第六十七話「追いつめられちゃって」
ビヨッ…………ビヨヨッ…………。
白銀の髪に青い目をした異様に目立つ少女・
このところ“怪人センサー”の調子が悪い。
機械とにらめっこをする桐華の前に、目的の人物が現れる。
桐華は
「ごめんね! 待たせたかなっ!」
「お待ちしていました、
その人物・
対する桐華は相変わらずの黒づくめに、キャップを深く
場所も先日と同じ、
変わっているところといえば、桐華が大きなバッグを
「とっ、とりあえず何か頼もうかっ!」
「では私はアイスコーヒーを」
「じゃあ僕もそれでっ!」
森次郎、もとい
急なお呼び出しを食らった林太郎は、まるで校内放送で職員室に呼び出された小学生キッズのように
林太郎の弟であるという
つまり林太郎はたったひとりで、桐華という強敵を相手にしなければならないのであった。
「アイスコーヒーでございまーす」
「ありがとござまっ!」
ガチガチに緊張した林太郎がちらりと視線を向けると、桐華の
自身が過去桐華に対して
ヒーロー学校時代の学年別体育祭で、あらゆる汚い手を使って
料理は修行だと
味覚の特訓と
どうしても修行がしたいという桐華本人の強い希望もあったので、
それにしたって林太郎がこれまで桐華にしてきたことは、先輩後輩の
(
林太郎は動揺を
もし自分が栗山
いっぽうの桐華はそんな林太郎の
先日の一件のあと、
林太郎よりもひとつ年下の二十五歳、数年前まで林太郎と一緒に
残念ながらそれ以外のデータはなかったが、先日の森次郎の
そうして調べていくうちに、
桐華はそれらの資料から、“とある
コーヒーをグッと流し込むと、桐華は正面に座る男を
「森次郎さん、これは私
「ンッフ!」
林太郎は思わず鼻からコーヒーを吹き出した。
だが今までヒーロー関係者は、みな口をそろえて林太郎死亡説を
ネットニュースやテレビでも、ビクトグリーン死亡のニュースは
そのため桐華の口からそのような言葉が出てくるとは、思いもしなかったのだ。
(ままま、まさか、全部わかった上でカマをかけようというのか……?)
林太郎はコーヒーまみれになった
「俺……じゃなくて、兄貴が極悪怪人デスグリーンだというのは……そりゃまたどうして?」
「
「ええまあ、そのぐらいは」
よく知っているも何も、全て林太郎本人がやらかしたことである。
ニュースなどでも小さく取り上げられていたので、知っていてもおかしくはない情報だ。
「けれどセンパイが
デスグリーンに過去の記録が
なぜならば極悪怪人デスグリーンが誕生したのは、栗山林太郎が失踪した後だからだ。
桐華はズイッと林太郎に顔を近づけた。
「
前髪が触れるほどの距離、甘いコーヒーの香りが林太郎の鼻をくすぐる。
目の前に本人がいるとも知らずに
「センパイ……栗山林太郎は“
林太郎は思わず口元を押さえた。
ひょっとするとこの少女は、たったそれだけの情報で
まるで決定的な証拠を
林太郎は震える手でコーヒーを口に運ぶも、ほとんど味がしなかった。
「こここここ、根拠としては弱いんじゃないですかねねねねねえ……?」
「証拠はあります! これを見てください!」
桐華はキャップを取って見せる。
そこには“
つい先日、まさに林太郎が自らの手で書き
「そそそそそ、それがなにか?」
「これは先日私がデスグリーンに書かれたものです。この肉という字をよく見てください。肉の中にある“
人と人は
だがその肉の中の人はまるで支え合っておらず、あたかも他人のように距離を置いていた。
どちらかというとカタカナの“
「
「ななな、なんとーーーッッッ!?」
よもやそんなところからボロが出ようとは!
人という文字には林太郎のゲノム構造ばりにねじくれた性格が、ありありとにじみ出していた。
林太郎自身が抱くそういったものへの
ちなみに
ともあれ、その証拠は何ひとつ言い逃れできないほどに桐華の理論を
人間としての
「どうですか森次郎さん、私の推理は!」
「はうぅっ! はひゅるるるーーーーーっ!!!」
桐華が指をさすのに合わせて、ズビシィッという
どうだとばかりに胸を張る桐華に対して、林太郎は目を回し、もはや気が気ではなかった。
このままでは森次郎
そうなれば、まさに
だが林太郎の心配をよそに、桐華は大きなバッグをテーブルの上に置いた。
「そこでセンパイ、もといデスグリーンをおびき寄せるいい作戦を思いつきました」
桐華がヂヂヂとバッグの口を開いていく。
林太郎はおそるおそるバッグを
バッグには
「ふふ……いつかセンパイのためにとコツコツ集めていたものですが、まさかこうして役に立つとは思いませんでした。ああ、使い
そう言って桐華は
「いくらセンパイが
桐華の顔は赤く
こいつはいけないと、林太郎の
「さあ森次郎さん、センパイと私のために
「
桐華は弟の森次郎を
まるで
もし問題があるとすれば、どれだけ小熊が泣き
「大丈夫です森次郎さん。私やるのは
「いやぁーーッ! 誰か
桐華はハァハァと息を
それは
「大丈夫ですよ。これも修行だと思えばつらいのは最初だけです。天井のシミを数えているうちに終わりますから!」
「ごめんなさい謝るから! 謝るから許してほんとに! 助けてぇーーーーーッ!!!」
林太郎の首に
「
「はっ、
「またあんたか! 最近のヒーロー本部はいったいどうなってるんだ!」
「これはデスグリーンを
桐華は
あとに残された林太郎は、
「あの……お客様、大丈夫ですか?」
「……大丈夫に見えますか……?」
グッズのいっぱい詰まったバッグは、残しておいたらまたロクでもない目に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます