第38話 バレー部女子をレベルアップさせる

 拠点近くまでゴブリンを引っ張って来た俺たちだったが、これ以上拠点に接近するのは危険と判断し立ち止まった。

さすがにゴブリンを殺した血の臭いを拠点周辺に残したくなかったからだ。

わざわざゴブリンを傷つけずに歩かせてきたのもそのためだ。

血の臭いで魔物の道案内をするつもりはない。


「皆は拠点まで戻って、バレー部女子をここまで連れてきてほしい」


「わかったー」


 安全のため、4人全員で拠点まで戻って貰った。

全員がレベル4に上がっているので、4人で行動すればある程度の身の安全は保障できる。

しかも、三つ編み女子の胸元にはラキがいる。

ラキならばここ周辺最強の四腕熊よつうでくまに襲われても倒せるだけの実力がある。

任せても問題ないだろう。



 ◇



 暫く待つと、三つ編み女子、バレー部女子、バスケ部女子の3人が戻って来た。

どうやら護衛役はレベル6――最強女子のバスケ部女子の担当となったらしい。

レベルにより力もあるので、バレー部女子に肩を貸して連れて来るのに適任だったということでもあるか。

何ならお姫様抱っこでも余裕だろう。


「それがおみやげなのね?」


 バスケ部女子が改めて縛って転がしてあったゴブリン2体を見つけて言う。

ん? 三つ編み女子、何も伝えていないのか?

今回はラキの視界を借りていなかったので、拠点でどのように説明したのか知らなかったのだ。


「ああ、バレー部女子だけレベル2だと可哀そうだろ」


 俺がそう返すとバスケ部女子は納得したというように頷いた。


「じゃあ、バレーちゃん、この剣でやっとこうか」


 バスケ部女子が自分の短剣をバレー部女子に渡した。

バレー部女子も基本的に戦闘職だ。

躊躇することなく……いや、怪我をさせられた恨みを込めてゴブリンを刺していた。

その様子は鬼気迫っていた。


「バレーちゃん、そのぐらいにしとこうか……」


「はあ、はあ、そうですね」


 バレー部女子は息が上がるぐらいゴブリンを滅多刺しにしていた。

本来なら胸に剣先を当ててサクッとやるだけで良いのだ。

バレー部女子、オーバーキルです。

その座った眼にドン引きだよ。


「転校生くん、ありがとう。

これで私も戦える」


「うん、そうだね」


 俺は引き気味に答える。


「じゃあ、このままレベル4まで上げに行くからね」


「「「え?」」」


 バレー部女子の予想外の発言に、俺も三つ編み女子もバスケ部女子も目が点になる。

どうやらバレー部女子はレベルアップで頗る調子が良くなったようだ。


「うーん、このゴブリンを処理しないと拠点が危ないから明日ね」


 俺はそう言うのが精いっぱいだった。

実際、惨殺されたゴブリンからは、心臓を一突きされたゴブリンよりも濃厚な血の臭いが漂っている。

ゴブリンの死骸を【火魔法】で焼き、この場を【クリーン】で綺麗にしないと何があるかわからなかった。

せっかくここまで血の臭いをさせて来なかったのに台無しである。


「そ、そうだよバレーちゃん。明日にしようよ」


 三つ編み女子も俺の提案を援護してくれる。


「だな。武器も用意しないとならないから、男子の帰りを待って明日にしよう」


「そうか……。武器がいるわね」


 バスケ部女子の説得でバレー部女子も納得してくれたようだ。

俺たちのチームは、ゴブリンを2体連れて来たこともあって、武器を持って帰らなかった。

俺以外が女子だったこともあり、自分たちの武器を更新する以外は重い武器を運べなかったのだ。

表向きはね。実は俺のアイテムボックスに入れてあるのは内緒だ。

この能力だけは隠し通さないと、将来奴隷まっしぐらな危険スキルなのだ。


「じゃあ、ここの後始末をしてから、拠点で男子チームを待つわよ」


 バスケ部女子の指示で、ここの後始末を始めた。

俺が【火魔法】で焼いて、俺が【クリーン】をかけたんだけどね。

そして拠点に帰ったのだが……。


 いつまで経っても男子チームが帰って来なかった。

まさか、あれほど言ったのに委員長がやらかしてしまったのだろうか?

レベル4が2人にレベル3が4人ならばゴブリン程度楽勝だろうに……。

まさか功を焦って強敵に手を出したのか?

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