第300話 人語を話す魔物?

まえがき

 明けましておめでとうございます。

昨日中に300話をアップして旧年のご挨拶をと思っていたのですが、寝落ちしました。

そんなやらかしが多いつたない作品ですが、今年もよろしくお願いいたします。

――――――――――――――――――――――――――――――


『???の卵、人語を話せるかもしれないやつ 30万G』


 【たまごショップ】は、俺の都合がわかるのだろうか?

ラインナップに人語を話す魔物が出た。

これがチート、いやご都合主義というやつだろうか。

まあ、お約束の『かもしれないやつ』という欠点付きだが。

しかも今回は魔物の種類も秘匿された『???』だった。


クエスチョンマーク3つの卵、購入」


 多少の嫌な予感もしつつ俺は【たまごショップ】に課金した。

当たれば大きいが、半分はボッタクラれている気がしてならない。

【たまごショップ】のご都合主義が、なんらかの意志によるものであれば、俺が【たまご召喚】の恩恵で得た金銭を取り返そうとしているのかもしれない。


 アイテムボックス内のお金が減ったという感覚と共に、目の前に白い卵が現れる。

外観は鳥卵だろうか? トカゲ卵や竜卵もこんな感じだったか。

この卵が現れるところは、【たまご召喚】と変らない。

MPで召喚するのか金銭で召喚するのかと、孵化時間の違いだけだ。


 MPで召喚する【たまご召喚】は、レベルが上がってMPが増え、さらにMP自動回復を得た今、デメリットは一切無い。

当たりが出るまで召喚マラソンをすれば良いだけだ。

いや、眷属化しなかった魔物が拠点の外で脅威と成り得るのがデメリットか。

今やそれも拠点の守りとして利用しているので、事実上はデメリットがないように思える。


 一方、【たまごショップ】はハズレ率が高く、大金を失うというデメリットが発生する。

争いごとに巻き込まれなければ、シャインシルクにより一生安泰な所得を得られるようになった。

そんな生活の中で、唯一の高額浪費と言えるのが、この【たまごショップ】への課金だった。

ちなみに瞳美ちゃんの本への出費は貴重な情報を得るためであり、必要経費だと思っている。

薄い本は……貴重な娯楽であり、心の安定に寄与する。無駄ではない。たぶん。


 そんな【たまごショップ】だが、メリットも大きい。

魔物の種類やその能力をある程度知ったうえで選ぶことが出来る。

これは【たまご召喚】による召喚マラソンよりも、効率が良いように俺には思えた。


 さて、今回課金した卵が、メッセンジャーと成り得る魔物であれば、腐ーちゃんと共に隣国に行ってもらいたいところだ。

そのため、腐ーちゃんには卵が孵るまで出発を待ってもらうことになった。

急いで親書を渡すよりも、人語の話せる魔物の派遣の方がリモート会談が可能となり有益だとの判断だ。

こちらの意志を直接伝えることが出来るのならば、今後はいちいち親書を運ばなくてもよくなるのだ。

それだけの時間をかける価値はあるだろう。


 半日後、卵が孵った。

そいつは身体に比べて嘴が黄色く大きい黒い体色の鳥だった。

地球だと中南米にいるオオハシなんとかって鳥っぽいか。


「こいつは何だ?」


「コイツハナンダ」


 喋った。だが、これは?


「まさかのオウム返し?」


「マサカノオウムガエシ」


 だめだこいつ、ただの九官鳥レベルだ。

人語を話せるかもしれないは正しいが、知性を持って話しているわけではない!


「ハズレか!」


「ハズレカ」


「ちょっと待って、この子、ヒロキくんの念話の内容は話せるの?」


 結衣の指摘でそれを試してなかったことに気付かされた。

さすが嫁、ナイスフォローだ。

たしかに念話をオウム返ししてくれれば、相手には話の内容が伝わる。

だが、そのためにはこいつを眷属にしなければならない。

ハズレだった場合、眷属数が上限を越えなければずっと眷属のままだ。

いや、誰かに眷属譲渡する手があるか。

譲渡先は大迷惑だろうけどな。


「眷属化!」


『どうだ?』


「ドウダ」


『成功か!』


「セイコウカ」


「やったね!」


 ん? それに結衣の言葉はオウム返ししない?

これは相手の言葉もオウム返ししないということだから、きちんと会話が成立するぞ。

感情は抜け落ちていてイントネーションは違うが、これって案外使えるのではないだろうか?

ある意味考えることなく、俺の念話の内容が伝わるのだ。


「よし、ノックを教えればカメレオンの代わりになるぞ」


「ヨシノックヲオシエレバカメレオ」


「ん? 内容が途切れた?」


「ンナイヨウガトギレタ」


 今度は大丈夫か。

となると、さっきは文章が長すぎたのか?

まさか、文字数制限か!


『あいうえおかきくけこさしすせそたちつてと』


「アイウエオカキクケコサシスセソ」


 15文字だ。

こいつは一度に15文字しかオウム返しできない。

だが、それは運用でどうにかすれば良い。

いちいち15文字以下で言葉を切れば良いのだ。


 こうしてオオハシキバシという鳥の魔物がメッセンジャーとなることになった。

ちなにみノックを覚える頭は無かった。

つまり、オオハシ単体では今までのような向こう側からの通話要求が出来なくなるのだ。

これはカメレオンとの併用でなんとかするしかないか。


 ◇


 飛竜の鞍に跨った腐ーちゃんが空に飛び立つ。

飛竜は西洋的な所謂飛行タイプのファンタジー竜の外観だ。

2本の脚で立ち、腕と別に背中から翼が生えている。

その姿は飛行特化しているがワイバーンよりも竜らしい竜となる。

その首の付け根後方にタンデムで二人乗りが出来る鞍が装着してあった。


 腐ーちゃんはラキを胸に抱え、肩にはオオハシキバシのキバシさんを掴まらせている。

その飛竜の周りを翼竜が護衛として飛びまわる。


 このまま魔の森をしばらく北に向かい、頃よいところで西に飛び、両国の軍が集結している街道の国境砦を迂回して隣国に入る予定だ。

火魔法で高空迎撃して来るせっちんがまだ王都にいるうちがチャンスだ。

また撃たれたらたまったもんじゃないからね。

同様に高空迎撃出来る赤Tも国境砦にいるはずなのだ、大丈夫なはずだ。

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