ヤマカガシ!21回目のリベンジ
アほリ
ヤマカガシ!21回目のリベンジ
「くそったれっ!!もう少しだったのに!!」
草葉の中ヤマカガシのチョロンは、鎌首をあげて空を見上げた。
青空に、ひとつ。ふたつ。風船が飛んでいくのをヤマカガシのチョロンは悔しそうに見つめていた。
「嗚呼・・・風船・・・!!
マジで風船がおいら欲しいのに、何で何時も何時も何時も何時も人間が邪魔するんだよぉーーー!!」
ヤマカガシのチョロンは、どうしてもどうしても風船が欲しくて欲しくてたまらなかった。
最初にヤマカガシのチョロンが風船に魅せられたのは、お祭り屋台の風船屋だった。
「うわーーー!!綺麗だなあーーー!!」
人間に踏まれないように地面を這いつくばって、たまたまお祭りに来ていたヤマカガシのチョンは思わず感嘆した。
赤、青、黄色、白、桃色、オレンジ、水色、紫。
いろんな色の風船が、微風に煽られて屋台にぽーんぽーんと弾んで揺れていた。
「これが、『風船』っていうものか?」
暫くヤマカガシのチョロンは、美しいカラフルな風船に見とれていた。
突然、ヤマカガシのチョロンの脳裏に衝動に駆られた。
「この『風船』欲しいなあーーーー!!」
その時ヤマカガシのチョロンは何を思ったか、風船の束を結んである柱をクルクルと身体を絡ませてよじ登ろうとした。
すると、
「うわっ!!ヘビが這っている!!」
迂闊だった。突然店員に見付かってしまった。
「しっ!!しっ!!しっ!!しっ!!」
いきなりヤマカガシのチョロンは店員に棒を突っつかれた。
「痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!」
しまいには、激昂した店員に棒を振り回して、何度とどやされ地団駄を踏まれて、すごすごと追っ払われてしまった。
「ふぅ・・・危うく人間に虐められるとこだった。
風船を欲しろうとしただけなのに。
ヘビが風船に戯れちゃ何が悪いんだっ!!
それにしても、風船綺麗だなあ・・・何とかしても欲しいなあ・・・!!」
これがヤマカガシのチョロンの風船失敬作戦の1回目だった。
・・・・・・
2回目。
「あっ!!こんなところに風船だ!!」
ヤマカガシのチョロンは、今度は野外イベントでの飾りの風船を見つけた。
「今度こそ、風船をゲットしてやる!!」
ちょろちょろちょろちょろ・・・
チョロンは人間に見付からないようにゆっくりゆっくりと地面を這い、恐る恐る風船の束が結わえてある柱の側までやって来た。
「ぎゃーーーー!!」
「ヘビだぁーーーーー!!」
「毒ヘビだぁーーーーー!!」
野外イベント会場は忽ちパニック状態になり、人間達はヤマカガシのチョロンを嫌がって追いたてて、蹴り飛ばし大騒ぎした。
「うわーーー!!また失敗!!」
・ ・・・・・
3回目。
「しめしめ、今度こそ風船を頂くぞぉーーー!!」
ヤマカガシのチョロンは、キョロキョロと鎌首を曲げて辺りを見渡しながら慎重に、人間の子供達に配布する為に、鈴なりにテント上に浮いているいっぱいの風船の側へ、ニョロニョロと近づいていった。
「よいしょ!!よいしょ!!よいしょ!!よいしょ・・・あれ?」
突然、何度も這おうとしても全く前進出来なくなってしまった。
「よいしょ!!よいしょ!!よいしょ!!よいしょ!!よいしょ・・・おかしいなあ?」
ヤマカガシのチョロンは、そっと後ろを見た。
「うにゃーーーっ!!」
「ね、猫だぁーーーーー!!」
厳つい強そうな野良猫が、ヤマカガシのチョロンの尻尾を爪で抑え込んでいたのだ。
「離せ離せ離せ離せ離せ離せぇーーー!!」
「やだにゃ!!君は俺のおかずだにゃー!!」
厳つい野良猫のアルは、不敵な笑みを浮かべた。
「離せぇーーーーーー!!」
ずるっ。
その瞬間、ヤマカガシのチョロンの皮がずるりと抜けた。
「やられたにゃーー!!」
ヤマカガシのチョロンの脱皮した皮を掴んでいる野良猫のアルが悔しがるのを後ろを向いてアッカンベーして、チョロンはそそくさとニョロニョロ逃げていった。
「やば!!あのヘビ!ヤマカガシだったニャ!!毒ヘビを危うく喰いそうになったニャ・・・」
・・・・・・
4回目。
「今度こそ今度こそだ。」
ヤマカガシのチョロンは、イベント会場の配布の風船の束の側まで慎重にニョロニョロと移動していた。
「ここまでは成功。さて、登りきれるか?」
ヤマカガシのチョロンは、風船の束がいっぱい結ばれた柱沿いにニョロニョロと辿って登っていった。
「もうすぐ、もうすぐ、もうすぐ・・・」
むぎゅっ。
「はい!風船。」
風船の配布係が、誤ってヤマカガシのチョロンを握っていたのだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
配布係と、ヤマカガシを暫く見つめて硬直した。
ヤマカガシのチョロンは、チラチラと舌をちらつかせた。
「何でこんなとこに、毒ヘビがいるんだーーー!!」
風船の配布係は、慌てヤマカガシのチョロンを投げ飛ばした。
ひゅーーーーーーん・・・
「・・・ーーーーー!!」
ヤマカガシのチョロンは、弧を描いて遠くへ飛ばされていった。
・・・・・・
5回目。
「今度こそ今度こそーーー!!」
開店セールの風船の配布を見掛けたヤマカガシのチョロンは、はやる気持ちを抑えて地面をニョロニョロと移動した。
「風船!風船!」
ヤマカガシのチョロンは、登れる壁を見つけてはニョロニョロと移動して風船の束に近づこうとした。
ずるっ!!
「しまった!!」
ヤマカガシのチョロンは、バランスを崩して思わず身体を滑らせてしまった。
ぺたっ。
「あれ?おいら、何かくわえてるぞ?」
ヤマカガシのチョロンがくわえた先は、風船を膨らます為のヘリウムガスボンベだった。
しゅ~~~~~~~~~!!
「ふごっ!!ふごぉぉぉぉーーーー!!」
ヤマカガシのチョロンの身体は、どんどんとヘリウムガスで満たされてどんどん風船のように膨らんでいった。
しゅ~~~~~~~~~~!!
「ふごぉぉぉぉーーーーーーー!!」
ヘリウムガスてパンパンに膨らんだヤマカガシのチョロンは段々苦しくなり、遂に口をヘリウムボンベから離してしまった。
ぷしゅ~~~~~~~~~!!ぶぉぉぉぁーーーーー!!しゅるしゅるしゅるしゅる・・・
「たーーーすーーーーけーーーーてーーーー!!」
ヤマカガシのチョロンは、ヘリウムガスで半音高い声で叫びながら、口かヘリウムガスを吹き出してロケットのように右往左往に吹っ飛んでいってしっまった。
・・・・・・
そしてヤマカガシのチョロンは、
6回目、7回目、8回目・・・と、何度も何度も何度も何度も、
風船失敬作戦を失敗しては繰り返し・・・
遂に21回目のリベンジだ。
「21回目だっけ?あそこに風船がある限り、このチャレンジは続くのさっ!!
何とかしても風船をゲットしてやるぜっ!!」
遊園地で風船を見たとたん、ヤマカガシのチョロンは興奮してチョロチョロを早めた。
チョロチョロチョロチョロ・・・
「よし!ここまで順調だ。」
ヤマカガシのチョロンは、遂に風船の束のある柱まで到達した。
「ここからが問題だ。ここで何時も邪魔が入って失敗するんだよな。」
チョロンは、慎重に柱に身体を絡ませてよじ登った。
ニョロニョロニョロニョロ・・・
「順調、順調!!」
ヤマカガシのチョロンは、口に風船の紐が届く位までよじ登った。
そして遂に・・・
「やったぞ!!風船を掴んだ!!リベンジ21回目にしてやっと、風船を掴んだぞ!!」
その時だった。
ふうわり・・・
風船の紐をくわえヤマカガシのチョロンは、いつの間にか空にふうわりと浮いていたのだ。
「うわぁ!!」
ヤマカガシのチョロンは、空高く飛んでいいってしまったのだ。
空飛ぶヤマカガシのその光景に、遊園地に集う人間達は、空を見上げて騒然としていた。
ふうわり・・・ふわふわ・・・
ヤマカガシのチョロンは、掴んでいる風船を見上げた。
「綺麗だなあ・・・風船って。」
チョロンは、太陽の光に輝く風船にしばし見とれていた。
かー!かー!かー!かー!かー!かー!
「えっ?!」
その時だった。
向こうの方から1羽のカラスが飛んできたのだ。
「あっ!!これは遊園地の風船だ。割っちゃおう!!」
風船割りカラスのジョイは、虎視眈々とヤマカガシのチョロンの風船を見詰めていた。
「わ、割らないで!!」
ヤマカガシのチョロンは、慌てて何度も旋回してくるカラスのジョイに冷や汗をかいた。
「あ!?ヘビさん?!面白い!!」
風船割りカラスのジョイは、死に物狂いに風船をくわえているヤマカガシのチョロンの目の前でからかって旋回してしていた。
「割っちゃうぞーー!!割っちゃうぞーーー!!」
「じらすな!じらすな!じらすなぁーーー!!」
「やば!!このヘビ!ヤマカガシぃーーー!!毒ヘビだぁーーー!!
くわばらくわばら!!
割っちゃお!!」
ぷすっ。
ぱぁーーーーーーーん!!
「うわーーーーー!!」ドスン!!
風船割りカラスに不意打ちされて、嘴で風船を割られたヤマカガシのチョロンは、真っ逆さまに地面に墜落した。
「いててて・・・」
目を覚ましたヤマカガシのチョロンは、割れた風船を悲しそうに見詰めた。
「あーあ・・・こんなに綺麗な風船がこんなになっちゃった。」
ヤマカガシのチョロンは、鎌首をあげると空を見詰めた。
「まいいか。22回目のリベンジで何とか綺麗な風船をものにするぞ!!」
ヤマカガシのチョロンは、割れた風船の紐を身体に巻き付けるとチョロチョロと意気揚々と這っていった。
~ヤマカガシ!21回目のリベンジ~
~fin~
ヤマカガシ!21回目のリベンジ アほリ @ahori1970
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