第30話:ライバル配信者
どうして、私の配信が全く人気が出なくて、あんな男の配信が大人気なのよ!?
奏の配信を見ていた少女は悔しそうに口を噛みしめていた。
なにがあれだけの人気を博しているのかわからない。
自分の奏の違いがわからない。
それなのに、あっちの配信は大人気。
一方の自分は一桁の視聴者数。
何が違うのか。
やっぱりダンジョンマスターと冒険者の違いなのだろうか?
希少性だけであそこまで数字が跳ねているのだろうか?
「そっか……、私があのカナタダンジョンを攻略配信して、圧倒的な力で攻略すればきっと人気も出るよね?」
にっこりと微笑む少女。
巨大な金槌を背に持つと、カナタダンジョンへと向かって行く。
その少女の名前は、
またの名をデストロイヤー。
全てのダンジョンを壊し尽くす破壊の冒険者の名を欲しいがままにしていた少女だった。
◆◆◆
さすがに三階層は中々攻略されなかった。
それもそのはずで、僕が召喚したドラゴンはなぜか自動HP回復が付いているようだった。
僕が見えているスキルにもそんな情報はなかったのだけど……。
とりあえず、そのせいで数の暴力も意味がなかった。
一撃がよわいと一瞬で回復されてしまうのだ。
せっかく四階層の宝箱部屋を作ったのに、まだたどり着いた人がいないのは残念だな……。
そんなことを思っていると、遥さんが慌てた様子でやってくる。
「奏さん、大変です! デストロイヤーが……。デストロイヤーがこのカナタダンジョンを攻略すると言っています!」
デストロイヤー?
聞いたことない名前だけど、有名な冒険者なのかな?
「そんな有名な人に攻略配信をして貰えるなんてうれしいな……」
「そ、そんなことを言ってる場合じゃないですよ!? なにか対策を取らないと大変です」
「えっ!? ど、どういうこと?」
「デストロイヤーはですね、その……」
遥が口を開こうとしたその瞬間に、ダンジョンから何か爆発音が聞こえてくる。
「な、何が起こったの!?」
「手遅れでしたか……」
僕が慌ててモニターを操作して、その音が鳴ったところを調べると、なぜかぽっかりと大きな穴が空いていた。
「何、この大穴?」
「これがデストロイヤーの力です。ダンジョンそのものを壊して、正規ルートじゃないところから一気に攻略する冒険者なんですよ。いわゆるチートってやつですね」
「そ、そんなことが許されてるの!? だって、ダンジョンマスターが必死に作って、他の冒険者も頑張って攻略してるのに……」
「だから、あまり良いようには思われてないようですね。でも、そのせいで対策を取らないと大変なことになるのですよ」
「ど、どうしよう……。そ、そうだ、ダンジョンの床を硬くして――」
「硬くするだけじゃダメですよ。それこそ、破壊不能オブジェクトにするくらいじゃないと……」
「わ、わかったよ……」
慌てて、ダンジョンの設定を変えていく。
もちろんそれをするのにかなりのDPを消費するのだが、ここで、あまり評判が良くない、というのが役に立った。
デストロイヤーを封じるためなら、と大量のスパチャが送られてくるのだった。
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