第595話 教国の聖女になるまで1

 TSポーションで女性となった私は、今までの不遇が嘘のように隠れた能力が開花した。

【$@+~錬成】がアクティベートしたおかげで、錬金術がまともに使えるようになったのだ。

元々【鍛冶神の加護】を持っていた私は、鍛冶能力により金属アイテムの作成が可能だった。

これは冶金による金属加工だけではなく、魔法による補助を伴っていた。

ただし、鍛冶で作れたのは、金属材料が存在するものだけだった。

材料の存在するものに錬金術を使うことは、鍛冶魔法を使うのと同じだった。

錬金術とは、無から有を錬成してこそ真価を発揮するのだ。

ここに鍛冶(鍛冶魔法)と錬金術の差があった。

材料を冶金や魔法で加工するのが鍛冶で、無から有を生み出すのが錬金術の錬成だった。

この錬成が欠けた状態では、まともな錬金術が使えなかったというわけだ。


「今までの苦労は何だったのよ!」


 これも【聖女】のジョブを手に入れたおかげだろうか?

まあ、それは後で【聖女】の能力と共に検証しよう。


「問題は、このままダンジョンの外に出るわけにはいかないってことね。

このアーケランド騎士の鎧は目立って困るわ」


 見る人が見れば勇者の鎧だと判ってしまう。

鎧を捨てることも考えたけど、さすがにダンジョンの中で防御力を捨てるわけにはいかない。

そこで使ったのが鍛冶魔法だった。

鎧を鍛冶魔法で別物に加工してしまえば良い。

鍛冶魔法の利点は炉と道具が要らないことだ。

その場で金属を加工できる。

欠点はMPを消費するということ。

ダンジョンの中だけど、攻撃魔法はあまり使えないし、今は剣の腕もある。

MPを消費しても問題ない。


 鎧の見た目を女性向けにし、アーケランド特有のデザインを無くす。

ハーフメイルにして全体の重量も抑えておく。(余計な金属を捨てるって事)


「問題は鎧下が男のものってことね」


 布加工は鍛冶では想定外。

ただし錬金術にかかれば、鎧下を材料としつつ、足りない物を錬成で補って作ることが出来る。


「錬金術が使えるって素敵だわ♡」


 錬成もMPを消費するが、素材があるだけマシかな。

錬成を開始すると、鎧下と男性用下着が散り散りになり消えた。


「こ、これは魔法少女の変身シーンと同じ!」


 乙女のあこがれ、魔法少女になった気分だった。


「でも、18禁の方だった!」


 私は全裸になってしまうあの変身シーンになってしまっていた。

光も湯気もない。


 そして大きく違うことがもう1つ。


コロン


「ん?」


 鎧下や下着が消えた後、私の足元にカプセルが転がった。


「勝手に着れるんじゃないんかい!」


 お約束の変身シーンは中途半端に終わった。

私は全裸で佇み、足元のカプセルを見つめていた。

客観視すると滅茶苦茶は恥ずかしい。

周囲に誰も居なくて良かったよ。


「MPを持って行かれたから錬成は成功したはず。

となると、このカプセルの中身が錬成物なの?」


 カプセルを開けると、そのままカプセルが消え、そこには白い聖衣があった。

胸のところに、この世界の十字架にあたるアンクがデザインされている。

だが、それだけだった。


「下着!」


 たぶん材料不足だったのだろう。

私はMPをごっそり使って下着を錬成した。

無から有を生み出すとMP消費が激しい。

カプセルからは日本のブラとショーツが出て来た。

憧れの女性下着だ。

通販カタログで見た、田舎では手に入れられなかったカワイイやつだ。

これを通販しようとしたけど、田舎では家族に荷物を平気で開けられてしまうし、噂が広がるのも速い。

男が女性下着を買ったという噂は音速で広がるだろう。

そう思って泣く泣く断念した代物だった。

それが異世界で手に入るなんて!


 私は泣きながら下着と聖衣、鎧を装備した。

感動の女性下着。胸もDカップぐらいあるし、なぜかサイズがぴったりだ。

これにより私は女性聖騎士に見れなくもない状態になった。


「これで良し。

さっさとダンジョンを出て教会に駆け込もう」


◇  ◇  ◇


 ダンジョンの入口にいる管理人をスルーして外に出た。

騎士たちが居てもあれだけ難儀したダンジョンも、生まれ変わった今の私ならば楽勝だった。


 私は旅に出ることにした。

さすがにアーケランドの教会に駆け込むわけにはいかないからだ。

路銀は亡くなった騎士たちから奪った。

目的地はアーケランドの東、フラメシア教国。

この格好ならば、アーケランド国内では教国の所属だと思われるだろう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


あとがき


 長らく更新を中断してしまい、申し訳ありませんでした。

しばらくブービーの話が続きます。主人公の話をご期待の方、すみません。

賛否両論あると思いますが、ここは作者の好きにさせてください。

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