この恋の続きを

ペーンネームはまだ無い

第01話:この恋の続きを

 タイトルは『第2話:相談』にした。

 さっそく本文を書きだす。


 第1話を読んでくださった読者の方に、まずはお礼を申し上げます。そして、第2話を読もうとしてくださった読者の方に、謝らなければいけません。私には第2話を書くことができませんでした。第1話の後、主人公の明莉あかりがどうすれば良いのか、私には判らなかったのです。そして、親友の由紀ゆき将太しょうたに、どのように接していくべきなのか、私には判らなかったのです。

 読者の皆様にお願いがあります。もし、あなたがカクヨムで小説を書かれている方ならば、第1話の続きを書いてはいただけないでしょうか? そして、明莉や由紀、将太がこれからどうするべきなのか、私に教えてはいただけないでしょうか? 私のことを、カクヨムで作家を目指す仲間だと思っていただけるのであれば、是非お願いいたします。


 実は第1話に書いた内容は私の体験談なのです。第1話に書かせていただいたとおり、私――明莉は、将太に告白してしまいました。そして、失恋したのです。フラれるのは判っていました。彼が由紀と付きあっているのは知っていましたから。

 由紀は私の親友です。彼女から将太を奪い取ろうなんて気持ちは少しもありません。将太への想いも胸にずっと秘めておくつもりでした。でも、彼と二人きりになったあの日、想いがあふれて、うっかり口を滑らせてしまったのです。フラれたことはショックでしたが、問題はそこではありません。由紀を裏切ってしまった罪悪感や、将太を困らせてしまった罪悪感が消えないのです。私はこれから、どんな顔をしてふたりに接すれば良いのでしょうか? それとも、大罪を犯した私にはもうふたりに接する資格などなく、この先の人生ではもうふたりと関わらないようにしたほうが良いのでしょうか?

 私は人づきあいがあまり得意ではありません。クラスメイトと会話をしようとしても、「うん」とか「そうだね」とか相槌をついてばかりで会話が続きません。そんな私ですから、高校に入って由紀と将太に出会うまで、胸を張って友人と言える人はいませんでした。由紀と将太は私なんかといつも一緒にいてくれます。色々なところへ一緒に遊びに行きます。たまに私を挟んで由紀と将太が口喧嘩を始めることもありますが、それでも私と由紀と将太はずっと一緒でした。

 私はふたりに聞いたことがあります。「なんで私なんかと一緒にいてくれるの?」って。ふたりは笑いながら「明莉が好きだからだよ」と笑って答えてくれました。私もふたりが好きです。将太への気持ちは、友情の好きから、恋の好きに変わってしまいましたが、最初から変わらず私はずっとふたりのことが好きなのです。

 もしも叶うならば、私と由紀と将太がこれからもずっと一緒にいたいです。そんな未来を、あなたが書いてくださるのであれば、私は嬉しいです。


 第2話の本文は、そこで締めくくることにした。

 どうか私たちの未来を照らすような第2話を書いてくれる方が現れますように。


 ***


 第2話を書いてくれた人は、思いのほか沢山いた。その内容は様々だった。もちろんジャンルは『恋愛』が多かったけれど、他のジャンルで第2話を書いてくれた人たちも少なくなかった。


 ミステリージャンルが得意な作家さんが書いてくれたのは、やはりミステリーだった。明莉が密室トリックで由紀を殺してしまうものの、将太がそのトリックを見破り、明莉は警察に逮捕されてしまう。しかし、将太は明莉が刑務所から出所するまで待つことを誓い、明莉が出所後、ふたりで由紀のお墓参りに行くという内容だった。


 ホラージャンルが得意な作家さんが書いてくれたのは、やはりホラーだった。罪悪感に苛まれた明莉はとうとう自殺してしまう。その後、由紀と将太の周りで奇怪な現象が立て続けに起きる。当初は、明莉の怨霊の仕業だと疑われていたが、それは実は通り魔殺人鬼の怨霊で、最後にはふたりの守護霊となった明莉が通り魔殺人鬼を追い払って終わるという内容だった。


 異世界ファンタジーが得意な作家さんが書いてくれたのは、やはり異世界ファンタジーだった。路上でトラックにはねられてしまった明莉は、中世ヨーロッパ風の異世界に転生してしまう。そこで明莉は将太に似た少年と、由紀に似た少女と出会い、もう一度、明莉が将太に告白するかどうか迫られるという内容だった。もちろんチート能力は忘れられておらず、異世界の明莉はモンスターたちを相手に無双していた。……個人的な好みとしては、異世界ファンタジーなら悪役令嬢ものが良かったな。


 例を挙げればキリがないけれど、カクヨムの作家さんたちは本当に色んなお話を書いてくれた。それだけでも、カクヨムの作家さんたちに相談して本当に良かったと思える。たくさんの勇気をもらった。

 書いてもらった作品の中で、特に私の心に引っかかる作品があった。作品のジャンルは恋愛。

 作品の中で明莉は自分自身に質問する。本当に私は失恋したのかな、と。由紀から将太を奪い取れるとか、将太が明莉に気があるとか、そういうことではなかった。失恋。恋を失う、と書いて失恋。でも、フラれたからといって将太への恋が失われたのではないのではないか、と作中の明莉は言っている。


 英語で失恋はbroke heart。その意味は、心が壊れた、です。たしかに心は壊れたのだと納得できるほどに痛いです。ふとした瞬間に涙がこぼれてしまいます。でも、壊れただけで、失われてしまった訳ではありません。

 そうです。私の恋は、壊れてしまったのかもしれません。でも、大切な想いなのです。壊れたからといって、捨ててしまえるものではないのです。

 罪悪感を覚えるような恋だったのかもしれません。してはいけない恋だったのかもしれません。それでも誰かを想うその気持ちは尊いものなのだと思います。由紀との友情も、将太への恋心も、両方を大切にしても良いのではないでしょうか。

 私の持っている気持ちは、決して誰かに避難されるようなものではありません。胸を張って、今まで通りに由紀や将太との関係を続けたって良いのだと思います。


 私はすべての作品を読み終えた後、第3話を書き始めた。


 ***


 タイトルは『第3話:私と読者と仲間たち』にした。


 第1話、第2話を読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。私の願いを聞いてくれて、思い思いの第2話を書いてくださったカクヨム作家仲間の方々には感謝してもしきれません。

 皆様に書いていただいた第2話はすべて目を通させていただきました。皆様の作品を読むたびに、私たちにもこういう未来が存在するのかもしれないと感じました。さすがに、完全犯罪を成し遂げようとしたり、由紀と将太の守護霊になったり、異世界転生して無双したりするのは、面白いけれど難しいかな、とは思いましたけれど。そういうご意見も含めて、私の未来には無限の可能性が広がっているのだなと感じさせられました。

 また、皆様に書いていただいた作品や、私の作品に残していただいたコメントの中に、私の愚かな行為を責めるような言葉を書かれていなかったことを、とても嬉しく、とても幸せに感じました。親友の彼氏に恋をしてしまい、あまつさえ想いを伝えるまでしてしまった私を皆様は許してくださったということなのでしょうか。それは暗闇の中にいた私にとっては救いの光のように感じました。どんなに嬉しいことだったか、どんなに幸せなことだったか、あなたに伝えきれるほどの文章力がないことが悔やまれます。

 本音を言えば、私は今回のことで自殺すら考えていました。もう由紀も将太も絶対に私を許してはくれないだろうと考えた結果です。しかし、カクヨム作家の仲間たちが私を許してくださったように、由紀と将太も許してくれるかもしれません。そういう希望を持つことができました。


 皆様に書いていただいたお話を参考にして、自分の身の振り方を考えてみます。由紀と将太が許してくれなかったらと考えると、すごく怖くて身体が震えてしまうけれど、私、カクヨム作家の皆様からいただいた勇気をふりしぼって頑張ってみようと思います。

 私の勇気の結果は、第4話として書かせていただくかもしれません。それがいつのことになるかもわかりませんし、その内容によっては書くのを断念してしまうことになるかもしれません。それでも、どうか、私の未来が明るいものであるように願っていただけると嬉しいです。私も全力で頑張ってみます。

 それでは、また第4話であなたに会えることを願って、第3話を締めくくろうと思います。皆様、本当にありがとうございました。


 ***


 私が第3話を書き終えると、近くでモニターをのぞき込んでいた明莉に向かってピースをした。

「どうよ、私の文才は?」

「うん、やっぱり由紀ちゃんはスゴいよね」

 そう言った後、明莉は再びモニターに視線を移して呟いた。

「ほかのカクヨム作家さんたちもスゴかった。こんな私のために沢山のお話を考えてくれて……」明莉の目じりに涙が浮かぶ。「それに私が将太くんに告白しちゃったことを責める人もいなくて、本当に私は間違ってなかったんだって思えて……」

 私は明莉の頭にチョップすると「はいはい、泣くのは無し無し」と手をひらひらと振って見せる。

「だから、私、言ったっしょ~? 好きになっちゃったのも、告白しちゃったのも、しょうがなかったことなんだしさ。誰も明莉を責めたりしないんだって」

 私が笑って見せると、明莉も釣られたように笑う。「うん、そうだね」

 良かった。久しぶりに明莉の心からの笑顔を見られた気がする。これはカクヨムの作家仲間の皆さんのおかげだ。感謝してもしきれないな。

 ふと時計を見ると、将太との待ち合わせの時間が迫っていた。

「ヤバっ。遅刻したらまた将太を怒らせちゃうよ」

 私は立ち上がると、由紀の手を握る。「それじゃ、行こっか」由紀は頷いてから私の手を握り返した。

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