第2話:収益化
:おい、昨日の動画を見たか?
:どれのことだ?
:ダンジョンの奴か?
:あぁ、見たぞ。ダンジョンマスターが配信してる奴だろう?
:ダンジョンマスターが配信って珍しいよな。
:あんなにかわいい子がダンジョンマスターのはずがない!
:男……なんだよな?
:冒険者組合に確認したら、確かにダンジョンマスターで、しかも男らしい
:肩より長い銀髪と童顔……。見た目は少女にしかみえないな
:思わずお気に入りに入れてしまった……
奏が心地よく眠りについている中、動画のコメント欄やSNSでは、奏の配信について持ちっきりだった。
そもそも、ダンジョンマスターが配信した、ということで、冒険者たちからは注目されていた。
告知なしのライブ配信だったので、生放送を見れた人はほとんどいなかった。
しかし、配信を知った人が徐々に見ていき、いつしかその動画は話題の中心になっていた。
◇◇◇
「ふわぁぁぁ……、よく寝た……」
配信をした翌日。
僕は配信の疲れが出たのか、気がつくと昼前まで眠ってしまった。
でも、ダンジョン内で問題が発生したら、マスターに報告がくる。
それがなかったということは、問題は起きなかったようだ。
「えっと、朝ご飯……、の前に一応冒険者が来たか確認しないと……」
モニターをいくつか表示させるとダンジョン内の様子と、ステータスを確認する。
ダンジョン内はスライムが眠っているくらいで、何も変化はない。
――――――――――――――――――――
№1524【カナタダンジョン】
マスター:
ランク :F LV :1 階層数 :1 クリア特典:なし
所持DP:9
【モンスター】
スライム:LV1(1/1)
【ダンジョン侵入者数】
今日:0 昨日:0
【配信視聴者数】
今日:25,412 昨日:0
【インセンティブ(DP)】
今日:0 昨日:0
――――――――――――――――――――
「やっぱりダンジョンに来た人は0なんだ。いつもと変わらない人数……あれっ?」
配信を開始したからか、ダンジョンステータスの項目に【配信視聴者数】が追加されていた。
……そこまではよかったのだが、問題はその人数にあった。
見間違いかな?
目を擦り、もう一度ダンジョンステータスを見る。
やはりそこには二万人を超える視聴者数が書かれていた。
「あれっ? モニターが壊れた?」
今も止まることなく増え続けてるその数字を見て、まず故障を疑ってしまう。
このモニターはあくまでもスキルで出した物なので、壊れることはないのだが……。
「えっと、モニターを直すには斜め四五度からこう……!」
スカッ!
モニターは実態があるわけではないので、当然ながら振り上げた手は空を切っていた。
「あ、あれっ? そ、そうか……。えっと、それなら直接おかしい部分を操作して――」
視聴者の部分を触ると、昨日配信した動画が表示される。
もちろん、そこに書かれていた視聴者数は先ほどに近い数字だった。
「な、何が起きてるんだろう? あっ、収益化の条件も満たしてる……」
早速申請しておく。
これで、DP収入の目処がついた。
どのくらい入ってくるのかは未知数だけど。
とにかく下りて、すぐに配信できるように準備を始める。
残りDPは9。
それで何ができるかを考える。
「まずは朝食かな。えっと、パンでDP1だから……、残り8か」
手元に現れた普通のパンを頬張りながら、ダンジョンの強化メニューを開いていた。
●魔物
●内装
●罠・宝
メニューに表示されている項目はこの三つ。
今回はダンジョンらしさ、を優先して【内装】の項目を開いてみる。
「基本的に通路の設定だね。えっと、1メートルの通路を作るのに1DP。……高くない?」
今のカナタダンジョンはただの大空間しかなかった。
それをダンジョンらしくするには、道を作っていくしかないがDPの消費が意外と激しそうだった。
「うーん、仕方ない。今回は配信映えするようにライブで通る部分だけ作ろうかな?」
とりあえず1メートルだけ購入してみる。
すると、目の前に現在のダンジョン地図が3Dで表示される。
ここに指で線を加えれば、それだけで通路ができるらしい。
でも、1メートル分……。
一瞬で終わってしまう。
「……さすがに、これだけじゃ少ないよな?」
せめて奥が見えない程度には広げておきたい。
そう考えるとDPの大半を通路につぎ込んでしまっていた。
「ふう……、とりあえず、これでよしとするかな?」
通路に使ったDPは7。
ダンジョン入り口にある大空間から続くこと5メートル。
二本の分岐路ができあがっている。
作り上げたのはそこまで。
現状だとどちらも行き止まりなので、ある意味罠だろう。
そして、魔物はスライムだけ……。
これで本当に配信映えするのだろうか?
たまたま前回が跳ねただけで、次は全く見て貰えないんじゃないだろうか?
そんな恐怖も襲ってくる。
「大丈夫……。見てもらえるはず……」
ブルブルと震えながら恐怖と戦っていると、突然モニターから電子音が鳴る。
ピコーン!
「何の音? ……あっ」
どうやらメールが届いたようだった。
その内容は『収益化が下りました』だった。
「えっ、早くない? あっ、ダンジョンマスターはすぐに許可が出るんだ……」
これで、DPを稼ぎ出す方法が整った。
あとは頑張るだけ……。
二度目の配信、ということもあり、少しは緊張が解れるかと思ったけど、そんなことはなかった。
少し震えながら、僕は配信の準備を始めていった。
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