極悪怪人デスグリーン
今井三太郎
第一章「極悪怪人デスグリーン、誕生!」
第一話「断罪人と呼ばれた男」
「五人そろって、
勝利戦隊ビクトレンジャーといえば今や子供から大人まで誰もが知っている正義の味方だ。
彼らの活躍は常にネットニュースのトップを
中でも五人目の戦士、ビクトグリーンこと
「平和を愛する緑の光、ビクトグリーン!」
栗山林太郎、二十六歳。
ヒーロー学校を首席で卒業し鳴り物入りで東京本部所属のエリート“勝利戦隊ビクトレンジャー”に配属された期待の新人。
彼はその
彼の輝かしい実績の数々はまさに、林太郎のヒーローとしての素質が誰よりも優れていることを示している。
……わけではない。
林太郎は職務に極めて忠実である反面、正義のためならば手段をえらばない男であった。
山に怪人が現れれば森を焼き。
川に怪人が現れれば高圧電流を流し。
街に怪人が現れればビルごと爆破解体し。
怪人が現れなければ怪人の息子を探し出して人質に取った。
敵のみならず味方からも恐れられる修羅。
正義に魂をボッタクリ価格で売りつけた悪徳ヒーロー。
人という文字を何度書かせてもけして
平和のためならば平和さえも殺す男、その名は栗山林太郎。
ついたあだ名が“緑の
彼はすべてのヒーローを過去のものにせんとする
しかし当然、そんな“出過ぎた
「あば……
「そう、北海道の端っこのね。自然が豊かで空気が美味しいところらしいよ栗山くん。夏はとても涼しくて過ごしやすいそうだ」
「もう十二月ですが」
「広がる一面の雪景色……
「つまり……
ここは日本中のヒーロー組織を
正式名称“
ちなみに
「栄転って言いなさいよ。あれ? ひょっとしてご納得いただけない感じ?」
「そりゃ納得いきませんよ! そもそもなぜ俺なんですか!?」
「そこなんだよね。君が優秀なのはよく知っているよ。君の活躍のおかげで、いまや東京二十三区じゃ怪人よりもサンタクロースを探す方が簡単なぐらいさ。今年度の最優秀ヒーロー賞は君で決まりだろう」
「
「しかし、お
話はそれで終わった。
林太郎は衝撃のあまり鼻までズレた眼鏡をかけ直すと、固く閉ざされた司令部の扉をキッと
確かに手段の面では多少の問題こそあれ、林太郎は誰よりも結果を残してきたではないか。
こんな人事は
だがきっと彼らならば。
苦楽を共にしたビクトレンジャーのメンバーならば一緒に声をあげてくれるはずだ。
レッド、ブルー、イエロー、ピンク。
ビクトグリーンこと栗山林太郎の、かけがえのない
ヒーロー本部の別室、ビクトレンジャー秘密基地。
「みんな聞いてくれ、今日付けでクリリンの網走行きが決まった!」
「ついにトバされてやんのクリリンの野郎! ざまあみやがれだぜ!」
「クリリンが消えれば、ようやくヒーロー本部にも平和が戻ってくるでごわすな」
「きゃー左遷とかクリリンマジかわいそー、ウケるー」
秘密基地の扉は、それはもう秘密とは無縁なほどに薄かった。
林太郎は無言でその扉を開いた。
「聞いたぞ、栄転だって? やったな、おめでとうクリ……グリーン!」
「リーダーに任命されたんだって? まったく、羨ましいぜクリ……グリーン!」
「うむ、網走の平和はおぬしに任せるでごわす、クリ……グリーン!」
「うええ~ん寂しいよう。北海道でも頑張ってねクリ……グリーンくん!」
その日、林太郎は一言も発することなく
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