第351話 ミニスカ救出作戦4

お知らせ

 第350話で眷属卵としてしまったのは魔物卵の誤りです。

眷属卵はたまご召喚の召喚種類として意味を持ったものなのにも関わらず、魔物卵的な感覚で使ってしまっていました。

すみません。

訂正抜けも有り先程追加修正いたしました。

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 西門でジャイアントセンチピードが、南門でジャイアントポイズンフロッグが暴れ出したため、帝都の衛兵や騎士団は大慌てとなった。

俺たち4人は何食わぬ顔で北門に向かう。

王都の中では魔物対策の喧噪で慌ただしくなっていた。


「そうだ、西門と南門に魔物だ!」


「こちらに来るとまずい。門を閉めるぞ。

市民を中へ入れろ!」


 北門も魔物対策で閉鎖が決まったようだ。


「入れますか?」


 俺は門番にあえて声をかける。

素通りして止められても困ると思ったからだ。


「冒険者か」


「はい」


 そう言うと俺は門番にちらりと冒険者ギルドカードを見せる。


「すぐに冒険者ギルドへ向かえ。

特別依頼の非常招集があるはずだ」


「わかりました。おい、行くぞ」


 俺は他の3人の冒険者ギルドカードを見せずに北門を突破し、王都の中に入ることに成功した。


「上手くいったでござるな」


「ああ、しかし、まだ王城に入るには難関がある」


 俺たちは冒険者ギルドに向かう冒険者の後を着いて行くようなふりをして、隙を見て路地裏へと入った。


「眷属召喚不二子さん、コンコン!」


 遠隔召喚で送り込むのにはクールタイム2時間が必要だったが、直接俺の傍に召喚するのであれば何度でも連続で召喚できる。

これを利用して、付属物である抱き着いている者たちを転移させるのだ。


 俺たちの目の前に不二子さんに抱き着いたさちぽよとクロエ、コンコンと手を繋いだリュウヤとパツキンが現れた。

どうやら召喚魔法陣の中ならば抱き着かなくても良いようだ。


「よし、王城を目指そうか」


 リュウヤが先頭になって王城までの案内を始めた。

王城は北門から東に向かった方角にあった。

それは王都が王城を中心にして開発されたものの、主に南西に発展し広がって行ったからだ。

そのため王城は堅牢な城壁の北側東寄りに位置している。


 王城からの人の流れは西門と南門へと向かっていた。

俺たちは裏通りを抜けて王城へと向かう。

そして、騎士団が出撃する出撃門へと到達、物陰から様子を伺っていた。


「騎士団が出て行ったばかりのようだな」


 出撃門は王城の正門ではなく、騎士団の宿舎や練兵場近くに設置されている。

正門から騎士団が出撃することは式典以外ではあまりないのだ。


「今ならば見張りもいない。

俺たちの王国アーケランド式のフルプレートならば、誤魔化しが効くかもしれない」


 赤Tや青T、ましてやロンゲの金のような特別な色でなくて良かったよ。


「バレたら制圧。それで行こう」


 リュウヤがニヤリと笑う。

制圧でもかまわないと思っているのだろう。


「俺たちは?」


「協力者だと思うだろう。

相手が勝手に想像するさ」


 そう言うリュウヤにそそのかされて、俺たちは堂々と出撃門に向かう。

出撃門には門番は居らず、備品をチェックする文官のような者しかいなかった。

その横をリュウヤが冑を被ったまま通る。


「あ、騎士様?」


 文官がリュウヤに声をかけるが、リュウヤは堂々と無視をして先に進む。

その後を俺たち冒険者風の4人、そして囲むようにフルプレートの騎士3人が続く。

その様子に文官はそれ以上何も言う事が出来ずに素通りさせた。


「ほらな」


 リュウヤがウインクして作戦成功をアピールしてくる。

どう見ても行き当たりばったりだ。

上手く行ったのが奇跡のようだ。


「さて、俺たちの居住地はこの先だ。

皆、顔を合わせないように隔離されていたから、残念ながらどの部屋が誰の部屋かはわからない」


「駄目だな。【探知】も出来ない。

おそらく魔導具による妨害だろう。

1部屋ずつ探すしかないな」


「全員で手分けをして見て回ろうか」


「ロンゲは医務室じゃないの?」


「それじゃそっちはリュウヤ、行ってくれるか」


「任せろ」


「コンコン、一緒に行け。

ロンゲが動けないようならば治療を試みろ」


「おっけー」


 最悪ロンゲはリュウヤに担いでもらうことになるだろう。

え? コンコンがいつ王城へ入ったかって?

召喚したに決まっているじゃないか。


「こっちだ。早く!」


 パツキンが自分の彼女の事なので焦っている。


「ここが女子の宿舎で間違いないわ。

私の部屋はここだった」


「さちはこっちー」


 となると残りを調べれば良いのか。

ここに居てくれれば良いのだが。


「おい、ミニスカ、どこだ!」


 パツキンが部屋のドアを開けて覗きこんで行く。

どうやら鍵はかかっていないようだ。

いや、住人がもう居ないから鍵をかけていないのかもしれない。

それまでは個人同士の接触を避けるために、お迎えがいちいち鍵を開けていたという。

体の良い軟禁状態だったわけだ。


「おい」ガチャガチャ


 どうやら鍵がかかっているようだ。

パツキンは拳に魔力を込めるとドアの鍵――ノブ部分を殴り破壊した。


「ミーちゃん!」


 パツキンが中に飛び込む。

感動の再会かと思われたが……。

振り向いたパツキンの顔には落胆が浮かんでいた。

既にミニスカは移送された後だったのだ。

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