第44話:説明会

 ダンジョンの前にはたくさんの人集りができていた。

 これらは全て、ダンジョンで住んでくれる人たちだった。




「えっと、さすがに多すぎないかな?」

「それだけ奏さんのダンジョンで働きたいって人がいたんですよ」

「で、でも、みんなの前で、これからのことを説明するんだよね? さ、さすがに恥ずかしいよ……」

「何を今更な事を言ってるのですか? いつも全世界へ向けて配信されているじゃないですか?」

「あ、あれはカメラに向かって喋ってるだけだから大丈夫なんだよ。で、でも、今回はみんなの前で喋るわけだからその……」

「わかりました。それも配信形式を取りましょう。ダンジョンマスターがマスタールームから出るのもおかしい話ですもんね」




 こうして、一応僕は事なきを得たのだが……。







「み、みなしゃん、は、初めまして……。だ、ダンジョンマスターをしているか、奏です……。そ、その……、よろしくお願いします……」




 かなり配信慣れしているつもりだったのに、いざみんなに配信しようとすると緊張して、盛大に噛んでしまっていた。


 その恥ずかしさから、僕は顔を真っ赤にして、そのままフェードアウトしそうになっていた。


 しかし、それを遥は許してくれない。




「奏さん、最後までお願いします」

「だ、だって、いきなり痴態を見せちゃったよ!? 恥ずかしくてこれ以上配信なんてできないよ」

「大丈夫ですよ。奏さんの痴態は今に始まったことではありませんので」

「そ、それはそれでひどくない!? は、遥さんって、僕のこと、配信で見て、ファンになったから来てくれたんだったよね!?」

「はいっ。それは今でも変わらないですよ?」

「ぜ、全然そんな風に見えないんだけど……」

「そんなことありませんよ?」

「あぁ、そうだな。遥は奏のこと、かなり好きだよな? そうじゃないとここまで心配して親身になったりしない――」




 ニヤニヤしながら秋が言うと、その瞬間に遥が本で秋を叩いていた。




「秋? 余計なことを言わないでください。殴りますよ?」

「痛っ。痛っ。殴ってる。殴ってるから!」




 ポカポカ……。




 ひたすら殴り続ける遥。

 ただ、彼女なりに手加減していることは容易にわかる。


 まぁ、それでも分厚い本で叩かれたら痛いんだけどな……。


 僕は思わず苦笑を浮かべていた。




「えとえと、まぁ、こんな感じで面白楽しく過ごしています。困ったことがあったらいつでも言ってくださいね。遥さんに」

「奏さんは基本ダンジョンに引きこもってますからね。自宅警備員ならぬダンジョン警備員ですね」

「ダンジョンマスターだよ!?」

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