第334話 隣国国境砦訪問1
眷属の遠隔召喚を使って、俺は飛竜と共に赤Tのいる国境砦に向かうことにした。
今回は
尤も、再転位にクールタイムが必要であり、運搬のみに特化していて、戦闘能力は期待出来ない。
そしてもちろん、
だが、一度
クロエの転移を使えば、
洗脳が解けると、王城内などの主要な転移ポイントは思い出せないようにされていたのだ。
そのため洗脳が解けたクロエは、
温泉拠点は、クロエの転移のような奇策が無ければ、壁と堀の防御力にキラトと不二子さんが居れば守ることが容易なはずだ。
もちろん道の砦はオトコスキーだけで万全だろう。
俺が暫く離れても問題ないと判断した。
クールタイムさえ過ぎれば遠隔召喚で戻ることも可能だしね。
遠隔召喚は、俺が行ったことがあるか見たことのある場所を設定できる。
国境砦近辺で召喚ポイントとして使えるのは、ロンゲを倒した場所、あるいは
ロンゲを倒した場所は魔の森の中であり、そこから
しかも、
これは却下だろう。
小屋を建てた場所は、国境砦の内側の
あとはカブトンに抱えられて見た上空からの景色だけ。
特徴的な印象に残る建物も覚えがない。
あの時は国境砦を避けたため、国境砦を召喚ポイントにも出来ない。
そうなると、召喚ポイントは小屋を建てたあの場所一択だろう。
「じゃあ、行って来る」
「皆さま、直ぐに戻って参りますわね」
タンデムの鞍の前にクロエを乗せて飛竜で飛び立つ。
クロエはこの後自分の転移能力で温泉拠点まで戻って来て、援軍輸送のために待機することになる。
「赤Tに連絡入れておかないとな」
キバシさんを
しかし、その情報が国の隅々まで伝わるのには時間がかかる。
国境砦まで情報が来るのには5日かかると言われている。
それが兵の1人1人にまでに伝わるのにもう1日はかかる。
赤Tたちならば、急に来訪しても問題ないだろうが、そこは連絡しておくに越したことは無い。
俺はカメ子に念話を送って赤Tに伝えてもらうことにした。
カメ子は赤Tとパスが繋がっていて、俺の念話が赤Tに伝わる。
俺の眷属だが、赤T専属という感じで彼の肩に乗っているのだ。
問題はその伝わる内容が微妙ということだが……。
『カメ子、赤Tに伝えてくれ。
転校生が行くと』
俺が念話を飛ばすとカメ子が反応した。
その様子をカメ子との視覚共有と念話で覗く。
『テンコーセイ』『いく』
『なんだって!? 転校生が死んだ?』
赤Tが驚愕の声を上げる。
いや、「行く」であって「逝く」じゃないからね?
困った。そう伝わってしまうのか。
『生きてる』『ほーもん』
『転校生が来るってことか。
焦らせんなよ』
焦ったのはこっちだ。どうして死んだととった。
あれか、「が」が抜けたせいか。
いや、そもそも俺が死んでたら念話繋がらないし、カメ子も解放されちゃうだろうが!
『了解した。
おい、転校生が来る。
飛竜や虫が飛んで来ても慌てるなと兵に伝えろ!』
やっと赤Tに内容が伝わってホッとする。
赤Tは、部下への通達もしてくれたようだ。
「これで攻撃されるなんてことはないだろう」
「わかりますわ。
俺が安堵の息を吐くとクロエが同意してくれた。
クロエも同じ転移の悩みを実感していたようだ。
「通達が伝わる時間を少し待ってから遠隔召喚する」
「承知しましたわ」
この世界、情報伝達には時間がかかるのがお約束なのだ。
兵の全てとまでは言わないが、警備している兵や部隊長ぐらいまでは情報が伝わる頃合いで向かいたいところだ。
「そろそろ良いか。
遠隔召喚、飛竜、隣国野営地!」
俺がそう宣言すると、俺たちの真下に魔法陣が現れ、そのまま上へと上がって来る。
その魔法陣が俺たちごと飛竜を通過すると、眼下には大量の兵が野営する天幕が見えた。
「遠隔召喚成功だ」
そこは俺が小屋を建てた原っぱだったが、そこには国境砦に入り切れなかった兵たちが駐屯していたのだ。
「飛竜だ! 緊急事態の狼煙を上げろ!」
「砦に早馬を! 急げ!」
急に現れた飛竜に気付いた兵たちが慌てて臨戦態勢を取る。
尤も飛竜は弓が届かないぐらいの高度がある。
弓以外に空へと向けられる攻撃手段は乏しい。
魔術師が居れば魔法が飛んで来るかもしれないが、それはあまり考えなくても良いだろう。
せっちんぐらいの火力が無いと、飛竜の迎撃など無理なのだ。
「ああ、しまった。
赤Tも、まさか裏側に転移して来るとは思ってなかったか」
俺の嘆きにクロエも首を竦めるだけだった。
おそらく後方部隊への情報伝達がどこかで省かれたのだ。
せっかくの情報も生かされなければ意味がないということだった。
「飛竜、国境砦に向かえ、攻撃と思われないように穏便にな」
こうして俺とクロエは小さな騒動と共に
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