白日

雨宮 祜ヰ

第1話

 あの日落ちたバスは、色んな場所に大きな爪痕を遺していった。

 多分あれが映画で言うエンドロールだと、目の当たりにした私はそう思わされた。


 腕に抱き抱えた親友の子の目を隠し、必死に震えと涙を堪えながら、動かなくなった先輩夫婦の脇を這い、ガラス片が全身に食い込む痛みに耐えながらバスの外に這い出た。


 見えるのは散乱した荷物とへし折られて落ちて来た枝、歪んだガードレールとさっきまで有ったはずの日常とは真逆の惨状。そして言葉を失った光景が最後のシーンだった。


 ひしゃげて歪に湾曲したバスの破片に腹部を貫かれ、大量の血を流しながら絶命した最愛の人。


 唖然として崩れ行く日常を見ていた私に、腕の中にある2つの泣き声なんて、もう耳に入っては来なかった。




─────


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