第52話:10階層
まず僕は10階層の洞窟を広げるところから開始していた。
これはいつもの作業ではあるので、特段大変なことでもない。
広さは……、別に迷わせようという魂胆はないので、大空間を一つだけ。
それを見ているとなんだか懐かしい気持ちになってくる。
初めはこれだけしかなかったんだよね……。
それが配信を開始したことをきっかけに一気にダンジョンを広げることができて、今ではこうして10階層もあるダンジョンにまで広がっていた。
ランクも上げられるとは思っていなかった。
そもそも、生活をしていくのがやっとだったのに、今では冒険者の人たちがたくさんやってくる人気ダンジョンへと成長していた。
だからこそ、ここは僕からの恩返し。
10階層にまでたどり着いた人には、ここでしか手に入らない幻のレアアイテムを……。
もちろん、アイテムを一から創造するのには、普通のアイテムを召喚する以上にDPを使う。
そのアイテムが高い性能を持てば持つほど、その消費DPは格段に上がっていく。
「うん……。よし、やろう」
覚悟を決めると、僕は始まるきっかけだったライブ配信を開始していた。
◇◇◇
「みなさん、こんにちは。久々の配信を始めたいと思います。今日はカナタダンジョンの10階層。ここに特殊な仕掛けを施したいと思います」
ずいぶんと配信を慣れてきた僕は、緊張することなく、笑顔を見せながら配信することができていた。
……訳もなく、相変わらず顔は強張って、ぎこちない動きのままだった。
:始まった
:緊張助かる
:もう10階層か
:特殊な仕掛けか
「ちょっと9階層の魔物を強くしすぎちゃってね……。その割に報酬が少ないから、みんなの欲しいものを聞いて、その上で世界に一つしかない特別なものを作ろうかなって思ってるんだよ……。でも、どんなものがいいかなって――」
10階層の凹凸を整えながら言う。
DPを消費してダンジョンを広げるのも久しぶりな感覚だった。
最近は秋が手で広げてくれていたもんな。
破壊者のスキルは伊達ではなく、簡単にダンジョンを広げて貰えるので、最近はついつい頼りがちだった。
でも、今回は秋たちにも隠れて作りたかったので、内緒にしていた。
まぁ、配信をしてしまったら一緒かもしれないけど……。
「とりあえず、広場の中央に宝箱をセットして……と」
あとはそれを守護する人を召喚しないといけないけど……。
「まぁ、ここはあとからでいいよね?」
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