THEMISと紫電
「テミス! 飛ばすぞ!」
戯言遣いの偽物さんが叫ぶ。彼のアーマー、腕の部分には確かに「THEMIS」と書かれている。アーマーの名前? 中にAIでも入っているのだろうか。
「連発する! インパクト・ブラスト最大出力!」
自身の
ここに来て普通のパンチ……? あまりの単純さに嫌な予感がする。すると偽物さんも何かを感じ取ったのだろう。正面に向かってインパクト・ブラストを照射すると反動で大きく後退した。直後、
バラりと崩れる、床の素材。
細かいキューブ状。何だかああいうゲームを見たことがある。角砂糖の山が崩れるような見た目だった。本能的に分かる。あれに触れたら、まずい。
「分解能力?」
僕が叫ぶと、偽物さんが答えた。
「『詞衿』の能力だ! 俺の作品の敵キャラ!」
そうだ。
「あの手に触れたらまずいなぁ? テミス」
内部に搭載された人工知能と会話しているのだろう。すると急に、偽物さんの動きが俊敏になり始めた。
「すごい……」
僕がそうつぶやくと、いつの間にか僕の作った壁の後ろに来ていたスキマさんが分析した。
「
「
ひらりひらりと身をかわしながら偽物さんが叫ぶ。
「次の一手で決めるぜ! 行くぞ!」
インパクト・ブラストのキックで大きく上に飛び上がった偽物さんはいきなり背中に手を伸ばした。その先にあったものは……刀?
「妖刀、『紫電』」
輝く刀身。振り抜かれる一閃。
拳を突き出して突撃してきた
「てめー、俺を
即座に偽物さんが振り抜いた右手で
「ごり押すぜ!」
偽物さんが連続でインパクト・ブラストを照射する。祭囃子のような腹の底に響くビートで放たれたショックが
スライムを壁に思いっきりぶつけたような飛沫音があって。
「やった……!」
僕は思わずガッツポーズをする。
「やっぱり!
「つまり、あれか」
残った偽物さんが刀を背中にしまいながらつぶやく。
「俺は
その一言を合図にしたように、全員が武装を解く。銃を下ろしたスキマさんが応じた。
「一旦は信じてもよさそうです。
「ちありや
綺嬋さんが銃をホルスターに収めながらつぶやく。
「一応筋は通るわね。チームの分断を言い出したのもちありやわね。私たちをバラバラにして少しずつ始末していこうとしていたのなら納得できるわね」
「しかし私はちありやさんの指示で皆さんと合流しましたし……」
スキマさんが解せない、という風に首を振る。
「目的が見えません。ちありや
「埋まっていないピースがあるだけ、とはとれないですか?」
のえるさんが静かに告げる。
「『分からない』ことと『筋が通らない』ことは別です。不透明だった部分が分かった結果、筋が通ることもある。一旦、そのちありや
黙考していたすずめさんが口を開いた。
「賛成。でも当初の目的は果たすべきだと思う。シェルターがあってそこに『イビルスター』の仲間がいるんでしょ? この情報はちありやさんからも綺嬋さんからも得られている。『どっちも偽物だった』、つまり『綺嬋さんが
全員の視線が綺嬋さんに注がれる。しかし僕は証言する。
「綺嬋さんが
「……ならシェルターに援軍がいることは本当。一旦そっちの確保を急ぎましょう」
「このセクターZからシェルターへの近道は分かるわね?」
偽物さんが応じる。
「任せろ。テミス。避難シェルターまでの最短経路を」
「ん? 待つわね……」
いきなり綺嬋さんが片手を上げて制する。
「そう言えば、この先
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