秘密の関係 両手

仲仁へび(旧:離久)

第1話




「右」と「左」は秘密で結ばれた関係だ。


 なぜなら。どちらかが死んだら、片一方も死ぬからだ。


 だから「右」と「左」は一連托生の間柄だった。





「右」は何でもできた。初めてやる事もそつなくこなす。


 けれど、人望がなかった。


 いつも楽をしているためだ。


 誰もついてこない。





「左」は不器用だった。初めてやる事にはほぼ躓く。


 けれど、根気があった。


 たゆまぬ努力を続ける姿勢を見て、多くの人がついていった。





 小さなきっかけで出会った「右」と「左」は互いの力に注目して、力を合わせる事にした。


「両手」になった彼らは、多くの物をすくい、つかむ事ができるようになった。


 どんな難所も上る事ができるし、どんな険しい場所にもしがみつく事ができる。


 互いが互いのは最高の相棒だった。


 けれど、「両手」は完ぺきではない。


「右」は人望がない事をずっとコンプレックスにしていたし、「左」は不器用な己を責め続けていた。


 人々は、その「両手」の事を、なんでもすくいとり、つかむ事ができる存在だと思っている。


 けれど、そんな事はない。


「右」にも「左」にも、人に明かせぬコンプレックスがあった。だからこそ、今の「両手」ができる事になったのだ。


 彼らは、「両手」がつくられてから数十年目の記念日にその秘密を明かした。


「右」と「左」の秘密の関係は、そこで終わりだった。





「親近感を持ったよ! もっと応援したくなった」


「これからもがんばれよ!」


「やめないでおくれよ! まだあたし達は「両手」の活躍を見ていたいんだ」





 けれど、「両手」の歴史は終わらない。


 これからも、まだまだ続くようだった。



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