いちアニマルとして

きりたつみき

【エジソン】 モルモット オス -1-

「さあ、今日のふれあいタイムの時間でーす!みんな、やさし~くなでなでしてあげましょうね!」


「かあいー!」


「もふもふしてるー!」


「みてみて、おやさいたべてるよー!」


ひっじょーにうるさい!人間の子供というのはなんと低俗な生き物なのだ。何と言っても発言に知性が感じられない。かわいい?当たり前である。もふもふしてる?当たり前である。おやさいたべてるよ?当たり前である。貴様らも野菜を食べるであろうが。私のような天才からすると、もっと高尚な会話を期待しているのだ。私にとってこのふれあいタイムは非常に貴重な時間である。それは知の深さに貪欲な天才の私にとって、情報収集の場となり得るからである。喋るのはいいが内容を精査したまえ。さもなくば黙っているがよい!!!


「いたっ、、うあああん!!!いたいよーー!!おかあさんばんそうこうーー!!」


ざまあみろ。馬鹿みたいにはしゃぎ回っているから転ぶのだ。しかもすぐに絆創膏を欲しがるとはなんと愚か。怪我をした際にはまず傷口をよく洗い流すべきであろうが。はあああ。溜息が出る。


「あら、転んじゃったのね。でもあまり傷は大きくないね。ほら、けいくん。痛いの痛いの飛んでけー!!」


「んー。あれ、なんかいたくない!ありがと、おかあさん!」


なんと。そんな治療法があったとは!やはり人間、いや、大人の人間は素晴らしい!また一つ新たな知識を蓄えることができた!


「ほら、あそこの白いモルモットちゃんもこっち見て心配してくれてるよ?」


「ほんとだ。ありがと!おれいになでなでしてあげるね!」


違うお前ではない。頼むから、やめてくれ。私が感謝したいのはお前ではなく、その大人の方なのだ。むやみやたらに私の英知をつかさどる体毛に触るんじゃない!!!


耳の裏を撫でられ、心地よい顔をしたモルモットは、無口で佇む少年に気を取られる。


うるさい子どもは嫌いだが、無口な子どもはもっと嫌いだ。


「はあい!皆さん!今日のふれあいタイムはおしまいです!最後にみんなでばいばいしましょう!」


皆が口々に別れの挨拶を告げる。今日もまた情報収集の時間が過ぎていった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――



「皆の者。今日の成果報告会を始める。では、ぴーたろう。何か新たな知識を得られたか。」


「今日のレタスはいつもと違う感じでした~」


「うむ。下がってよい。ちなみに私は人間界で有効とされている治療法についての情報を入手した。傷口に手を当て、痛いの痛いの飛んでけー!と唱えると、その者の痛みが消えるのだ!しかし、これには欠点があることにも気付いている。痛みが消えたところで傷口が治るわけではないのだ。皆の者、痛覚とは体を管理するうえで、その痛みから重大性を理解するうえで非常に重要な役目を担っている。この治療法を用いる際は、決して傷口のケアを怠らないように!」


「やるわねエジソン。けどわたしはあなたの命を奪う方法を知ったわよ。」


「なんだと!!!」


「今日人間たちがやっているのを見たの。背中に指をあてて、そのまま下の降ろすの。そうすると1回ごとに寿命が1年短くなるらしいわ。どう?試してみる?」


「さすが、ちゃちゃみ。そんな情報を聞いていたとは。」


「どう?試してみる?」


「これにて解散。腹が減らないので、この後のにんじんはちゃちゃみに授けよう。」


「まいどありー」


木々のざわめきと共に藁のにおいが駆け巡る。

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