第428話 魔族勇者戦6
術者である魔族勇者7を滅した後も、
死体から製造されたモンスターとして、術者が居なくなっても存在が固定されたままだったのだ。
俺の使った聖魔法が、俺の前方に扇型に展開したために、俺より後ろの
ただし、その統率は失われ、生者に対する攻撃本能だけで動いているようだった。
その生者とは、俺たちだけではなく、魔族勇者2と3、そして魔族勇者3が召喚した自爆コボルトを含んでいた。
各所で
そのため、俺の後ろの温泉拠点の敷地内にも湧いて出ていた。
俺たちが拠点にする前に、この土地で何があったかは知らなかったからな。
薔薇咲メグ先生が拠点とし、しばらく放置していたとはいえ、人の営みがあり朽ちているからには、何かが埋まっていても不思議ではない。
それこそ、ここまで侵入して俺たちに倒されたアーケランド軍や侯爵軍の兵とかもいたのだ。
材料には事欠かなかったようだ。
だが、
おそらく麗の聖女の力を本能的に警戒しているのだろう。
このまま放置しておいてもしばらくは害はないだろう。
魔族勇者を退けた後で対処することにしよう。
【ターンアンデッド】は、不二子さんのような悪魔系魔族にも影響しそうだしね。
それより、俺の右腕にも影響したっぽいし、多発はやめておこう。
◇
青Tチームと合流するべく以前に反応があった方向に飛ぶ。
だが、そこには意外な光景が待っていた。
「なんで3対2になっているんだ!?」
2人の方が、青Tと
オスカルの眷属の
俺が増援に送ったオケラとヘラクレスオオカブトの姿は見えない。
そして、3人の方は、魔族勇者2と、もう2人の魔族勇者だった。
数が合っていなかった。
最初に【探知】した魔族勇者の数が誤りでなければ、10人いて8人倒したから残りは2人のはずだ。
魔族勇者3があっちにいるから、こっちには魔族勇者2だけのはずだ。
なぜ2人多い?
隠蔽魔法でも使用した伏兵なのか?
だが、その2人の正体に俺は気付くことが出来た。
その2人は上半身に勇者鎧を装備してなく、その姿に心当たりがあったからだ。
「こいつら、魔族勇者1と10の
そう、この2人の魔族勇者は、ラキのブレスで上半身を吹き飛ばされた魔族勇者10と魔族勇者1だったのだ。
それが
「欠損部分を補って蘇るってありかよ!」
上半身の無い死体ならば、そのまま下半身だけで動き回るのかと思っていた。
だが、そうではなく、欠損した上半身をなんらかの力で補って蘇ったようだ。
そこに人工物の鎧は復活しないため、上半身裸だったのだ。
「
魔族勇者1と魔族勇者10は屋敷前の防御陣地で倒された。
そこは聖女である麗の守備範囲だ。
聖魔法で攻撃されれば一溜りも無いだろう。
それでこちらに逃げて来たのだと思われる。
「そのせいで青Tチームの均衡が崩れてしまったのか!」
おそらく、それによりオケラとヘラクレスオオカブトは倒されてしまったのだろう。
ステータスを調べると眷属の繋がりが切れていたのだ。
「くっ、ヘラクレス、オケラ!」
また眷属に被害を出してしまった。
青Tチームならば抑えられると後回しにしてしまった俺のミスだ。
まさか魔族勇者が3人になっているなど想定外だった。
だが、
ここで2人の魔族勇者を滅すれば、1対3に持ち込める。
「くらえ! 【ターン「そうはさせるか!」なに!」
魔族勇者2の背中から触手が伸び、魔族勇者1と魔族勇者10に絡みつく。
そして、魔族勇者1と魔族勇者10を取り込んでしまった。
その触手、
「これで聖魔法は効かん」
そして、魔族勇者2の右腕にはヘラクレスオオカブトの角が生えていた。
どうやら、ヘラクレスオオカブトも取り込まれてしまったようだ。
その同化能力こそが魔族勇者2のギフトスキルなのだろう。
「やっかいなことになった」
もし他の魔族勇者が
だが、
魔族勇者4は、モドキンの毒で崩壊した。
そのおかげか
ならば魔族勇者2の強化もこれまでか。
いや、青Tたちが取り込まれたらまずい。
「青T、アンドレ、退け! 取り込まれるぞ」
俺の指示で青Tとアンドレが退く。
「ふはは、こうなったら聖女だけでも殺してやる!」
だが、それは魔族勇者2をフリーにしてしまうことだった。
魔族勇者2が背中から昆虫の羽を生やして空に舞う。
それはヘラクレスオオカブトから奪った飛行能力だ。
魔族勇者2は、そのまま屋敷へと向かってしまった。
「くそ、させるか!」
俺も飛竜纏で飛ぶ。
だが俺は、その同化能力の対処方法は全く思い浮かんではいなかった。
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