魔王の戯言
粟生木
第1話
「ぐあぁぁぁぁ!!!!」
体力が、一気に抜けていく。
スローモーションのように、ゆっくり、身体が後ろへ倒れていった。
意識もだんだんと薄れていく。
(今回のパーティーは少し物理攻撃が多かった気がするな……格闘系の職業のやつらが大半だったからか?作戦もその場で決めていた……馬鹿馬鹿しい、実に非合理的だ。それに比べ、前々回のパーティーは良かった。
メンバーの構成はありふれたものだったが、緊密のとれた実に素晴らしい攻撃の仕方だった。
今回のやつらも、私を最速で倒したいのならば、前々回のやつらに教えを請えば良かったものを。
……………………まぁ、)
また、勇者に倒される事には変わりないのだがな。
私は心の中でほくそ笑んだ。
(さぁ、もうひと踏ん張りするか)
私は最後の力を振り絞り、もう言い慣れてしまったセリフを叫ぶ。
「おのれ人間共め…だが私は何度でも蘇るぞ!これ以上ない絶望と屈辱を味わせてやるからな……!!!」
ふいに身体が軽くなる____死んだのだ。
何度も経験しているが、こればかりは未だに慣れない。
(あぁ、また終わった)
辛かった、というよりも終わったことへの達成感の方が強い。
達成感に打ちひしがれ、そっと目を閉じる。
「………い、おい。目ェ開けな。物語はまだ終わっちゃいねぇぞ。」
しばらくして目を開けると、私はわたしのいた国の上__つまり、天空に立っていた。
天空に立つ、なんて事はこの世界に来るまでは有り得ない話だったが、この事にもまた、慣れてしまったようだ。
向かい側には、スーツを着て、牛の頭蓋骨のようなマスクを被った男がいる。
「ホムラか。」
「………すぐにまた出番がくる。寝てる暇なんぞねぇよ。」
「分かっているさ。」
久しぶりに青空が世界を覆う。
太陽も暑いくらい照りつけた。
____と、その瞬間、
時間が逆戻りしたかのように暗黒の色をした雲がどこからか集まってきて、世界を覆ってしまった。
(あぁ、また始まった)
私は再び目を閉じた。
ある時は、より悪に走れば世界は終わってくれるのかと、非道の限りを尽くした。
またある時は、逆に前に目覚めれば良いのかと、正義の味方紛いなこともした。
だが、いつまでも世界は終わってくれない。また始まりへと戻るだけだった。
私は深いため息を一つつくと、またとっくに言い慣れてしまったセリフを叫んだ。
「皆の者、よく聞くがよい!!この国、いや、この世界は私のものとなった!!!!」
この期に及んで、戯けたことだと言われるかもしれないが、
いつか、この世界を終わらせてくれる者が出てくるならば。
また、平和な世界に治してくれる者がいるならば。
私はその時まで悪役を演じきってみせようじゃないか。
「人間共よ、私に頭を垂れよ!!抗う者がいたら、そやつを八つ裂きにし血潮を飲み干してやろうぞ!!!!」
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魔王の戯言 粟生木 @aokistore
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