クラス転移だけど転校初日なので疎外感MAXな件―スキルたまご召喚って何だよ!―
北京犬(英)
転校初日にクラス転移ってそれはないでしょう
第1話 転校初日だってのに
「それでは呼ぶぞ。おーい、転校生、入って来い!」
担任教師に促され、俺は教室の前扉から教室に入る。
転校生は第一印象が肝心。
ここは爽やかスマイルで好印象を演出しよう。
「初めまして、
その時、教室中に魔法陣のようなものが広がると眩い光を発した。
「なんだこの光は?」
「うわーーー!」
・
・
・
気が付くとそこは鬱蒼とした森の中だった。
どうやら俺は気絶していたらしい。
周囲を見まわしても誰も居ない。
これって新手のイジメか?
転校生を気絶させて裏山に放置するという……。
「おーい、誰かいないか?」
知らない男の声がする。
俺が声のする方に向かうと、どうやら俺の新しい同級生たちのようだ。
教室に入って少し見ただけだが、どことなく見覚えのある人物たちだ。
これで転校生の俺だけがイジメにあっていたわけではないことが確定だ。
ふむ、どうしたものか。
その時、同級生から叫びが上がる。
「うわー! なんだこいつは!」
その声の方を見ると、腰蓑をつけただけの緑色の小人が立っていた。
その右手には木を削ったようなこん棒を持っていた。
その顔は醜悪で、まさにゲームに出て来るあのモンスターだった。
「ああ、こいつ知ってる。ゴブリンだろ!」
転校初日、どうやら俺は異世界へのクラス転移に巻き込まれたようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
中三の夏休みに入ったぐらいのある日、親父が不倫していたことが発覚した。
親父が週一ぐらいでしか帰って来ないことを、仕事が鬼のように忙しいせいだと思っていたのは、俺自身もだが母さんもだった。
だが、蓋を開ければ親父は別の家庭との二重生活をしていやがった。
しかもだよ、俺たちの家庭が週一で、向こうの家庭は週六だったんだ。
どう考えても親父の軸足は向こうに行っていた。
「別れてくれ。俺にとっては向こうの家庭が本物なんだ」
親父が母さんにそう言ったのは、きちんと籍が入っているのが母さんの方だったからだ。
どうやら親父には母さんの前に付き合っていた女性がいて、向こうの親の反対で泣く泣く別れた後に母さんと付き合って結婚したらしい。
しかし、その直後に向こうの女性が妊娠していたことが発覚、親父の知らない所で娘が生まれていた。
それを親父が知ることになった時には、母さんのお腹の中に俺が居た。
なんとその会ったことも無い姉と俺は同学年だった。
向こうが4月生まれで、こっちが翌年の3月生まれ。
約1歳違うのに、俺が早生まれのせいで同学年になっていたんだ。
まあ、そんなことはどうでも良い。
元々親父が結婚したかったその女性が親父の娘を産んだことで、向こうの親が態度を軟化、結婚を認めると言い出したそうだ。
そこで、うちの糞親父は俺の母さんの存在を隠したうえで、婚姻届けを出すふりをして向こうの家庭と二重生活を始めたらしい。
もう、馬鹿かとアホかと。
「離婚はしません! でも実家に帰らせていただきます!」
母さんはキレて絶対に離婚してやらないと言い残し、田舎の実家に帰ってしまった。
残された俺をそのまま放置して父親も出て行った。
いや、俺にも何か言う事があるだろう糞親父!
そしてその後、俺は中三の8月に入って、一瞬で帰る家が無くなった。
糞親父は、こっちの家の家賃を打ち切って賃貸契約を解約しやがったんだ。
俺は猶予期間1か月で家を追い出されることになってしまったのだ。
どうやら糞親父は俺への愛情も持ち合わせていなかったらしい。
俺と母さんの家庭は糞親父にとって邪魔でしかなかったのだろう。
仕方なく、俺は母方の爺ちゃんを頼った。
爺ちゃんは激怒し、糞親父を殺すと息巻いたが、皆で羽交い絞めにして説得し、後は裁判に任せることになった。
離婚するにしても、がっつり慰謝料と養育費に財産分与をむしり取らなければ気が済まない案件だろう。
俺は中学受験したエスカレーター式の私立中学を辞めて田舎の公立中学に転校せざるを得なかった。
田舎からは距離的に私立中学には通えず、1人暮らし出来るだけの財力が無かったからだ。
糞親父のせいで俺の人生は狂いまくってしまった。
そして今日。俺は転校先である田舎の公立中学へと登校した。
担任教師に案内されて3-Aと書かれた教室の前扉の所で待機する。
これから担任教師が教室に入って急な転校生である俺の存在を紹介するのだろう。
今は夏休み明けの二学期の始業の日だ、これから受験シーズンだというのに、この時期に転校するなんて、訳アリだと自白しているようなものだ。
しかも有名私学のエスカレーター式中学からの転校、不祥事の臭いがプンプンするだろう。
なぜなら、俺はこの学校の制服が間に合わずに前の中学のブレザー制服で登校しているのだ。
判る人なら校名が直ぐに判るような制服で、目立って仕方がない。
「それでは呼ぶぞ。おーい、転校生、入って来い!」
俺は、そんな奇異の目で見られるのを覚悟しながら、教師の呼び込む声に促されて教室へと侵入した。
転校生は第一印象が肝心。
ここは爽やかスマイルで好印象を演出しよう。
「初めまして、
その時、教室中に魔法陣のようなものが広がると眩い光を発した。
その魔法陣は、丁度俺が踏み出した先までの範囲に展開しており、俺は思わず一歩後ずさった。
だが、俺の身体は、その一歩だけしか動かず魔法陣に捉えられたままだった。
この時の一歩が後に多大な影響を与えるとは、この時の俺は思ってもいなかった。
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