第37話:未知なる領域へ
三階層のボスはなんとドラゴンであった。
体長十メートルはあろうかという巨体を前にしても、冒険者たちは冷静だった。
「なんだ、肉か」
「ドラゴンステーキっておいしいよな」
「まぁ、Sランクの魔物っていったらこれだと思われてるのか、よく見かけるもんな」
「確かに能力は強力だし、スキルも強い。Sランクを名乗るだけの能力はもってるけどな」
「やたら体力だけ高くて時間がかかるんだよな。面倒だから別の奴に変えてくれないかな」
「さすがにそれは無理だろ……。それにここ、あまり広くないから攻撃を躱す場所もほとんどないな」
「攻撃を回避させずに一方的に痛めつける……。鬼だな」
実際は奏としては十分に広げたつもりだったのだが、それでも全然広さが足りなかったようだ。
ドラゴンが一方的に攻撃をする凶悪な空間となっていることが、この階層が中々突破できない理由でもあった。
「まぁ、そういうダンジョンも過去にはあったけどな。こういう場合はまずダンジョンを攻撃――」
盾使いが手に持っていた大盾で思いっきり壁に体当たりする。
すると、その瞬間に甲高い音がなり、盾使いが弾かれていた。
「うおっ!? な、なんだ!?」
「これは破壊不能になっているな」
「おいおい、こういう狭い場所でのドラゴン戦は場を整えるところから始めるのが基本だろ? それをさせないってどういうことだ?」
「かわいい顔をして、実はかなり腹黒いって事だろう? 絶対に攻略させないって――」
知らず知らずのうちに勝手に勘違いされていた。
「とにかく空間を広げることができないなら持久戦になるぞ。俺がしっかり守ってやるから回復を頼んだ!」
「よし、任せろ! サクッと殺ってやる!」
「お、おい! 今のやるって言葉おかしくなかったか!?」
「くるぞ!?」
剣士のかけ声と共にドラゴンが思いっきり火炎を吐いてくる。
それを盾で受け止める盾使い。
「あちっ、あちっ。回復を頼む!」
「よし、そのまま突っ込め!」
「って、回復しろ!!」
「ちっ、
ダメージを受けながら、ドラゴンへと突き進む。
そこはもう力業だった。
盾使いがダメージを受けながら前進して、剣士がドラゴンに攻撃。
ちょっとしたダメージでも僧侶が回復をして、魔法使いが遠距離で魔法をドラゴンに当てる。
それを数時間続ける。
もちろん途中で魔力が尽きるので、それを魔力ポーションで回復をし、たまには休憩を挟みながら続け、ようやくドラゴンを倒すことができていた。
「はぁ……、はぁ……、も、もうやりたくないぞ……」
「これは中々邪悪な配置でしたね」
「でも、いよいよ未知の領域か。四階層は配信もされていなかったからな」
期待と不安が入り交じりながら、次の階層へと下りていく。
すると、入り口にいきなり宝箱が九つも置かれていた。
「はぁ……?」
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