力で、首元をつかみあげられた。
振り返ると、さっきの店のおじさんだ。
これはまずい。早く逃げなきゃ……
「やっと見つけたぞ、小僧!お前だな、さっきオレの店のりんご食ったやつは!」
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