第123話 ぞろぞろと帰還
偽装工作を終えて暫く街道を西に進む。
そこには一昨日森から出て来たルートがあるからだ。
別に違う場所から森の中に入っても良かったのだが、俺はひっぽくんの獣車の
もし、盗賊たちが表向きは冒険者で、帰って来ないために捜索隊が探しに来た場合、この轍を辿って捜索する可能性があった。
轍を辿って行けば拠点まで到達出来てしまう。
それだけは避けたかったため、轍を消しながら帰ることにしたのだ。
「GK、チョコ丸や馬たちの足跡や獣車の轍を消して」
自分たちで消しながら移動したのでは、日が暮れるまでに拠点まで到達出来ない。
そのため俺は、念話で眷属のGKに証拠隠滅作業を頼むことにしたのだ。
昨夜、GKに森の中に隠れていた盗賊たちを倒してもらったのだが、GKは盗賊を倒した痕跡を綺麗に隠していたのだ。
これを応用すれば、轍の跡や足跡など簡単に消してくれると思ったのだ。
GKから念話で「承諾」の概念が伝わって来た。
これで拠点が危険に晒される可能性を減らすことが出来るだろう。
馬に乗ると言い張った紗希だが、殊の外上手く乗馬が出来ていた。
乗馬経験者からしたら、乗馬嘗めるなと言われそうだが、この世界にはスキルがあり、そのスキルさえ持っていれば、ある程度の事は熟せてしまうのだ。
紗希が乗馬スキルを持っているなどとは聞いていなかったのだが、盗賊との闘いでレベルアップしテイマースキルを手に入れていたらしい。
今回の街行きで、チョコ丸やひっぽくんを何かと気にかけて世話していたおかげなのかもしれない。
そのテイマースキルには【騎乗】というサブスキルがあるんだそうだ。
自らテイムした獣や魔物に乗るためのものらしく、それの応用で乗馬が出来るらしい。
どうせ失敗する、大けがさえしなければ失敗から学ぶことも必要かと思っていたのに、簡単に乗れてしまっていて拍子抜けだった。
馬は全てテイムしたのか、綱で数珠繋ぎにしなくても紗希の乗った馬の後を付いて来ている。
紗希の宣言通り、馬は任せて良いようだ。
もし、他の女子たちも馬に乗れるようになれば、機動力が増して街への行き来が楽になるかもしれない。
馬の所有権で揉めなければだが……。
瞳美ちゃんの説明通りに一定期間開ける必要がありそうだ。
今回は早期の帰還を優先したため、なるべく魔物と遭遇しないようにホーホーに誘導してもらった。
それでも避けられない戦闘があるのだが、さすがに生産組と情報担当が倒せるような弱い魔物は寄ってこないため、俺と紗希が始末した。
これはラキの威圧とGKの撒く恐怖感を突破できるような魔物は強いものしか居ないためだ。
盗賊を倒した経験値は同程度の強さの魔物よりも遥かに多いようで、俺もレベルアップしていた。
俺個人が倒した人数も多かったが、眷属――ラキとGKが倒した経験値も俺に入って来る。
紗希が倒した1人を除いて全て俺の経験値となったのだ。
魔物よりも多い経験値が約30人分だ。
盗賊はボーナスステージというが、経験値のボーナスステージだったとは夢にも思っていなかった。
スキル取得数が限界突破していて良かった。
そうでなければ、重要なスキルを失っていたかもしれない。
そういえば、紗希もそろそろレベル10を突破するころだ。
レベルアップ時にスキル整理をしないとならないと教えておかないと拙いな。
この森の中の魔物であれば、俺に対処できない魔物は居ないと豪語出来るぐらいに強くなった。
ホーホーの警戒網のおかげで不意打ちを食らうことも無い。
面倒な雑魚の魔物も寄って来ない。
殊の外安全に拠点まで帰ることが出来た。
「「「みんな、ただいまー」」」
結衣、瞳美ちゃん、裁縫女子が獣車を降りて拠点に飛び込む。
紗希と俺は馬とチョコ丸から鞍を下ろしたり、ひっぽくんを獣車から外したりとしている。
「カブトン、馬も守ってやってくれ」
拠点の警備担当のカブトンに馬やチョコ丸たちを守ってもらう。
「チョコ丸、ホーホー、ご褒美だ。
ひっぽくんと馬たちも」
俺はチョコ丸に巨大カマキリの脚、ホーホーには獣肉を与え、ひっぽくんと馬に草原で刈った草を与えた。
草はひっぽくんとキャピコ用にストックしていたものだが、馬が増えたのでほとんど消費してしまった。
また刈りに行かないとならない。
「GK、助かった。
引き続き、周辺警戒を頼む」
GKは触覚だけを見せて、それをフリフリしてから闇に消えて行った。
その姿を見るとSAN値が削られてしまうので、なるべく目の前に出ないように気を使ってくれたのだ。
なんだか、大きくなっている気がするが、全体が見えないので判断に悩むところだ。
紗希は馬にブラシをかけるために、その場に残るようだ。
そのブラシ、ひっぽくんに使うつもりで買ったのか?
俺は1人で拠点内へと入ろうとして結衣に止められた。
「入っちゃだめ!」
どうやら運動部2人組が、まだ半裸でうろついているようだ。
俺たちは予定では4~5日間外出するはずだった。
まさか魔物の氾濫で2泊3日で帰って来るとは思っていなかったのだろう。
「あー、駄目ー!」
結衣の叫び声と共に、小麦色の物体が俺の胸に飛び込んで来た。
「助けてくれてありがとう。
さちの全ては転校生くんのものだよ♡」
それは国からの魔法支配が消えて元に戻ったさちぽよだった。
どうやら、カブトンが俺の眷属で、助けるために攫ったことを腐ーちゃんから説明を受けたようだ。
それに感謝しているというのはわかるが、なぜ半裸で抱き着く。
いや、ヤンキーグループの女子は早熟だとは言うが、さちぽよの抱いて感が半端ない。
運動部2人組の影響で半裸だったのだろうが、その攻撃は男の子には辛い。
思わず前かがみになってしまうのは当然だろう。
だが、俺には嫁がいるのだ。自制しないとならない。
「あ、こら、触るんじゃない」
さちぽよの右手が俺の元気になった分身をさわさわする。
これが経験者のテクニックか!
あ、結衣が恐い顔してるので、本当に止めてください。
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