第5話:初めての冒険者来訪
今日もまた、残りDPが1まで減ってしまった。
そもそもダンジョン内で不足している物が多すぎるのが悪いのだけど。
それでも、こうやって強化することで更に視聴者が増えてくれたら、その分だけDPも貰える。
段々とダンジョンは強化できるだろう。
……まだ、来てくれた冒険者は0だけど。
ダンジョンステータスを開いて、眺めていると涙が流れそうになる。
――――――――――――――――――――
№1524【カナタダンジョン】
マスター:
ランク :F LV :1 階層数 :1 クリア特典:なし
所持DP:1
【モンスター】
スライム:LV1(5/5)
スラ妖精:LV20(1/1)
【ダンジョン侵入者数】
今日:0 昨日:0
【配信視聴者数】
今日:13,654 昨日:25,415
【スパチャ金額】
今日:0 昨日:25,000
【インセンティブ(DP)】
今日:6 昨日:124
――――――――――――――――――――
順調に配信側の収入は増えていってる。
マスタースキルの設定で、自動的にDPへ変換できるようだったので、それを適用したら、今いくら入ってるのか見えやすくなった。
残り1になるまで使い切ったとしても、もう明日には新しくDPが入ってくることが決まっている。
収入が決まってるなら多少無茶して使うこともできるのだ。
あとは更に収益を増やしていくだけ。
ただ、やはり作り上げたダンジョンを冒険者の人に挑んでもらいたい……という気持ちはある。
まだまだ、強化途中だけど。
「次はボス魔物を配置したいな。そのためには――」
今は収益を増やすこと以上のことはできない。
とにかく配信を頑張ろう!
視聴者も増えてきたから、そろそろ冒険者の人が来てくれてもおかしくないから……。
◇◇◇
今日の配信はひたすらスラ妖精を追いかけているだけだった。
一瞬しか姿が見えなくて、しかもダンジョン内を徘徊してるからひたすら杖を振り続けないといけない。
だから、僕としては過去一に疲れる配信でもあった。
「はぁ……、はぁ……。つ、疲れた……。全然倒せなかった……」
必死に追いかけていたのだが、杖は全く当たらなかった。
それどころか、まともに姿が見るすらできなかった。
これを普通に攻撃できる冒険者の人が凄い。
ただ、やはりスラ妖精の反響は大きいようだ。
コメントやスパチャの量がいつもよりも多い。
これなら、すぐにでも冒険者の人が来てくれそう。
つまり、明日はいよいよ初めての冒険者を相手にするわけだ。
早めに起きて、ダンジョンの改造をしておこう。
「あっ、スパチャの分は先にDPが追加されるんだ……。今日も100以上溜まってるし、ボス魔物だけ召喚しておこうかな――」
スラ妖精と一緒に迷っていたオーク。
これも召喚しておくことにした。
ただ、まだボス部屋の作成ができていない。
「……今日はもう疲れたし、ダンジョンを広げるのは明日にしよう……。ボス部屋も作らないといけないし、オークには入り口の大広間で待機してもらおう」
とりあえず、今のところオークは入り口に。通路にはスライムとスラ妖精を配置しておいた。
通路も既に27DPつぎ込んでいるだけあって、それなりの長さにはなっている。
でも、まだまだEランク昇格の規定には満たないので、こちらも合わせて広げていかないとけない。
あとはオークを配置する一階層のボス部屋。
DP30もあれば、それなりの広さを確保できるだろう。
前までだと考えられないほどの量だよね……。
でも、今日の視聴者数とスパチャ量ならオークを召喚した上でボス部屋すら作ることもできる。
この調子でどんどん成長させていったら、最高ランクであるSランクダンジョンすら夢じゃないよね?
満足しながら僕は眠りについていた。
しかし、動きの速い冒険者は、僕が思っている以上に素早い動きを見せていたのだった。
◆◆◆
奏のダンジョンのすぐ近く。
二人組の冒険者がニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら、カナタダンジョンへ向かっていた。
「くくくっ、この辺りに噂のダンジョンがあるんだな?」
「あぁ、Fランクの雑魚ダンジョンのくせに、スラ妖精がいるなんて、生意気すぎるな」
「そんなことを言うな。そのおかげで俺たちは楽して経験値を上げられるんだろう?」
「そうだな。くくくっ、乱獲してやればいいんだよな」
「レベルさえ上がれば、俺たちもDランク冒険者になれるわけだからな」
少し野蛮な姿をした冒険者たち。
Eランク冒険者である彼らの目的はやはりスラ妖精であった。
ダンジョンマスターがランクを上げるのに条件があるように、冒険者にも条件があった。
その最たるものが『パーティのレベルが平均30以上である』というものがあった。
これはDランクモンスターのレベルが20前後であり、それを余裕を持って倒せるレベル……ということで設定されている。
このレベル上げが中々大変で、通常のEランクダンジョンだと、1レベル上がれば良い方。
それがこのスラ妖精を倒せば、それだけで30までは2レベル以上も上がる。
だからこそ、スラ妖精がいるダンジョンは、冒険者間で争奪が起こるほどだった。
そして、この冒険者たちはカナタダンジョンを占有し、他の冒険者が魔物を狩らないようにしよう、とかよからぬことを考えていた。
ただ、この冒険者たちは知らなかった。
カナタダンジョンが普通のダンジョンであるはずがないことを。
Fランクダンジョンで、魔物がろくに揃ってもいないのに、冒険者を誘ってるが如く
真っ先に罠を疑うべきだった。
いや、他の人は罠だと勘づいていたのだが、単純なこの冒険者たちはそこまで思考が及ばなかった。
その結果――。
「ど、どうして、FランクダンジョンにCランクのオークがいるんだ!? こ、こんなの罠じゃないか!? ぎゃぁぁぁぁ……」
この冒険者たちはあっさりオークに倒され、全ての装備品を失った上で、近くの街で復活させられていたのだった。
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