第461話 リボーン
キラトが腕を斬り落として無力化したはずの
つまり、ゲームのように死んでも生き返るスキルを誰かが持っているということだろう。
いや、そもそもあのエフェクトは何だ?
腕を切られた時は血を流していたし、
なのに、死んだあとはCGのポリゴンか?
そこに何か秘密があるのかもしれない。
◇
俺たちが撤退したことは、アレックス側には想定外だったのだろう。
無理な追撃も受けずに正統アーケランド軍の撤退は完了した。
「あ!」
俺はその光景に慌てた。
もし、リボーンが誰かのギフトスキルだった場合、そのスキル保持者が同時に死んでしまったら、全員の復活が無いかもしれないのだ。
彼らに罪はないので助けたいというのに、これでは殺してしまいかねない。
黒こげとなった5人がポリゴンの欠片となって消える。
「全員がポリゴン?」
その光景は、まるでそこに居た全員が
まさか、術者や彼らの本体はここに居ない?
そう疑念を持ちながら、俺は要塞都市を見つめる。
『ちくしょう! またか!!!』
どうやら
ギフトスキルには、世界の
俺のたまご召喚、腐ーちゃんの二次元化、そんなチート能力が彼ら側にあっても不思議ではない。
それが不死の能力だとすると、そんな能力が使い放題は洒落にならないぞ。
『今の俺たちにはドラゴン相手は無理だった』
『恐竜ならば殺れた……』
『あの黒いゴブリンなんなんだよ!』
『おまえら、リボーンに頼り過ぎだぞ!
MPは無限じゃねーんだぞ!』
他の4人の声も聞こえてくる。
まあ、聴覚を共有しているキラトの能力が高いからなんだけどね。
どうやら上から
全員が要塞都市にリボーンしたのだろう。
「この言動、リボーンの要は
そしてこのスキルはMPを使用している。
俺が聞いてないと思っての発言だろうが、術者の特定は対応策の策定に大いに役立つぞ。
そしてMPを使用しているならば、MP切れにすればこのスキルは封じることが出来るはずだ。
それに、本体が要塞都市に居て、コピーが戦場に出ていたわけでもないようなのは発見だ。
ポリゴンのエフェクトは、ゲームにどっぷり浸かった日本人のイメージの賜物か?
ならば……。
「あー、嫌な対応策を思いついた」
スキルの持ち主と思われる
死んでる間はスキルが発動しないかもしれない。
だめだ。この検証をするには、誰かを殺すことを容認しなければならない。
この説が正しければ、誰かが死ぬことで立証されるからな。
◇
レッドドラゴンに退けられた
だが、その無事は要塞都市から漏れ聞こえた声で確認できた。
彼らも救出したかったが、ここはサッカー部部屋の5人を救出出来たことで良しとしよう。
そのサッカー部部屋の5人――
「腐ーちゃん、やりすぎ」
「男子運動部は……敵」
なんか腐ーちゃんの目が座っている。
それに不穏な発言が!
過去に男子運動部と何かあったのか?
「まあ、治せるならば良いだろ。
おかげで迅速に回収が済んだわけだしな」
足首を溶かしたその場にいたリュウヤが引きつりながらも仲裁に入る。
確かに治せるからこその行為だけどさ……。
彼らにトラウマが残らないかな?
「エクストラポーションも、シャインシルクのおかげで何本もあるから良いけどね」
エクストラポーションは高額アイテムだけど、彼らを救出出来たならば、安いもんだ。
「それじゃあ、とりあえず【洗脳解除】×4」
俺は翼、翔太、マイケル、嵐太と順番に触れながら洗脳を解除していった。
実際は洗脳の上書きなんだけどね。
支配的な要素を抜いた、当たり障りのない洗脳をかけて、古い洗脳を消しているのだ。
これで、何か時限爆弾的な洗脳がされていたとしても、回避できたはずだ。
敵に捕まったらなどの条件で、突然隠された暗示が発動するなんて嫌だからね。
だから、怪我を治す前に洗脳の解除を先にやったのだ。
動けなければ対処は容易になるからね。
え? 出血多量になったらどうするかって?
それは戦場で彼らを担いだ時に、既に
痛いしね。まあ幻痛があったかもしれないけどさ……。
「これでよし。はい、エクストラポーション」
俺は彼らにエクストラポーションを配り、飲むように促した。
ここで毒を盛られるなんて考える者は1人もいない。
素直にエクストラポーションを飲む。
すると見る見るうちに足が生え、欠損部分を完全修復した。
「マジ、トラウマもんだよ!」
「躊躇なく足首溶かされたからな」
「でも、以前よりも調子が良いような?」
「本当だ。タックルで削られた古傷も無い」
うん、元通り以上ならば良かったんじゃないかな?
「欠損部位を治したんだから、体力付けないとね」
俺はお詫びも込めて皆に天丼を出してあげた。
エビは沼で取れた淡水エビだけど、大きさと味は車エビに負けていない。
そして白身魚の天ぷらは巨大ノドグロの切り身だ。
加えてマイタケと野菜のかき揚げも乗っている。
思う存分食うが良い。
「(天丼はこっちで)まだ食べたことないっす!」
「「「「おおーー」」」」
彼らは涙を流しながら天丼を食べていた。
血肉の元が必要な4人にはカツ丼も出してあげよう。
「こっちに来て良かったな」
「ああ、飯が美味くて涙が出る」
そんな会話がなされる。
そこで俺はあのことを訊いていないことを思い出した。
「皆さん、アレックスから特別食を食べさせられていたでしょ?」
俺の問いに、翼が代表して答える。
「あの危ないという警告からは食べてないけど、以前から結構食べさせられてしまっているよ」
「5人全員だよね?」
「そうだ」
さて困ったぞ。
どれぐらい進行しているのか判らない。
何かが切っ掛けで魔族化してしまわないうちに、癒しを受けてもらわないとまずいかも。
「特別食には魔族化を促進する毒――魔物肉の毒が含まれている。
食べると魔族化する危険があることは以前に伝えた通りなんだ。
それを癒す方法があるんだけど……」
「是非教えてくれ!」
「えーと、娼婦に癒してもらって来てね」
「は?」
「エッチして来てってこと」
「「「「なんだってー」」」」
5万もの軍勢が居ると、その福利厚生で娼婦がついて来ている。
その娼婦にお世話してもらうのだ。
日本では考えられない話だが、それが異世界常識というものだ。
「順番待ちが凄いんだけど、優先でお願いしとくから」
特別食の話を聞いてから、このような事態を想定して根回しをしておいた。
お願いすれば、直ぐに枠を確保してくれるはずだ。
その夜、年頃の男の子たちは、興味津々でお姉さんの所に行ったとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます