第231話 隣国に密入国する1
翌深夜、隣国へと密入国を決行することになった。
空を飛んで国境を越えるにしても、目撃されてはまずいと思ったからだ。
幸い、虫系眷属たちは夜の行動も得意だった。
俺がカブトン、オスカルがクワタン、アンドレがキラービーのキララの6本の脚に掴まれて空を飛んだ。
蜂はほとんど雌らしいけど、アンドレの命名センスはどうかと思う。
殺し屋のキラーを可愛く言ってもしょうがないのではないだろうか。
まあ、命名センスは人の事を言えないので、ここまでにしよう。
深夜の飛行は、月明かり以外は地上には光がほとんど無かった。
つまり、真っ暗で何も見えないので思ったよりも怖くない。
そういえば、この世界の月は2つあった。
それだけで異世界感が半端ない。
2つの月は公転軌道と公転速度が違うらしく、1つ昇っていたり、2つ昇っていたり、全く見えなくなったりしていた。
なので、この世界に来た当初は月が2つあるなんて知らなかった。
そんな月明かりは俺たちにとっては天敵とも言えた。
なるべく見えないように飛行するしかない。
魔の森の上空を通過し、関所を横目で見ながら国境を越えた。
関所に焚かれた松明の明かりを国境線の目安にしていたからだ。
いくら夜でも、さすがに関所の上空を飛ぶほど俺も無警戒ではない。
彼らの任務には空の魔物の警戒もある。
目につくようなことは避けなければならなかった。
「さて、何処に降りようか」
「なるべく街の近くにしよう」
「そうそう、あんまり歩きたくないぞ」
ベルばらコンビが横着を言う。
まあ、俺も同意見だから良いんだけどね。
接近すれば、それだけ警戒が必要になるから慎重に探さないとならない。
「あっちに見えるのが、国境を越えて初めての街かな」
「かなり賑わっているみたいね」
それは上空からも明かりが見えるほどだった。
この世界、明かりの魔道具や火を灯す油なんかも貴重で、日が落ちたら寝る生活が当たり前だ。
松明などの火で明かりをとることも可能だが、それには当然経費がかかる。
それが出来るということは、かなり賑わっていると言えるだろう。
「あそこまで明るいと接近がバレるぞ」
「ああ、逆に悔しい」
街が発展していて嬉しいが、そのせいで遠くに降りて接近せざるを得ない。
その手間が悔しいとオスカルが言う。
気持ちはわからなくもない。
「さすがに国境の関所が閉まっているのに、この時間に接近するのはまずい。
どこかで一晩明かさなければな」
「むしろ、そのために遠くに降りなければならないか」
さすがに人目に付く所に土の小屋を出すわけにはいかない。
ああ、土の小屋とは、土魔法で作った小屋をアイテムボックスに入れて持ち運んでいるのだ。
それを任意の場所に出せば雨露をしのぐどころか、直ぐにでも住むことが出来る。
快適な一晩を過ごせることだろう。
だが、問題が1つある。目立つのだ。
出すならば、目につかない人里離れた場所にしなければ悪目立ちするのだ。
こうして俺たちは、充分に離れた場所に降りると、小屋を出して快適に一晩を過ごすのだった。
明日は国境が開かれてしばらく時間が経った後に街へと向かうことにする。
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