第10話:配信でダンジョンを作る、スパチャをもらう(永久機構)

 夕方になると配信の準備をしていた。

 僕の隣にはガチガチに緊張した遥。


 さすがに突然配信するとなるとそうなるよね。

 僕も最初はそうだったから。


 逆に遥が緊張してくれているおかげで僕は落ち着いていられた。

 それがありがたかった。


 遥に微笑みかけると、僕は配信を開始していた、




「みなさん、こんばんは。今日もライブ配信に来てくれてありがとうございます。今日はダンジョンの改造を行っていこうと思いますが、その前に僕のことを手伝ってくれることになった遥を紹介します」


「あ、あのあの……、えっと、わ、私は牧原遥まきはらはるか……です。よ、よろしくおねがいします」




 挨拶だけはモニターをカメラにしている。

 さすがに目の前で撮られているとわかると緊張してしまうのは仕方ないことだった。




「あいさつが終わったから、このモニターは避けておくよ。目の前にあるとやっぱり緊張するもんね」


「えと……、そ、そうですよね。ありがとうございま……」




 遥は顔を真っ赤にして、何度も頷いてくる。

 やはり、かなり緊張していたようだ。

 僕も最初はそうだったので、よくわかる。




 録画しているモニターを消すと、モニターなしで自動的に録画してくれるようになる。

 むしろ、わざわざモニターを配置したのは、自己紹介中に勝手に映す場所を変えないためでしかないのだから。




 さっそく僕たちは今回の配信の目的である二階層へ移動する。


 ボス部屋の奥にある階段から下りると広い空間が広がっていた。

 回り一体が土の壁である大空間。

 それはまるでダンジョンの入り口のようであった。




「さて、まずは何から始めようかな?」


「さすがにこの空間だけだと手狭だから、ダンジョンを広くするところからじゃないですか?」


「それもそうだね。通路から作り始めるかな? みんなはどんなものを作ったらいいと思う?」




 視聴者の人にも意見を求めてみる

 せっかくなので、側にモニターを浮かせ、すぐにコメントを見られるようにしておく。

 すると、大量のコメントが流れるように打ち込まれていた。




:Sランクの魔物を召喚しよう

:迷子になるように迷宮にしよう

:通路だな

:ホテルでも作るか

:宝部屋が欲しいな

:スラ妖精でレベルを上げたい




 そして、書かれるのはコメントだけには留まらない。




――――――――――――――――――――

初心者冒険者

¥1,000


スラ妖精を頼む

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

現代に現れし魔王

¥100


ふははっ、これでダンジョンを整えるといい

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

黒の勇者

¥10,000


世界の半分をお前にやろう

――――――――――――――――――――




 思い思いのコメントが流れる。

 ただ、やはり経験値を多くくれるスラ妖精がほしい……というコメントが多い気がする。




「スラ妖精か……。Dランクモンスターだけど、召喚するのに100DPも使うんだよね……」


「100DP? どのくらいになるのですか?」


「あっ、そっか……。遥には1DPがどのくらいか教えてなかったよね」




 僕は1DPが200円で交換できること。

 だいたいスパチャは9割、配信収益は視聴者の1割が僕に入ってくることを説明した。

 他の人だと変わる場合があるけど、ダンジョンマスターである僕は大体この辺りだった。


 さすがにそれを説明している間はミュートにしていたが――。




「つまりスラ妖精を召喚するにはたくさんお金がいるってことですね」


「うん、そういうことかな」




 遥の質問に答えただけのつもりだったが、その瞬間にスパチャが大量に送られてきてしまう。




――――――――――――――――――――

冒険者っぽい人

¥10,000


スラ妖精を頼む

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

冒険者になりたい魔族A

¥20,000


投げたらスラ妖精大量のダンジョンが作られると聞いて

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

貧乏商人

¥5,000


すまん、今日はこれだけしかないけど、スラ妖精を

――――――――――――――――――――




 一気にスパチャの額が増えてしまう。

 ここまでもらっては僕自身も動かないと行けない。



「うん、みんなの希望はわかったよ。それなら、今日入ってきたスパチャは全部スラ妖精を消化するのに使うね。これでどうかな?」




 今でもすでにスラ妖精を二体召喚できるほどのスパチャが入ってきている。

 実際に本当に召喚するところを見せるために、スラ妖精を召喚する。




「僕たちは別にダンジョンを広げていくから、スパチャが貯まるたびに一体召喚するね。あと、要望が多いから、この二階層はスラ妖精だけしかいないようにするよ。一階層にいたスラ妖精も移しておいて……と」




 二体のスラ妖精が僕たちを囲むようにぐるぐると回る。

 それを見た瞬間にコメント欄が歓喜に満ち溢れ、色付きメッセージ以外全く流れない、カラフルなコメント欄に変わっていた。




――――――――――――――――――――

黄昏の剣士

¥10,000


投げろ投げろ! ボーナスタイムだ

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

配信系 Dtuber 田中

¥50,000


新しい狩り場誕生か!?

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

魔王になりたかった一般人

¥30,000


俺もレベルを上げたら魔王になれるかな?

――――――――――――――――――――




 いや、カラフルですらなくなりつつあった。

 怒涛の赤スパチャが奏を襲う。




「ちょ、ちょっと待って!? おかしい、おかしいよ!? いくらなんでも投げすぎだから!? い、一体、どのくらいのスラ妖精を召喚しないといけないの?」


「いろんなレベルのスラ妖精が出せますね。普通のやつの他に、金色とか白銀色とか、噂ではダイヤモンド並みの強度を持つダイヤスラ妖精がいると聞いたことがありますよ。私も見たことはないですけど、とんでもない経験値を持ってるとか――」


「うーん、確かにいるね。ダイヤスラ妖精。でも、ランクはSで召喚DPは2万らしいね。流石に手が出ないかな……。お金でいうなら450万近くいることになるし……」




 しかし、この言葉を皮切りにコメント欄が更に加速することになる。




――――――――――――――――――――

メタル冒険者

¥50,000


おい、聞いたな? 450万貯まれば、ダイヤスラ妖精を召喚してもらえるぞ?

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

全損冒険者

¥50,000


装備を買うために貯めてたけど、ここで放つべきか

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

Cランク冒険者C

¥50,000


一体どのくらい経験値をもらえるんだろうな?

――――――――――――――――――――




 すっかりダイヤスラ妖精を召喚して貰えるつもりでいるらしい。

 いや、お金が貯まったら召喚するけど、本当に良いのかな?


 僕はモニターで召喚のページを開きながら、苦笑をしていた。




―――――――――――――――――――――

レベル:60 種族:ダイヤスラ妖精(ランク:S)

HP:100/100 MP:1,000,000/1,000,000

筋力:200 耐久:5,110 魔力:2,000 精神:2,000 速度:5,110

スキル:【逃げ足(LV:10)】【経験値増(LV:10)】【極大魔法(LV:10)】【全体攻撃(LV:10)】【会心無効(LV:10)】【物理反射(LV:5)】【魔法無効(LV:10)】

経験値:500,000,000 お金:500円

―――――――――――――――――――――




 攻撃、ほとんど効かない魔物なんだけど……。

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