王国の勇者たち
第256話 青T派遣
洗脳状態の青Tことセバスチャンだが、俺が願ったのは執事のような紳士になって欲しいということだけだ。
元々評判の悪かった下ネタ全開のお下劣キャラやセクハラを抑えたかっただけ。
同級生女子たちと同居させるからには、危険人物に無害になって欲しかったのだ。
それが最低限の条件だったと言っても良い。
その結果、青Tは執事化してしまい、自らセバスチャンと名乗りだした。
そして屋敷の執事としてメイドを差配するようになり、助かっていた。
しかし、最近はその献身先が違ってきている。
ハルルンの存在が、青Tを変えていた。
彼女が救出されていたことで、彼の執事としての優先順位はハルルンに向かい、俺たちは二の次となっている。
青Tとハルルンは元々付き合っていたらしく、王国での洗脳状態ではその関係まで壊されていたらしい。
それが俺の洗脳魔法により、元の記憶を取り戻したため、ハルルンに対する愛情も戻って来たということのようだ。
ハルルンをこんな目に遭わせた王国を憎み、復讐するには俺たちと一緒にいるのが近道だと思っているらしい。
「セバスチャンに青の勇者として任務を行なって欲しいんだけど、大丈夫か?」
「お任せください。
このセバスチャン、
遥香とはハルルンの本名だろう。
青Tには、俺たちに恭順するようにという洗脳はかけていない。
執事としての使命感が俺たちを世話するという行動となっているのだ。
そこにハルルンを助けた恩というものが乗って、自主的に仕えてくれている感じなのだ。
「そう思ってくれていて助かる。
今回の任務は、お米を手に入れるためのルートの構築と、赤Tとの接触になる」
「お米はわかります。しかし赤Tですか?」
赤Tをこのコミュニティに入れなかった理由は話してあり、青Tも納得していた。
執事としてのアイデンティティを確立した青Tにとって、赤Tの行動や言動は親友だったという色眼鏡で見ても好ましくないと思えたようだ。
だからこそ、今更赤Tと接触する意味がわからないのだろう。
「赤Tは、俺たちに助けられたという記憶を失っているようなんだ。
なので、この温泉拠点を保養地としている貴族に青Tが殺されたと、まだ思い込んでいるんだ」
「なんと面倒な……」
たぶん、赤Tは
この誤解を解くためには、青Tが生きていることを知らせるしかない。
言葉では信用しないだろうから、青T自身と会わせる必要があるのだ。
「赤Tは、今、魔の森へと繋がる道を開拓している。
王国との国境を越えるわけにはいかないからだ。
未踏破地域である魔の森ならば、王国の支配が及んでいない。
だから魔の森を越えて直接、この温泉拠点に来るつもりなのだ」
「その赤Tに会って、私が無事だと知らせれば良いのですね」
「その口調で大丈夫かはわからないがな」
赤Tは自らの意志で洗脳から逃れたのだそうだ。
ヤンキーに戻った赤Tが、洗脳状態の青Tを信じるのか怪しいところだ。
「申し訳ありませんが、元の口調は覚えていないのです」
それは俺のせいだから、なんかすまん。
「まあ、口をきかないという手もあるかな?」
赤Tに青Tが生きていることだけでも伝われば問題は解決だろう。
「なんとかしてみます」
青Tがんばれ。
「いま、赤Tは隣国から魔の森に向かっている。
そこまで昆虫系眷属に運んでもらおうと思う」
「承知しました」
「ハルルンのことは私に任せて。
安心して行って来てね」
青T不在の間は麗がハルルンの面倒を見てくれる。
麗は、毎日ハルルンに治療の祈りを捧げているので、一番親しいと言えるのだ。
「頼みます」
青Tは、青の勇者の装備を纏い、ヘラクレスオオカブトに抱えられて飛び立って行った。
青Tの行動はヘラクレスオオカブトと視覚共有して観察するつもりだ。
赤Tの居場所はカメレオン1が知っているので、そこから情報を入手するつもりだ。
そこへ上手く青Tを誘導してあげれば良いだろう。
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