終:さよなら

 空間を稲妻が迸った。

 旋風荒れ狂い、空間が裂けるような勢いで、時と空間の彼方からその人物を強引に連れ出すかのようにはじき出した。

 ルストが再び出現したのは、彼女が調査をしていた遺跡のある場所だった。

 頭上に太陽が昇りまだ真昼だった。周囲を見回すが調査部隊の仲間たちの姿はない。


「これは、おそらくは私も行方不明として処理されているわね」


 だがそれはかえって好都合だ。今ならば誰にも知られずに遺跡を破壊できる。

 ルストは愛用の精術武具・地母神の御柱を打頭部を真下にして地面へと突き立てる。そして感覚を地面下へと巡らせて地面下の構造物の〝急所〟を探った。


「見つけた」


 あとはそこを破壊するだけだ。それが約束なのだから。


「さよなら、月詠」


 ルストは一瞬目をつぶる。脳裏を月詠の笑顔が横切る。

 そしてルストは意を決した。


「精術駆動! 躯体崩壊!」


 地面下に強力な質量操作の力を放出し、地面下に埋もれる物理構造を崩壊させる破壊する技だ。


――ドオオン!――


 轟音が大地の下から響き地盤が揺らめいた。地面の下で何かが崩壊したのだ。今回の問題の根源である地下遺跡なのは間違いない。

 ルストは山を下りる。全てを清算して。

 山のふもとで調査部隊の仲間たちと7日ぶりの再会を果たす。日数が合わないが、こちらに戻る際に時の流れが正しくつながっていない結果だろう。下手をすれば逆に100年も経過している可能性もある。その意味ではルストは大変に幸運だったのだ。

 7日間の行方不明で質問攻めにされたがルストは何も覚えていないと主張して記憶喪失のふりをしてそれがそのまま受け入れられた。その後、崩壊した地下遺跡があらためて発見されたが、崩壊も行方不明事件も遺跡の暴走として処理された。


 なお、行方不明となっていた20名の正規兵は、それから3年後、西方砂漠のど真ん中で遭難死体として発見されたということである。──────────────────────────────────

以上で、猫野たま様の月詠の鏡と劔 大江戸月想奇譚とのコラボ作品完結です。

最初はルストと月詠ちゃんが楽しく触れ合うお話を考えていたのですが、私の脳内にやってきた月詠ちゃんがしきりに言うんですよ『おそろい』って


Σ(`・ω・´;)


ちょ、ちょっとまってそれはたしかにそうだけど……

そういえば同じ銀髪だし、歳の離れ方からすれば親子に見えなくもないし

(念の為言いますがルストは17歳です)


でも江戸時代の17歳ってすでに大人だし子供が居てもおかしくないし、

あぁ、待って待って! なんでそんなに仲良くなるの! そしてなんでそんなに悲劇的なラストに突き進むの! 月詠ちゃんパワー炸裂です。


開き直ってシリアス路線に舵を切りました。そしたらこうなった。


ラストシーン、泣きながら書いてました。

健気すぎるだろう、月詠……


さていかがだったでしょうか?

ご満足いただけたら幸いです


次回作品は、


逢坂 蒼様著の『なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?』より

ヒロイン アンヘリカ様です


公開予定は4月の10日前後を想定しています。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る