制服の魔法

Cinderella

 

 私の通っている高校は都内の私立校で制服が可愛い。自宅は神奈川なので、1時間ほど電車に乗って通っている。電車の中は、サラリーマンや学生でぎゅうぎゅうで、隙間ひとつない。

 私は私の制服姿が好き。どんなにファッションセンスがなくても、制服を着てしまえば解決してしまう。今の私はどこからどう見ても普通の女子校生。もし、私がシンデレラだったとしても、誰も気づかない。シンデレラが制服を着てるなんて思わないだろうし、制服を着ていたらそれはただの女子校生だな、なんて事を考えたりしながら、高校最後の電車に揺られていた。

 3年間通った通学路も通い納め。特に思い入れがあるわけでもないけれど、今日でおしまいというのは少し寂しく感じる。教室に着くと、中はとても賑やかで、黒板には担任の先生からのメッセージが書かれている。

「翠ちゃん、写真一緒に撮ろうよ。」

「うん。いいよ。」

 クラスの子と一緒に写真を撮り、

「後で送るね。」

「ありがとう、ふゆちゃんの今日の髪型かわいいね。」

「でしょ、昨日美容院行ったんだ。」

 たわいもない会話をした。

 卒業式をおえて、家に着き、花束を水の入れたグラスに挿したあと、私は制服のままベッドに倒れ、そのまま寝てしまった。

 目が覚めると外はもう暗くなっていた。時計の針が12時を指している。私はカーテンを閉じ、再び瞼をとじた。

 

 4月に入り、私は大学に通う為、地元を離れて一人暮らしを始めた。まだ部屋は綺麗で、私と段ボールが4つしかない。これから1人で生活しなくてはならない。「よし」と気合いをいれるように心の中で呟く。

取り敢えずバイトを始めようと思い、最寄駅近くの塾に電話した。次の土曜日に、面接の時間をつくってもらい、私服で筆記用具を持参する様に言われた。まだ大学は始まってなく、何もする事がないため、あっという間に土曜日を迎えた。あまりカジュアルにならないように無地のカットソーにスラックス履いて面接に向かった。改めて考えてみると、面接など初めてで途端に緊張してきた。

「どうして塾でバイトしようと思ったんですか。」

「それは、あの、ええと、、」

 面接は散々だった。目の前で自分の事を見られているのが怖くて怖くて、相手の目すら見る事が出来なかった。質問された内容などもう覚えていない。

 家に帰りすぐ、洋服のはいった段ボールの中から制服を取り出し、それに着替え、私は外に出た。繁華街に着き、デパートのショーウィンドウに映る自分の姿を見る。私はまだ制服を脱ぐ事が出来ないみたいだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

制服の魔法 @joetakenoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ