第126話 いろいろ質問

 さちぽよのステータスを見て気になったのが、職業の存在とスキルレベルの高さだった。

どうやらさちぽよは、俺たちとは違う何かを経験しているらしい。

さとぽよは、俺に対して攻撃的――あっち方面でだが――なので、あまり近寄りたくないのだが、今後のためにいろいろ訊かなければならない。


「さちぽよにいろいろ訊きたいんだが良いか?」


「やっと、その気になった? スリーサイズわぁ「言わんで良い!」」


「なんだ残念。さちのテクニックで昇天させてあげるのに♡」


 そう言うと、さちぽよは、俺にしなだれかかって来た。

今日は結衣たちから服が提供されたようで、半裸でないのが助かる。


「こら、やめろ」


 さちぽよには、ちょっと自分を安く扱わないで欲しいところだ。

経験者ということで、身体的接触に対してのハードルが低い。

ヤンキー気質のせいで、つまみ食い感覚なんだろうか?


 俺は、地球には悪い思い出しかない。

そんな地球よりも、この世界に残ってもかまわないという身だ。

だが、同級生女子たちは、地球への帰還を望んでいる。

そんな女子を妊娠させてしまったら、地球に帰ってからが面倒なことになる。

この世界では数えで15は立派な大人らしいが、俺たちはまだ中学生だぞ。

帰った後のことを考えると、下手なことは出来ない。

何よりここには避妊具すらも無いのだ。


 それにこの世界には医療体制という問題もある。

街に住んでいたとしても満足な医療を受けられるかどうかわからないのに、拠点のような何もない場所で妊娠はさせられない。

マドンナの祈りがあるが、どれだけ効果があるのかは不確定だ。


「なに? 出来ちゃったら困るとでも思ってる?」


 さちぽよが、ずばりと直球で突っ込んで来た。

さちぽよ、するどすぎる。


「避妊なんて、生活魔法で出来るじゃん」


「え?」


「【クリーン】で精子ちゃんも綺麗になるんだぞ」


 たしかに【クリーン】は身体にこびり付いた魔物の返り血や分泌物も綺麗にしてくれる。

それが身体の外側だけとは限らないということか。

内側胎内分泌物精子だって綺麗に出来るってわけだ。


「だから、安心して楽しんで良いんだぞ♡」


 やばい、俺の自制のハードルが地面の下まで低くなってしまった。

さちぽよはウエルカム状態、その攻撃に抗うATフィールドが侵食されていく!

いや、俺はクソ親父のようにはならないと誓ったのだ。

するなら嫁の結衣と……。


 いや、そもそもそんなことが訊きたかったのではない。

職業とかスキルレベルとか、もっと重要な話があるのだ。

危なかったが、俺はまだ自制出来るようだ。


「さちぽよはスキルレベルが高いようだが、どうやって上げたんだ?」


「むー。真面目か!」


 話が進まない。勘弁して欲しい。

結衣もさちぽよに取られないようにと、俺の右腕に抱き着いて胸部装甲を押し付けて来ている。

ちょっと目が恐いぞ。小動物が必死に肉食獣を威嚇しているみたいで可愛いけど。


「あー、三つ編みちゃんが怒った!

しょうがないな、今日はこのへんにしといて、あ・げ・る♡」


 本当に、話が進まなくて泣きたくなる。

これがギャルか。(違う)


「スキルのレベルだっけ?

さちは、お付きの騎士と一緒に魔物と戦ってたら上がったかな?

あんなの使えば上がるもんでしょ?」


 結衣のおかげ?で、さちぽよがやっとまともな説明をしてくれるようになった。

なるほど、俺のスキルもいくつかレベルが上がっているが、それは使っていたからだったのか。

女子のスキルレベルがあまり上がっていないのは、パワーレベリングの弊害だろう。

魔物のとどめだけサクッとやってレベル上げをしたために、スキルが育たなかったのか。

これはスキルを使った訓練をしないとならないな。


「それと、さちぽよは職業に魔法騎士を持ってるけど、俺たちはずっと『なし』のままなんだ。

どうやったら職業は取得できるんだ?」


「たしか、教会で何かの魔導具に手を置いたら取れたかな?

そういえばー、職業がないとスキルのレベルが上がりにくいってお付きが言ってたかも」


 それ重要な話じゃん。

教会か……。それならば、お布施を渡せば何とかなるか。


「ああ、そういえばー、職業が無いなんて珍しいんだって。

みんな10歳の頃に教会で職業洗濯選択のなんちゃらってのをやるから、必ず持ってるはずだって言ってた。

この年齢で持ってないのは異世界から召喚された、さちたちぐらいのものなんだって」


 それは職業選択の儀だろう。けして洗濯ではないはずだ。

だが、職業なしが現れたら、即召喚者だとバレるのか。

この国はさちぽよたちに魔法による洗脳や肉体改造を行っていた。

人権が守られるような国ではない。

教会に行って通報されたら、同じ目に遭うことになるだろう。


 となると、職業を得るために教会にほいほい行くわけにはいかないな。

スキルレベルを上げるためには、職業がある方が有利だという話だから、どうにかしないとならない。

今後の最重要課題だな。


「この国に捕まった同級生は、何人いるのか?

いるなら、安否は?」


 俺はヤンキーチームの他の者たちの安否が気になった。


「えーとね。15人で保護されて、最初は一緒だったんだー。

金属バットが暴れてから、扱いが急に微妙になって。

訓練だーって別々にされて、会わせてくれなくなって。

変な名前つけられて、そこから記憶が変であまり思い出せないの」


 別々にされて洗脳された後は記憶が曖昧なのか。


「うっ……」


 いきなりさちぽよが頭を抱えてしまった。

どうやら洗脳の副反応が残ってるらしい。


「大丈夫か?

これ以上はまた後にしよう」


「やっぱり優しいね♡」


 またさちぽよが抱き着いてきた。

引き剝がしたいところだが、弱った女性を無碍には出来ない。


「はーなーれーろー」


 結衣がさちぽよを引き剥がそうとするが、この集団の中で一番レベルの高いさちぽよを剥がせる人物なんて存在しなかった。

あれ? どこが弱っているんだ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る