第44話:説明会
ダンジョンの前にはたくさんの人集りができていた。
これらは全て、ダンジョンで住んでくれる人たちだった。
「えっと、さすがに多すぎないかな?」
「それだけ奏さんのダンジョンで働きたいって人がいたんですよ」
「で、でも、みんなの前で、これからのことを説明するんだよね? さ、さすがに恥ずかしいよ……」
「何を今更な事を言ってるのですか? いつも全世界へ向けて配信されているじゃないですか?」
「あ、あれはカメラに向かって喋ってるだけだから大丈夫なんだよ。で、でも、今回はみんなの前で喋るわけだからその……」
「わかりました。それも配信形式を取りましょう。ダンジョンマスターがマスタールームから出るのもおかしい話ですもんね」
こうして、一応僕は事なきを得たのだが……。
◇
「み、みなしゃん、は、初めまして……。だ、ダンジョンマスターをしているか、奏です……。そ、その……、よろしくお願いします……」
かなり配信慣れしているつもりだったのに、いざみんなに配信しようとすると緊張して、盛大に噛んでしまっていた。
その恥ずかしさから、僕は顔を真っ赤にして、そのままフェードアウトしそうになっていた。
しかし、それを遥は許してくれない。
「奏さん、最後までお願いします」
「だ、だって、いきなり痴態を見せちゃったよ!? 恥ずかしくてこれ以上配信なんてできないよ」
「大丈夫ですよ。奏さんの痴態は今に始まったことではありませんので」
「そ、それはそれでひどくない!? は、遥さんって、僕のこと、配信で見て、ファンになったから来てくれたんだったよね!?」
「はいっ。それは今でも変わらないですよ?」
「ぜ、全然そんな風に見えないんだけど……」
「そんなことありませんよ?」
「あぁ、そうだな。遥は奏のこと、かなり好きだよな? そうじゃないとここまで心配して親身になったりしない――」
ニヤニヤしながら秋が言うと、その瞬間に遥が本で秋を叩いていた。
「秋? 余計なことを言わないでください。殴りますよ?」
「痛っ。痛っ。殴ってる。殴ってるから!」
ポカポカ……。
ひたすら殴り続ける遥。
ただ、彼女なりに手加減していることは容易にわかる。
まぁ、それでも分厚い本で叩かれたら痛いんだけどな……。
僕は思わず苦笑を浮かべていた。
「えとえと、まぁ、こんな感じで面白楽しく過ごしています。困ったことがあったらいつでも言ってくださいね。遥さんに」
「奏さんは基本ダンジョンに引きこもってますからね。自宅警備員ならぬダンジョン警備員ですね」
「ダンジョンマスターだよ!?」
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