第202話 侯爵軍迎撃2
「あーしまった。あの状態ではまだ来れないか」
T-REXをけしかけるにしても、まだ距離がありすぎた。
しかも残処理などで侯爵軍はまだ動けないだろう。
T-REXにはその存在だけで生じる威嚇効果も期待している。
となれば、さっさとここまで来てもらった方がいいか。
今後の事を考えると、こちらの実力を見せた方が良いと判断した。
GKと配下には休憩地からこの温泉拠点までは、侯爵軍の残存兵力をそのまま通すように指示をした。
このままでは残りの道中で侯爵軍が全滅しかねなかったからだ。
全滅すると、ここで何があったかという報告もなされない。
森や俺たちを畏れもしないから、また誰かが良からぬことを考えて攻めて来るの繰り返しになるだろう。
なので、一定数の兵には生き残って帰ってもらう必要がある。
二度と手出しをしたくなくなるような教訓を得て帰って欲しいのだ。
侯爵軍の1軍700人が既に200人を割っていた。
こちらは、オーガ率いる200匹の魔物を倒した俺たちに加え、戦闘奴隷が150人いる。
そして、道の到達点である南門前にはT-REXが待ち構えている。
俺たちが負ける未来が見えない。蹂躙という言葉が頭を過るほどだ。
命令されているだけの兵士たちにも家庭はあるだろう。
そのまま帰って欲しかったところだが、どうやら無理だったようだ。
撤退の要件は既に満たしたかと思っていたが、それは森と魔物への畏れだけで、俺たちが畏れられているわけでは無かった。
俺たちに手を出したら痛い目に合う、そう学習して帰ってもらうために、あえて拠点まで来させてから負けてもらおう。
この時、撤退を促すために退路の掃除を戦闘中戦闘後に渡ってGKの配下にはしてもらっていた。
だが、侯爵軍が撤退を選ばなかったため方針転換し、進路をクリアーにしてさっさとここまで来てもらうことにした。
なので、GKの配下には残してあった進路の掃除を開始してもらった。
ゴブリンその他の遺体が散乱していたのでは通りにくいだろう。
さっさと南門まで到達して現実を受け入れて欲しいところだ。
野良の魔物も掃除の役に立ってくれているが、俺たちには【暴食】スキルを持つGKの配下が居る。
1200匹のゴブリン、138匹のラプトル、その他便乗しに来て倒された野良の魔物、そして300(+200)人の兵と馬たち、亡くなったそれらは戦闘のどさくさ中も含めて野良の死体あさり達と共にGKの配下たちが美味しくいただいた。
それにより侯爵軍の進軍ルートは確保された。
『閣下、遺体が全て掃除されて行くなんて罠です!』
『卑しい魔物たちめ、だが好都合だ。
これで兵を休ませながら進軍出来るではないか。
全員騎乗し進軍する。兵と怪我人は馬車に乗れ!』
『だから、誘い込まれているってことですよ!』
『何をバカなことを。
このような数の魔物を操れるわけがないだろうが!』
副官と思われる人物は苦労しているようだ。
命を救ってあげて、この人に報告させた方が良さそうだな。
有難いことに、指揮官が無能なため、何の疑いも無く侯爵軍の残存兵力は南門前まで辿り着いた。
浅い森であれだけ魔物に襲われていたのに、森の深部で襲われないという異常事態に兵は怯えていたが、指揮官は何も気付いていなかった。
そして、馬車から降ろされた兵たちは、南門前のT-REXを見てパニックになった。
「ほら見ろ、罠じゃないか!」
「もう嫌だ。帰りたい」
俺は屋敷の屋上に立つと【音声拡大】の生活魔法で呼びかけた。
「もうそちらに勝ち目はない。降伏投降せよ。
投降しなければテイムしたティラノをけしかけるぞ」
その声に兵たちはさらに逃げ腰になっている。
あれだけ魔物の襲撃にあえば、このT-REXの格の違いは理解出来ることだろう。
あとは脅しの爆裂魔法でも見せればこれで終わり、と思った所に予想外の事態が起きた。
「えーい、五月蠅い、五月蠅い!
そんな魔物、勇者様にかかれば一捻りだ!
勇者様、頼むぞ」
え? 今、勇者って言った?
まさか、こいつ、同級生の誰かを連れて来たのか?
部下たちが襲われている時には使おうともしなかったのに?
俺の戸惑いの表情を怯えと取ったのか、侯爵軍の指揮官が自慢げに話す。
「こんな時の切り札としてお爺様から預かって来ていたのだ。
切り札は最後まで取っておくものだ」
そう言って指揮官は高笑いをした。
いや、それより同級生ならば、助けないとならないじゃん。
それに、洗脳されていたら、こちらが誰かもわからずに殺しに来るかもしれない。
こちらは無暗に攻撃出来ないから面倒だぞ。
相手のレベルとスキルによっては、女子たちでは対処できないかもしれないぞ。
さすがに同級生を斬り殺せるほどのメンタルは誰も持ってないからな。
誰だ? ヤンキーの誰かか!?
洗脳中は見た目も変わるから一目じゃ誰だかわからないんだよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます