第42話:大募集

 せっかくなので、ダンジョンで働いてくれる人を一気に募集してみることにした。

 もちろん、僕のダンジョン……ということもあって、配信をする可能性もある。

 そこも考慮して、配信経験のある人で宿の経営、ダンジョンの管理等を行える方……、という募集で出して見た。

 まぁ、エリシャの時も結局彼女一人しか来なかった。

 それを考えると今回も一人、ないし二人来てくれたら十分と見るべきだろう。


 そんな甘い見積もりで、配信中に募集を書けてみた。




:今度こそ俺もいくぞ!

:居住が与えられるんだろう?

:性別の縛りがあるんじゃないのか?

:でも、奏ちゃんは男だぞ?

:しかもカナタダンジョン入りたい放題、レベル上げ放題だもんな

:よし、俺もレベルを上げにいこう。

:募集要項を見てると俺でも行けるな

:ちょっと行ってくる!




 コメントでは前と同じように盛り上がっていた。

 まぁ、このうちの一人でも応募してくれたら……。

 そう思っていた。

 しかし――。




「お、お兄ちゃん、またこのダンジョンで働きたいって人が来てるよ?」

「う、うそっ……。こ、これでいったい何人目なんだ?」

「奏さん、一応書類の提出を頼んで、そっちを私の方で選別しておきますね」

「ありがとう、遥さん……」

「いえいえ、一緒に働く人ですからね。変な人に来てもらうわけには行きませんからね」

「その選別後は私と直に戦ってもらうぞ! やっぱりダンジョンで働く以上、戦闘力は必須だからな!?」

「い、いや……、さすがに秋ほどの戦闘力は必要ない……かな? それをいうなら僕もエリシャもそんな力を持ってないからね?」

「私のトレーニング相手も兼ねるからな!」

「勝手に兼ねなくて良いよ。そういう人が必要なら別に募集かけるから……」




 相変わらずの秋に僕は苦笑を浮かべる。


 それにしても、どうしてこんなに人が増えたのだろう?

 僕自身、首を傾げざるを得なかった。

 しかし、その理由の一つに以前襲ってきたSランク冒険者たちの存在があった。


 高ランクの冒険者である彼らももちろん配信をしている。

 奏ほど人気配信者……というわけではないが、それでも腐ってもSランク。


 やはりそれなりに人気はある。

 しかも、見に来るのは冒険者がメイン。

 更に更に、最近彼らの配信はほとんどがカナタダンジョンについて。


 Sランク冒険者である彼らがたかだかDランクダンジョンに付きっきりになるという異常事態。

 これに興味を抱かない人はいない。


 そんな矢先でのダンジョンで働く人の募集。

 うまくタイミングが重なったからこそのこの人数だった。


 そして、当然ながらこのSランク冒険者たちも応募しているのだった――。

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