第629話 連射できる魔銃を作る

お知らせ

 前話、第628話が公開されていませんでした。

なので本日2話投稿になっています。

前話があります。お読み逃しの無いようにお気を付けください。

この話が第627話と直で繋がるから違和感なく読める罠が……。

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 錬金術が優れているのは、金属加工に炉が要らないところだろう。

俺も身一つで広間のテーブルが工房の工作台となった。


「魔銃は……」


 アイテムボックスを探って魔銃を取り出した。

チンピラ避けのメインウエポンにしようかと思ったが、知名度が低くショートソードに取って代わられた不幸な武器だ。

それ以来ほとんど使用されることもなくアイテムボックスの肥やしになっていた。


「改造すれば使えるようになったかもしれないのに、すっかり忘れていたな」


 魔銃は武器屋の範疇だったのか、錬金術大全には載っていなかった。

なので、実物の魔銃を分解調査するところから始める事にした。


「トリガーをきっかけに魔石からエネルギーを抽出する回路か」


 これは教国の銃でも使われていた着火の魔道具と同じ原理だ。

スイッチを押すと魔石から魔力を抽出する。

その使用魔力量と、それを何の魔法に変換するかという違いか。

このまま小さな熱を発するのが着火の魔道具で、攻撃魔法が発動するのが魔銃という魔導具だった。

ちなみに、この世界には魔道具と魔導具という区別がある。

生活で使う単純なものが魔・道具で、ある程度高度なものが魔導・具と呼ばれている。


「案外簡単な仕組みだったな」


 だが魔銃は、原理的には着火の魔道具の着火魔法を攻撃魔法に換えたようなものだった。

おそらく攻撃魔法の魔法陣が高度だという認識なのだろう。


「魔力を一時的に溜めて、それを攻撃魔法の魔法陣に注入するのか。

一時的に溜めるのは、必要魔力が足り無かった場合の安全装置か?」


 発射した魔法が失敗したり、途中でキャンセルされるよりも、最初から魔力不足と判って撃てない方が良いということかな。


「つまり、魔銃の威力は、魔力タンク容量に依存するわけだ」


 それを人が補えば、それ以上の威力が出せる?

人の魔力を使って撃つのは、危険な匂いがするな。

魔力枯渇でぶっ倒れたり、命に関わるかもね。


「あれ? これって何処かで?」


 それは魔導砲だった。

魔力タンクが無く、直で魔石から魔力を抜いて使っていたのが魔導砲だった。


「なるほどね。

ならば魔導砲の技術が使えるか」


 そこには攻撃魔法の魔法陣とかの流用が可能なものがあった。


「となると改造点は連射性能と使用魔法の種類の増加かな?」


 この魔銃は火魔法固定らしい。

ファイアの魔法が使える使い捨ての杖と一緒というわけだ。


「使用魔法は魔法陣の切替でいけるはず」


 ダイヤルかレバーで切り替えれば良いだろう。


「連射性能は、魔力タンクの複数化か?」


 魔石の容量が大きければ、複数の魔力タンクに魔力を溜められる。

それを発射と同時に切り替えて行けば連射になるだろう。


「こんなの誰もが思いついたはずなのに、なんで作られなかったんだろうな?」


 ああ、そうか。

連射するような魔力容量がある魔石は値段が高いからか。

個人の携帯兵器レベルでは手が出せないから、最初から連射させようなんて誰も思わなかったということか。


「連射ありきの俺だから思いついたことなんだな」


 そんな大きな魔石を値段を無視して使うのが有り得なかったわけだ。



 そして、連射できる魔銃の設計が完成した。


「やはりライフルになるな」


 大きな魔石をセットする、魔力タンクを複数搭載する、そうなると必然的にデカくなったのだ。

あとは錬金術で作ってしまうだけ。

魔銃の材料も魔石もアイテムボックスの中にあった。


「魔法は火水風土雷氷光があれば良いな」


 錬金術スキルで金属加工し、木工スキルで木材まで造形出来てしまう。

魔法陣や魔法回路も陣魔法で魔力伝導率の低い金属板にミスリルで刻印する。

ミスリルだけ魔力伝導率が高いので、それが回路となるのだ。


「魔法陣の切替は機械式にすると接触不良とかの不具合が出そうだ。

ここは音声認識にするか」


 魔法回路で切り替えれば良いことに作っている最中に気付いた。

ダイヤルやレバーなんてのは、地球での考え方だったよ。

そんなの魔法でやれば良いだけだった。


「魔力タンクは、魔石から錬成したものだったのか」


 錬金術大全に魔力タンクの製法が載っていた。

どうやら魔石は魔力を放出するだけで注入が出来ないようだ。

それを実現出来るように錬成したものが魔力タンクに使用されていた。

魔石が乾電池だとすると、魔力タンクは充電式電池か。


「あれ? これって魔力充填できる魔石になるんじゃ?」


 そう思いついたが、現実は甘くなかった。

誰かがそう思わなかったわけではないのだろうが、その魔力は何処から持って来るのかという問題があった。

魔石からならば本末転倒だ。魔石を使えば良い。

人が充填する?

それは魔力量的に一般人には不可能だった。


「ああ、これって俺みたいな魔力の余ってる奴しか使えないわ」


 つまり、俺が充填して皆に渡せば良いわけだ。

いや、やらないよ?

だって魔石は売るほどあって余ってるからね。


「よし完成だ」


 ついに連射式魔銃が完成した。

あとは実射テストだな。

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