日常・・・
勝利だギューちゃん
第1話
今、僕は列車に乗っている。
意図的に乗っているのではない。
気が付いたら、乗っていた。
他にも乗客はいる。
でも、みなあたふたしている。
僕も例外ではない。
なぜ、この列車に乗っているのか?
わからない。
隣の席の人に訊いてみた。
「この列車は、どこに行くのですか?」
隣の席の人は、悲しい顔で首を横に振る。
わからないらしい。
訊かない方が吉だろう。
でも、みんな悲しそうだ。
幸せそうな人はいない。
最後に残っている記憶はいつだ・・・
昨日、学校から帰ってきて、友達と遊んで・・・
床について・・・
朝起きて、家族と食事をして・・・
えーと
それからの記憶がない。
そういや家族はどこだ?
友達は?
先生は?
「地震じゃよ」
その声に顔をあげると、そこには駅員さんがいた。
「ここの乗客は、おぬしを含めて、皆、地震で亡くなった」
「亡くなった・・・ということは、僕は・・・」
そうだ・・・
思い出した。
突然、大きな地震が起きたと思ったら、あたふたしてしまい・・・
「家族は?友達は?無事なんですか?」
駅員さんは、首を横に振る。
「残念じゃが誰も、助からなかった」
「では、どこにいるんです?」
「お主とは別の列車じゃ。行き先が違うのでの」
行先、あの世か・・・
他人事だと思っていた。
対岸の火事と思っていた。
でも、ある時日常は崩れ去る。
死んだ。
それは運命。
でも、僕は一生懸命に生きなかった。
まだ、先は長いと思い、自堕落な生活をした。
悔やんでも悔やみきれない・・・
やがて、列車は目的地へと着く。
向こうには家族や、友達の顔を見る。
「声をかけてはならぬ。」
「どうしてですか?」
「言ったろ?行先が違うと」
生前の行いにより、行く世界が違う。
自堕落に生きていた僕には、まあ天国ではないだろう。
これから行く先が、どこであろうと受け入れよう。
日常・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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