好奇心

王水

楽しい行為

カーラの屋敷に訪れて、はや3ヶ月。

俺はもうここの生活様式にも慣れ、いつも通り食事と風呂を済ませて床に就く準備をしていた。


……ギシリ


いつも通り背後に感じたのは、どこから侵入してきたのか分からないカーラの気配。

あの日、俺が屋敷から抜け出してからというもの、カーラは俺の側から離れようとせず、何をするにも何処へ行こうにも同行しようとするようになった。

もちろん就寝時も例に漏れず、毎晩こうやって部屋に忍び込んでくる。

これには俺も煩悶した。

と言うのも、近頃俺の身体や頭がおかしいのだ。カーラが俺の近くに寄ると動悸や息切れが激しくなり、声を聞くだけで胸が苦しくなる。いつ何時もカーラの事ばかり考え、落ち着いて茶も飲めない。

そんな状態で隣で寝られてみろ、眠りにつくのにも一苦労だ。

今日こそはカーラに別の部屋で寝ろと伝えよう。そう思い、口を開いた時だった。


「おい、いい加減に……」


「見てよコレ」


俺の言葉を遮ると同時に眼前に置かれたのは淫らな行為をしている男女の写真だった。いや、よく見るとこれは…本か。

突然のことに頭が追いつかず、とつとつと言葉を紡ぐ。


「な、何だ…この、本は…どこからこんなものを……ッ!」


見慣れないものを直視してたじろぐ俺に、カーラは構わず語り掛けてくる。


「人間ってこんな不潔な行為が楽しいんだって、本当かなぁ、意味分からないよね。」


それにしても酷い顔だなあ、と笑いながら男女を指さし、馬鹿にするカーラ。


「貴様な…。」


呆れ半分、困惑半分でため息をつくように言葉を吐いた。本当に、感覚が人間とはズレているのだろう。愛欲のような感情も理解し得ないらしい。


ズキン


そう考えた時、胸に小さな棘が刺さったような、妙な感覚に襲われた。得体の知れない不快感に疑問を抱いていると、カーラがおもむろに上着を脱ぎ始める。


「!?」


かと思えば、ベッドの上で俺に尻を向け、四つ這いになりながら叫んだ。


「まあやってみないと分からないよね!」


「さあ、おいで!!!」


心做しかいつもより生き生きとした笑みを浮かべたカーラが、写真の中の女と同じ体勢をしている事に今しがた気づいた。


(こいつ女側で良いのか…)


と畏れすら感じながらも、現状を整理して考えてみる。


「……待て、つまり…?」


「試してみようよ、それ。僕と君で。」


カーラの涼しい笑顔とは対比的に、俺の顔が熱くなるのを感じた。


「はあ"!?何を考えているんだ貴様ァ"!?」


あまりのことに、ガタンと後ろの棚を蹴飛ばす。


「え?嫌?」


カーラの歯切れのいい声が二人きりの部屋にさえざえと響く。一時の沈黙に息が詰まる。

心臓が耳のすぐ奥にある様だった。


「い"っ…嫌…では……。」


これ以上言葉に出来ず、震える唇をかみ潰した。

嫌ではない。それが自分でも信じられない。まさか俺にこんな趣味があったとは。

しかし、そうだとすれば全ての辻褄が合う。近頃身体がおかしかった事も、先の胸の不快感も、この胸の高まりも…。

俺がこの男を愛しているのだとしたら、ごく自然なことだ。

だがそれならば、俺が今カーラを抱くのは、実に不本意だ。まだ気持ちも伝えていない。増してやこの男はきっとこの行為を「面白いもの」としてしか捉えていない。そんな状態でまぐわうなど。

心が複雑に揺れ動く。

いっそ今、この気持ちを暴露してしまおうか。

そうすればこいつも少しは物怖じするだろうか。

だが、気持ち悪いと思われ、嫌われでもしたらどうする。


悶々と考え込む俺を待ちかねたのか、カーラが口を開いた。


「何?あ、もしかして怖い?」


ブツンッ


張り詰めていた太い糸が、急に切れたような音が頭に響いた。


「怖い…?貴様、人の気も知らず…。」


俺はのしりとベッドの上に乗り上がり、カーラに覆いかぶさった。


「あ、そうそう、そんな感じ!それで手を…」


カーラが言い終わる前に、カーラの下着の中へするりと手を滑り込ませる。先に見た如何わしい本の展開を思い出しながら、胸の方にも手を這わせた。


「はは、ここまで完璧だね!次は…なんかぐちゅぐちゅいってるなあ。何してるのかよく分からないけど、出来るよね?」


「…!」


俺も一人で処理をした経験はある。故にこの水音が何を指しているのかも予想がついたが、そもそも、俺を相手にこの男が勃つのかさえ怪しい。濡らすことなど…。

しかし、そんな不安を、手に触れたものが拭い去った。


「!」


「何?できないの?」


「ッ…で、できる。///」


「へー!凄い!早くやって見せてよ!」


この様子では本人は気付いていないのだろうが、カーラのそれはしっかりと勃っていた。

しかも先の方は僅かに濡れている。

愛欲など持ち合わせていないものと思っていたが、これには淡い期待を抱いてしまう。


俺はカーラのそれをにぎり、手の中で優しく揉んだ。


「はは、はははっ、あは、くすぐったいんだけど、はは、は、ッ…は…。」


まだ余裕があるのか、肩を震わせて笑っているカーラ。

それを見て、俺は不意に手を上下に動かし始めた。根元から先端まで、手で包むように扱きあげる。


「はは、は、……ぁ"ッ♡」


ビクン♡とカーラの腰がはねた。


これは、カーラが感じたのか。

押し寄せる興奮の波に抗えず、手の動きは激しくなっていく。


「ハァッ♡は、ぁ"ッ♡それ、凄い、ね!♡♡あ"♡♡特に先の方がッッぁ"♡♡は♡♡♡」


くちゅっ♡


俺の手の動きに合わせて、微かに水音が漏れる。


「あ"♡凄い!似たような音が出たね!ハァッ…♡もう少し、大きく出来ない?これが限界かなぁ?」


「ッ………貴様……///」


こいつ、先程からわざとじゃないのかわざとなのかは分からないが、何度も煽りおって…。

ならばと応えるように手の動きを更に激しくし、水音を大きく響かせた。


ぐちゅっ♡ぐちゅっ♡と音が連なる。


「は、はは、ッ♡すごい凄い!やれば出来るじゃないか!ハァッ♡」


顔は伏せて腕を震わせながら懸命に腰を持ち上げているカーラに自分も興奮を禁じえず、カーラの太腿に自分のそれを擦りつけながら問う。


「カーラ…次は、どうする…///」


「ハァッ…♡次は…♡股に指を入れてるね…。」


「指?……待て、指が入る穴といえば、ここしかないんだが…いいのか?///」


ぬるりとカーラの穴へ指を当て、柔らかく刺激した。

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