第220話 赤T、洗脳も解ける
『仕方がない、王国に敵なすならば処分しろと命じられている!』
そう言うと王国の騎士は赤Tの攻撃をいなし、4人全員で赤Tに斬りかかった。
王国の騎士たちは手練れのようで、ドラゴンスレイヤーを自称していた赤Tを4人の連携で翻弄していた。
赤Tがチート能力を持っているにしても、その技量の差は歴然だった。
『当たらなければどうということもない!』
赤Tの攻撃は大剣という武器からして相手が大物で当たってくれれば威力を発揮できるが、素早さを使って躱したりいなして来るようなタイプを苦手としていた。
どうやら武器選びから失敗しているようだった。
大剣は、たしかにドラゴンのような大物には向いているが、このような対人戦には向いていなかった。
せっかくの剣神の加護も、武器の特性により、王国の騎士には能力を充分に発揮できていないようだった。
『くそ、俺に大剣を勧めたのはこのためだったのか!』
赤Tは隷属魔法が解け、王国の支配から逃れると決意したからか、自称が「私」から「俺」に変わっていた。
言動も汚くなっているので、洗脳が解けたということだろうか?
キシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
そうこうするうちに、赤Tは森の中に追い込まれていた。
そして巨大ムカデの縄張りへと誘い込まれ、巨大ムカデに襲われた。
『お望み通り、ジャイアントセンチピードと仲良くするがいい!』
いつのまにか騎士たちは戦線を離脱しており、赤Tは退路を巨大ムカデに塞がれていた。
王国騎士たちは、体よく巨大ムカデと魔の森の魔物に赤Tの処分を委ねたのだろう。
赤Tは、このまま巨大ムカデを倒すか、先に進むしかなくなっていた。
むしろ、これが赤Tの望む展開だった。
だが、その先というのは、いま必死で退避中のモドキンの所だ。
見掛け倒しでしかないモドキンが危ない。
『望むところだ。だが、無益な戦いは避けさせてもらおうか。
このまま我が友の仇討ちに向かわせてもらう』
赤Tが巨大ムカデをスルーしてモドキンの方に向かって来た。
巨大ムカデは、赤Tも騎士たちも脅威だと認識しているため、逃げる赤Tよりも、騎士たちを警戒して動かなかった。
そこは騎士たちの誤算だった。
『っ!』
先を急いでいた赤Tがモドキンの姿を目にして急停止する。
その慌てように俺はほくそ笑んだ。
赤Tですらモドキンを本物だと思ったのだ。
ドラゴンスレイヤーを自称する赤Tが、躊躇する外観とは、さすがモドキンだ。
見た目だけならば、恐怖の対象だよな。見た目だけなら……。
『冗談じゃねぇ!
え? もうどくキングドラゴン?
その赤Tの様子は心底モドキンを恐れているようだった。
『現地人がモドキなんて言うから嘗めてかかったら、最強種だったからな。
モドキドラゴンなんて名前、紛らわしいんだよ!』
え? 最強種? 紛らわしい?
も〇ど〇キ〇〇ドラゴン?
本っ当に紛らわしいわ!
誰だよこんな名前つけたの!
俺は最強種を戦わさせずに逃がしてたのか。
『背中を見せている今がチャンスか!』
そう赤Tが叫ぶと大剣が赤い光を帯び、なんらかのスキルを使用する形跡が見て取れた。
『
『ドラグスレ〇ブ!』
しかし時既に遅く、モドキンは背中から一太刀浴びてしまった。
その斬撃にはスキル効果が乗っておりモドキンの背中をざっくり切裂いた。
だが、その技名、格好良いからって使ってるんだろうけど、剣の技じゃないだろ!
『モドキン!』
ブチッ
何かが切れる音がした。
と同時にモドキンの尻尾が横薙ぎにされていた。
その尻尾の軌道には赤Tがいて、一瞬のうちに宙に舞っていた。
『ぐげっ!』
赤Tがカエルが潰れたような声をあげた。
いやいや、モドキン、強すぎじゃん。
『ぐがっ』
そして地面に叩きつけられた赤Tが苦悶の表情で悶え苦しみはじめた。
まさか、猛毒か!
尻尾に毒針でもあったのだろうか?
モドキンの真の名前である猛毒王、その真価が発揮されたのかもしれない。
「あー、これあかんやつや」
赤Tは無力化どころか死の淵を彷徨っていた。
そして、そこに追い打ちをかけようとするモドキン。
『モドキン、ストップ、ストップ!
もういい、止めは刺すな。
ハッチ、緊急出動! 赤Tに毒消しポーションを! 早く!』
思わぬ事態が発生し、俺の眷属が同級生を殺しそうになっていた。
俺もカブトンに抱えられて現場に急ぐ。
そうだ、保険でマドンナも連れて行こう。
「いやーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
クワタンに掴まれて空を飛ぶマドンナの悲鳴が魔の森に鳴り響いていた。
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オマージュネタをご理解いただけない方もいるようなので加筆修正しました。
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