第8話 ついに水を飲む
お知らせ
2話同時投稿です。前話があります。
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結局、ゴブリンの頭蓋骨は綺麗にならず、残った肉に毒があるかもしれないので、水を入れる器には使用出来なかった。
丸くんに頼めば【クリーン】の魔法で綺麗になったかもしれないが、何回かける必要があるかも不明だった。
丸くんには後に【クリーン】で水を浄化するという重要な仕事があったので、無駄にMPを使わせるわけにはいかなかった。
「あーあ、とうとう無くなっちゃったよ」
茶髪ミニスカセーラーのゆきりんが、飲んでいた炭酸飲料のペットボトルをそこらへんに捨てた。
そう、ペットボトルの炭酸飲料を皆に隠して飲んでいたのだ。
さすが、脳みそがアレなギャル。
皆が必要としてるものを手にしていても気付いていなかったのか!
しかも、自分だけが水分を取れることを巧妙に隠す手腕、恐ろしい奴だ。
「あーーっ! それーーーっ!!」
灯台下暗し。ペットボトルを手にして転移して来た者がいたのだ。
そういえばヤンキー1も金属バットを持って転移して来ている。
他にも何か有益なものを持っている同級生がいるかもしれなかった。
「ゆきりん、でかした!」
委員長は空のペットボトルを拾うと、キャップを外し渓流の水面に沈め、良く洗ってから水をペットボトルいっぱいに汲んだ。
「丸くん、クリーンを」
「うん、クリーン!」
丸くんは委員長からペットボトルを受け取ると【クリーン】の魔法をかけた。
するとペットボトルが青い光に包まれ、魔法がかかったことが目に見えて判った。
「まずは僕が一口毒見して1時間待つ。
大丈夫だったら皆で飲もう」
皆の視線が委員長に集まる。
委員長は水を一口含むとゴクリと喉を鳴らして飲んだ。
「あー、美味い」
委員長の一言に誰もが我慢できなかった。
「俺も実験台になる!」
「俺も俺も」
「おい、一口ずつだからな」
委員長の結果も待たずに男子が我先にとペットボトルを口にした。
なぜ男子だけだったかというと、男子との間接キスを恐れた女子が手を出さなかったからだ。
そして、女子は生水を飲んだヤンキー2たちのようなハメにはあいたくなかったのだ。
ちなみに、俺もまだ飲んでいない。
理由は安全面の確認だ。まあ、水トカゲに魔法で出してもらっても良いし、だいたい俺が飲む前にしっかりペットボトルは空になったしな。
また俺の存在は忘れ去られていたらしい。
1時間後、ヤンキー2たちの症状と同じならば、今頃委員長たち男子はお腹を下しても良い頃だった。
幸いなことに誰も症状を現さなかった。
「やった! 大丈夫そうだ」
委員長のゴーサインが出ると、ペットボトルを良く洗ったうえで、また水が汲まれた。
それを丸くんが【クリーン】で浄化する。
「「「「「いただきます」」」」」
今度は女子だけだ。女子たちも一口ずつ水の飲んだ。
だが、それでは人一人の一日の必要摂取量は賄えていない。
「丸くん、あと何回出来そう?」
「MPが回復する前提で言えば、残りMPは13だから、1回MP2で6回だね」
ギリギリMP1残るかたちだった。
丸くんはチャレンジャーだ。
MP1まで下がったら、どのような身体的な影響が出るかもわからないし、これでMPが回復しなかったら大変なことになる。
レベルアップで回復するにしても、レベルアップまでに死にかねない。
丸くん、凄いな。いや、MP枯渇が危険だって知らないのか?
「よし、男子はあと3本だから3口ずつね」
「だったら、1本5人にすれば15人で丁度じゃね?」
「そうだな、一口じゃ飲んだ気しないんだよな」
つまりまた俺のことが人数に入っていないのね。
まあ水トカゲに水出してもらうからいいけどさ。
この疎外感、早く独り立ちしてーな。
こうして丸くんに【クリーン】を最大限使ってもらってクラスメイトは水分を補給した。
「あっ、転校生くんにあげてないじゃない!」
メガネ女子が気付いてくれた。
彼女は自分の分を半分残して俺に渡そうとしてくれた。
なんて優しい子なんだろうか。
「何? 余ったの? もーらい」
ヤンキー2がそのペットボトルを横取りし飲み干した。
「何やってるんですか! それは転校せ「あーん?」……」
「俺はピーしちゃって脱水症状なんだよ。
こいつ、わざとやってんのか?
転校生イジメなんて、田舎では良くあることらしい。
田舎では都会から来た者はよそ者という閉鎖的な考えが根強いらしい。
俺が自己主張しないのも悪いのだろうけど、この田舎コミュニティ、メガネ女子以外は俺の事なんか気にしてないんじゃないか?
まあ、水トカゲが水魔法で水を出せて、命には関わらないから別に良いんだけどな。
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