第15話:建物を作ろう
あの後、僕は冒険者組合から土田に捕まった報告を受け、僕たちのダンジョンにも日常が戻ってきた。
次の日、約29,000ものDPが入って来たけど、そのうちの21,000ほどは魔物の復活に使ってしまい、今残っているのは8,000DPほどだった。
「うーん、今日はどうしようかな……」
ダンジョンを広げていっても良いんだけど、昨日の襲撃があったからか、今日はほとんど冒険者が来ていない。
それに完全にダイヤスラ妖精の倒し方がバレてしまったので、DPは余裕を持っておきたい。
そう考えると今日は完全な休暇となっていた。
それに遥には昨日、無茶をさせたので彼女に休みをあげる意味合いでも、ちょうど良かっただろう。
そんなことを考えていると、遥がマスタールームに入ってくる。
「……おはよーございます」
「おはよう。昨日の怪我はない?」
「はい、大丈夫ですよ。スキル無効のトラップとロザリオのおかげで私は全く攻撃を食らってませんから」
「それならよかったよ。遥に怪我をされたら大変だもんね」
遥は元気そうに両手で握りこぶしを作ってみせた。
その様子を見て、僕は安堵の息を吐いていた。
「それよりも今日はなんだか静かですね。まだ魔物は復活させてないのですか?」
「ううん、もう復活させたんだけどね。でも、今日はどうにも冒険者の出が少ないんだよ……」
「どうしてだろう? 情報収集できたら良いんですけど、冒険者組合へ行くには少し遠いからなぁ」
「あっ、それなら配信で聞いてみたら良いんじゃないかな? せっかくあれだけ視聴者がいるんだし、なにか理由を知っているかもしれないよ?」
◇◇◇
配信を行うと、その理由がすぐにわかってしまった。
:最近、町近くのBランクダンジョンにも、ダイヤスラ妖精が召喚されてたからな
:カナタダンジョンは距離があるから、中々行けないんだよ
:一日一回しかいけないもんな。狩り効率はあまりよくないかも
:せめて宿泊施設があって、ダイヤスラ妖精のいる場所が二階層入り口じゃなくてボス部屋だったらな……
:スラ妖精の出現率は断トツだから、そこはいいんだけどな
◇◇◇
「そういうわけで、ダンジョンの周りに宿泊施設を作っていこうと思います!」
誰も見ていない中、 僕は高々と宣言していた。
それを聞いていた遥は、同じように手を上げていた。
「おー!!」
「それじゃあまずは山に生えてる木を切り倒していこう!」
「えっ? 木を切るのですか? いつもみたいにモニターを操作するのじゃないのですか?
「 DP で買うことができるのはダンジョンの中だけなんだ 。周りはダンジョンじゃないから DP では買うことはできないんだ……」
「そうなのですか? 2階層を広げた時みたいに地上にも広げられるもんだと思ってましたよ……」
「多分できないと思うけど……、あっ」
モニターを触っていると、ダンジョン拡張から地上で広げる項目があった。
「あった……。できるみたい……」
―――――――――――――――――――――
【ダンジョン拡張】
消費DP:10/㎡
―――――――――――――――――――――
相変わらず広げるには1DP辺りのDPが必要になるらしい。
しかも、まだダンジョンじゃないからか、少し割高になっている。
「まず必要なのは旅館だよね? 他に遥から見て必要な物ってあるかな??」
「近くに冒険者組合とかがあったら便利ですけどね。たださすがにこの辺りに支店を持ってくるとなると、人の出入りが少なすぎますね」
「さすがに冒険者組合はなさそうだね……。作れるのは建物までみたいだし……」
「そっか……。ダンジョンのすぐ近くで復活できたら便利だなって思ったんですけど……」
「復活地点か……」
―――――――――――――――――――――
【再生ポイント】
ダンジョンで全滅した人たちをここで復活させる。
復活の料金として、全財産の半分を回収し、マスターのDPへと変換する
消費DP:5,000
―――――――――――――――――――――
復活地点だけならあるんだよね……。
しかも、これでも勝手にDPが増えてくれる。
冒険者の人たちも来やすくなる。
良いことしかない気がする。
問題は復活地点を壊されたりしないかどうか……。
こればっかりは実際に召喚してみないことにはわからなさそうだった……。
「なら、作るのは宿泊施設と再生場所……、教会でいいかな?」
「教会?」
「うん、復活させる場所……っていったら教会でしょ?」
「あぁ、……、確かにそうですね。別に冒険者の監理とかしなくて良いんですもんね。ただ、復活してもらえば良いだけですし……」
「しないで勝手に DP が入ってくれるみたいなんだよ。それなら作っておこうかなと思って……」
「うん、私は賛成ですよ」
「まだ当面はこの二つの作成ってことで進めよう」
「おー!!」
◇◇◇
ただ、実際にダンジョンの外を見てみないと、どこかに配置したらいいかわからない。
久々に僕はタンジョンから出てきて、外で配信しながらダンジョン開拓することにした。
モニター越しには見てたけど、日の光が眩しい……。
「今日はここまでにしようかな……」
「は、早いですよ!?」
「だって、明るいうちから働いたら負けだよ?」
「むしろ明るいうちに働かないでいつ働くのですか!?」
「うーん、夜かな?」
「夜は寝ましょうよ……」
「ほらダンジョンは暗いから……」
「それもそうですね……、マスタールームには明かりがあるけど、ダンジョンの中は真っ暗ですからね」
「そういうこと」
「でも、冒険者の人にたくさんきてもらうんですよね? ほらっ、頑張りましょうよ」
「仕方ないね……。頑張るよ」
流石にマスタールーム以外で、モニターを複数表示させながら歩くような危険な真似はしない。
最低限、手元に小さいモニターを一つだけ表示させて、開拓に必要なDPだけを確認していた。
カナタダンジョンの周りは、人の歩くような道はない。
最近冒険者が来てたから道は少し踏み固められているが、それでもここにダンジョンがあるかわからない。
「まずは木を切るところから始めないとだね。えっと……」
DP を消費して、【ダンジョン拡張】をする。
すると、回りの木がなくなり、ダンジョン前に広場ができる。
「あっ、これもスキルでやってくれるんだ……」
雰囲気がガラッと変わる。それこそ、ダンジョンらしく見えてきた。
ただ、それをするためだけに DP が1,000も消滅している。
「残り7,000DP……、再生ポイントに5,000使うから、あと2,000……。なるべく抑えておきたいよね」
あと必要な物は建物なので、それを作ろうとする。
―――――――――――――――――――――
【木造家屋】
平屋の木造建物。
消費DP:1,000
―――――――――――――――――――――
うっ……、た、高い……。
思いのほか高額だったので、一瞬留まってしまう。
でも、せっかく冒険者の人が来始めているのだから……と、そちらも購入し、広場を取り囲むように二軒、配置しておいた。
「奏さん、この建物ってもしかして……」
「うん、旅館と教会かな?」
「えっと、ただの家にしか見えないけど……、両方とも」
「その……、建物が意外と高くて、これしか買えなかったんだよね……」
「まぁ、教会はいいとして、宿はこれでいいのですか? たくさんの人は泊まれないけど……。あとは従業員もいないですね……」
「勝手に寝泊まりしてくれたらいいよ……」
「そんなことをしたら治安が悪くなりますよ……。そうだ、せっかく配信してるんだから、宿の従業員を募集してみたらどうですか?」
「あっ、うん、それいいね。それじゃあ、誰か来てください! よろしくお願いします」
一応配信してるのだから、と呼びかけてみる。
それが後々とんでもないことになるとは思わずに……。
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