第88話 街を目指す1

 3日後、俺はチョコ丸に乗って街への遠征に向かうことにした。

この3日、残す女子たちにはレベル上げに食材調達に温泉にと、しばらく自活出来るだけの力と狩場を準備した。

温泉で心のケアもばっちりだ。


「クモクモ、罠を頼む」


 クモクモが「シュタッ!」と右前足を挙げて了解を示す。

あの罠を使えば巨大カマキリの襲撃を防ぎながらホーンラビットの肉を手に入れられる。

それにレベルアップも可能という一石二鳥システムだ。

バッタ人間もクモクモと連携すれば、最早女子だけでも倒せない相手ではない。


「ラキ、護衛を頼む」


「クワァ!」


 ラキが闘気を使えば余計な戦いも避けられる。

狩りの時に駄々洩れだと獲物が逃げてしまうが、拠点や温泉の防衛にはその力を遺憾なく発揮してもらう。

たぶん、ラキとの触れ合いが長い三つ編み女子は、なんとなくその能力を感じていると思う。


「三つ編み女子の指示は守れよ。

いざとなったらあれブレスを使え」


「クワァ!」


 この周辺で最大の脅威は四腕熊だ。次いでバッタ人間とグレーウルフ。

巨大カマキリも危険だが、連携が出来ないおバカなので奇襲でなければ女子の敵ではない。

女子の手に余る魔物が来たら、ラキに思いっきり暴れてもらうつもりだ。

その判断を三つ編み女子に委ねた。


「カブトンは、眷属のみんなと鶏、留守の拠点を頼む」


ギシギシ


 カブトンが関節を鳴らして応じる。


「GKも頼む」


 そう言うと影が少し動いた。

GKは影に隠れて任務を遂行してくれている。

卵から孵った時と比べて大きくなっているのは気のせいだろうか?


 キャピコは草を食べて糸を生産している。

少し大きくなっている気がする。


 ハッチは戻ってこない。

たぶんハチミツを集めている最中なのだろう。

たまに視覚共有すると忙しなく空を飛んでいる。

任せておくしかない。


 ゴラムは温泉の壁を建築し終わり、屋敷の建築に取り掛かった。

MP切れで止まって、また動き出してとしているが、MPを補充出来れば連続稼働も出来るはず。

MP回復かなにかの魔導具があるかもしれないので、それも街で調べるつもりだ。


 ひっぽくんはバレー部女子について草原で草を食いまくっている。

バレー部女子はなんとかしてひっぽくんに乗ろうとしているが、タオルを重ねた程度では痛くて乗れないようだ。

専門の鞍をつけるか、獣車を用意するまでは騎獣として活躍できそうもない。


 俺は2日前からチョコ丸に乗る練習をしている。

チョコ丸の背中は人を乗せるのに丁度よいカーブを描いており、そこに座って羽と体の間に脚を入れると羽で脚をしっかり固定してくれる。

首にタオルを巻くことで、そこに捕まれば安全に乗ることが出来た。

鞍が無くても乗れるので助かった。

練習の結果、今では快適に乗ることが出来る。


「じゃあ、行ってくる。

ホーちゃん行くよ」


 俺はチョコ丸の背に跨った。

その俺の右肩にホーちゃんが止まる。


「おみやげ忘れないでね」


「石鹸とシャンプーよろ」


「調味料、米、小麦、あとチーズ!」


 これ以上聞いていたら出発できないぞ。

脚に力を入れるとチョコ丸が歩き出した。


「わかったよ。善処する」


「うん。行ってらっしゃい」


「気をつけてねー」


 女子たちの期待の視線を受けて、俺は街を探しに出発した。

とりあえず、ノブちんたちが到達した街道が第一目標だ。

彼らは1日でそこまで到達した。

チョコ丸が加速する。

チョコ丸の脚ならば、もっと早く到達できるだろう。

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