第254話 修羅場?と思ったのは俺だけか!

 さちぽよと2人っきりの時間が長ければ長いほど疑惑は深刻になる。

ここはさっさと探索を切り上げて帰るのが妥当だろう。


「今日は探索はお終い!

帰るから!」


 俺は明らかに動揺しながらそう告げた。


「あーあ、次のチャンスまでお預けじゃん」


 次が無いように気を付けないと。

ゾクゾク、お前は眷属譲渡で出したけど、根っこは俺の眷属だろ?

俺を縛り上げてさちぽよに差し出すなんてしないよな?

クモクモ、言い聞かせておいてね。


 クモクモとゾクゾクがシュタッと右手を上げ、まかせろと言っているようだ。

これで後ろから糸で縛られるなんてことは無いだろう。


「じゃあ、戻るからね?」


 俺がチョコ丸、さちぽよが馬に跨ると、温泉拠点まで戻るのだった。


 ◇


「あれ? もう帰って来たの?」


 都合よく結衣が屋敷前に出ていた。

これはチャンスだ。

さちぽよに先に何かを吹き込まれる前に、俺から説明してしまおう。


「ただいま。結衣、ちょっと話があるんだ。

あ、さちぽよ、チョコ丸を厩舎に戻してあげて」


「わかった」


 よし、さちぽよが生き物係であることを最大限に利用したぞ。

これで俺が先に事情を話せるぞ。


「麗は?」


「麗ちゃんも関係ある話?」


「そう。緊急の大事な話!」


「なに焦ってるの?

あっ……」


 急に結衣が赤くなって下を向いてしまった。

何を想像したんだ?

そっちの話じゃない……いやど真ん中だったよ!


「とにかく途中で麗も拾って部屋に行こう」


「もう、せっかちなんだから……」


 いや、多分違うからね?

ああ、しまった! 俺の魔王が臨戦態勢じゃないか!

どうしてこうなった?

何か変だぞ?

とりあえず、早く部屋へ。


「麗、いる?」


 途中で麗の部屋に寄って麗を呼ぶ。


「なーに? あれ? 早かったわね?」


「とりあえず部屋へ!」


「え、ちょっと心の準備が……」


 麗の視線も俺の魔王に注がれる。

もうそんな反応は無視だ。

さっさと事情を説明してお説教を喰らうとしよう。

俺は結衣と麗を自分の部屋に連れ込んだ。

俺の部屋といっても結衣と2人部屋だけどね。


「ちょっと座って」


 2人をベッドに座らせる。

このベッドはカドハチ商会から買った新しいクイーンサイズベッドだ。

2人の顔が赤い。

いや、違うから。これからおっぱじめようなんて思ってないから。


「2人に謝らなければならない」


「「えっ?」」


 俺の言葉に2人の顔色が曇る。

だが、ここで言い淀んでいても悪い方向にしか行かない。

素直に全部話すべきだ。

それで怒られるなら甘んじて受けよう。


「さちぽよに「ついに襲ったのね!」え?」


 俺がさちぽよと言った瞬間に結衣が言葉をかぶせて来た。

襲ったって、未遂なんですが?


「隙があったらやっちゃってって言ってたんだよね」


「何の話ですか? 結衣さん?」


 それって、俺がさちぽよを襲ったという話ではなくて、さちぽよが俺を襲うという話ですか?


大樹ひろきくん、言ったよね?

結衣ちゃん1人じゃもたないって。

ここんところ、元気過ぎなかった?」


 麗が俺に詰め寄る。


「そういや異常に元気だった」


 それは戦闘の高揚でお色気モードだったからで。


「それなのに(私に手を出さないんだから……)」


 後半は聞こえなかった。


「とにかく、結衣ちゃんだけじゃ大変なの。

だからさちぽよにも抜いてもらおうと「ちょっと待て」」


 何か聞き捨てならない台詞があったぞ?

抜いてもらう?


「全て結衣たちの指金だったのか?」


「もう、2、3回なら良いけど、私1人は大変なんだよ?」


 ああ、つまりさちぽよは結衣たちも認めた関係だったのね。

それで今日は結衣と麗の2人を呼んだから分散できると。

麗は初めて呼ばれて嬉しかったと。


「そもそも、問題なのは亀のスープだ!

あれが精力剤になってるんだよ!」


「あー、あれね」


 いや、あれもわざとかよ!

大変だって言いつつ精力剤使うって何よ!


「大樹くんの箍が外れれば麗ちゃんも早く抱かれて、皆とも仲良くなれるかと思って。

なのに私ばっかり♡」


 それって全員とハーレムってことですか?

それを画策してたのか!

つまり、結衣も麗も他の女子たちを嫁にしろって思ってたわけね?


「亀のスープは本末転倒です。

俺は愛する相手としかしたくないです。

現に、さちぽよとは何もありません」


「「え? あの状態で何もなかったの!」」


「何もなくはないけど、寸止めで我慢しました!」


「うわ、それもどうかと思うけど……」


 麗が突っ込むが、気にしない。


「もっと俺の気持ちを大事にして欲しいです」


「「うん、わかった」」


 2人がしまったという顔をした。

ちょっとは反省しているようだ。


「だけど、結衣ちゃん1人に負担かけるのもやめてね」


 麗がいうのも尤もだが、それは麗が負担を請け負うということだ。


「良いのか? もっとロマンチックな初めてが良くないの?」


「この世界でそんなのある?

大切にしてくれるだけで良いよ♡」


「わかった。それと結衣、負担かけてごめん」


「うん、嫌じゃないんだよ♡」


「よし、4Pしようぜ!」


「おまえ、いつから!」


 いつのまにか、さちぽよが居た。


「さちぽよは駄目」


「えー、なんでよー」


 亀のスープは危ない。今後は禁止だ。

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