第177話 襲撃1

お知らせ

 本日、視点が違う話で2つに分けた方が良かったため、2話公開です。

前話があります。

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Side:結衣


ギーギギーギー


 ベルばらコンビが南門を開けた時、私はキッチンで昼ごはんを作っていた。

南門は巨大な鉄の門が設置されていて、この温泉拠点の守りの要となっている。

その鉄の門を開けるためには、ワイヤーのロックを外して重りを下ろすことで、その重さで鉄の門が横にスライドするようになっている。

一度開けると、魔道具によって重りに繋がったワイヤーを巻き上げなければならないため、急に閉められないのが欠点だ。

だから、開門は慎重にしなければならないと大樹ひろきくんが口を酸っぱくして言っていた。

この時間、カドハチ商会の人が来る時間だから、開門したんだろう、その時私は漠然とそう思っていた。


 最近はいろんな種類の小麦粉が手に入って、デュラム小麦と言われるパスタに最適な小麦も手に入っていた。

野菜も種類豊富に手に入るようになり、トマトが手に入った時は料理の幅が広がると喜んだものだ。


「今日は肉多めのトマトソースパスタにしよう。

乾麺は無いから生パスタを作らないと」


 私は小麦粉を捏ねるために、キッチンの調理台に【クリーン】をかける。

そこは大理石のような一枚の石で出来ているので、パスタを捏ねるのには最適だった。


「そうだ、今度ピザも作ろう。

ピザ窯が無いから大樹くんに作ってもらわないと」


「ピザ、良いね。チーズもあんなに種類があるなんて思わなかった。

粉チーズと溶けるチーズは違うチーズなんだね~」


 同じ調理生活係の瞳美ちゃんがよだれを垂らさんばかりに言う。


「粉チーズも、削らないといけないんだよね」


 普通は粉になってるチーズしか見ないからね。

都会の洒落たイタリアンレストランでないとパルメザンチーズの塊を目の前で削るなんてしないからね。

特に地元のレストランでは見たことないよね。


ダーン!


 突然玄関扉が乱暴に開け放たれた音がした。

そして雪崩込む複数人の足音。

どうやら何かあったらしい。


「瞳美ちゃん、襲撃だと思う。

裏口から逃げて大樹くんに知らせて」


「でも、結衣ちゃんは?」


「大丈夫、私にはラキがついているから」


 ラキの戦闘力なら負けることはない。


「クワァ!」


 胸に収まっているラキが警戒の声を上げてもぞもぞしている。

あ、視覚共有って、こんな状態でしたら変なところが見えちゃうじゃない。


バン


 玄関ホールに侵入した賊が、リビングの扉を開け放った。


「いたぞ!」


 どうやら私は見つかってしまったようだ。

賊は鎧を身に纏い、剣を手に構えた騎士のような恰好だった。

もしかして、国あるいは貴族の襲撃?

これは拙いことになった。


「おい、シャインシルクはどこにある?」


 目の前に迫った賊が私に手を伸ばす。


「クワクワァ!」


 ラキが胸元から顔を出し、警戒の声をあげた。

どうしよう、攻撃許可を出さないと危険だよね。

だけど、私たちは人に危害を加えることが出来るだろうか。

それと、仲間を人質にされたら戦えるだろうか?

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